第二十五話『かなえられた願いとかなえられぬ願い』
にゅるりんにゅるりんにゅるりん。にゅるりんにゅるりんにゅるりん。
「おーい。ウチの砕けた身体にゃんたちぃ。大丈夫かにゃあ?」
「大丈夫にゃよぉ」「大丈夫にゃよぉ」「大丈夫にゃよぉ」「大丈夫にゃよぉ」……。
「にゃら、くっつくにゃよぉ! それぇっ!」
ぴたっ! ぴたっ! ぴたっ! ぴたっ!
「よぉし。あと一つになったにゃあ。さぁ、気合いを入れて来るのにゃん!」
ぴたああっ!
「ふにゃあああ! 復活にゃあ!」
にゅるにゅるにゅる。にゅるにゅるにゅる。
「おーい。アタシの砕けた身体さぁん。大丈夫なのぉ?」
「大丈夫だわぁん」「大丈夫だわぁん」「大丈夫だわぁん」「大丈夫だわぁん」……。
「なら、くっつくわん! それぇっ!」
ぴたん。ぴたん。ぴたん。ぴたん。……。
「よぉし。あと一つになったわん。張りきっていってみよう!」
ぴたああん!
「だわあああん! 復活したわぁん!」
がぐがぐがぐ。がぐがぐがぐ。
「おーい。あなた方って、よしこ、の砕けた身体たちよねぇっ。大丈夫なのねぇっ?」
「ぎりぎりねっ」「ぎりぎりねっ」「ぎりぎりねっ」「ぎりぎりねっ」……。
「ぎりぎりなのねっ。ちょっと不安ねっ。でも、くっついてみようねぇぇっ!」
がしっ! がしっ! がしっ! がしっ! ……。
「よぉし、あと一つになったわねっ。こっちへ早く来なさいねぇぇっ!」
がしっ!
「だからねええっ! 復活……って、なんで、よしこ、の肩から下が目の前にあるのかしらねっ。やっぱり、妖魔力切れのせいかもねっ。しょうがないわねっ」
とっとっとっ。
「この首からつき出ている棒を肩の上にある穴に差しこめば、と」
がしぃぃん!
「やったぁ……わねっ! 今度こそ復活したわねっ!」
「どうやら、みんな元に戻ったみたいにゃん。よかったにゃあ」
「本当。本当。
あっ、よしこ。改めてお詫びするわん。あなたの棺桶を落としちゃってごめんね」
「一つ部屋で砕けあった仲じゃないねっ。もういいのよねっ」
「ありがとう、よしこ」
「そういえば、あなた方の自己紹介はまだ聞いていなかったわねっ。聞かせてくれるのかしらねっ」
「いいわん。アタシはミーナ。天空の村にある、イオラの木に咲く花の妖精なの」
「ウチはミアン。化け猫にゃん。ミーにゃんとは大の親友同士にゃん」
「それじゃあ、よしこ、も、もう一度、いうわねっ。よしこ、は『血香好子』なのよねっ。よろしくねっ」
「こちらこそ、だわん」
「ウチもにゃ」
にぎにぎ。にぎにぎ。
「この握手で仲直りできたことにするわねっ。いいわねっ」
「いいにゃよ」
「よかったわん。というところで」
「第二十五話なのよねっ」
「あちゃああ! また先にいわれてしまったわん」
「しかも、よしこにゃんに、にゃ」
第二十五話『かなえられた願いとかなえられぬ願い』
レイナスさんは改めてアタシたちに、
「それでは、みなさん。みなさんのご協力で、瘴気が拡がるのを回避することができました。湖を守る精霊として、心からお礼を申しあげます」といって頭をさげた。
「瘴気がなくなったおかげで、ワタクシが身体を分ける必要もなくなりました。既に身体は一つに、力も元に戻っています。みなさんが今回失った霊力は、ワタクシが責任を持ってお返しいたします。また念のため、浄化もしておきましょう」
レイナスさんはアタシたちに次々と口づけをする。ふらふらになってへばっていたアタシとミアンも、霊力が回復したことでたちまち元気になった。
「本当にありがとうございました。つきましてはお礼もかねて、なにかほしいものでもありましたら遠慮なくおっしゃってください。可能なかぎり、その願いをかなえて差しあげたいと思います」
みんなは顔を見あわせた。無言の状態だったけど、しばらくするとセレンさんが手をあげた。
「本当になんでもかなえてもらえるのだろうか」「はい。ワタクシにできますことであれば」
「では遠慮なくいわせてもらうが、実は、我はほとんど毎日、この湖で釣りをしている」
「ええ。それは知っています。それがなにか?」「なんというか、そのぉ」
珍しくセレンさんがいいよどんでいる。
「つまり、だな。我は人並みでいいから、ちゃんとお魚が釣れるようになりたいのだ」
「お安いご用です。これから湖へ来た時には、必ずそうなるようにして差しあげます」
「ずいぶんと気安く引きうけてくれるが、なにか理由でもあるのか?」
「はい。釣りに関しては、セレンさんが願いでてくださらなければ、こちらから頼もうと思っていたところですから」
「それはまた何故?」
「セレンさん。あれをごらんください」
レイナスさんは後ろを指さした。そこにはいつの間に現われたのか、多くのお魚さんがひしめきあっている。よく見ると、身体のあちらこちらに引っかき傷がついていた。
「彼らは一体……」
「はい。このものたちは、セレンさんの釣り針が原因で怪我をこうむってしまったのです」
「それはどういう意味だろうか?」
「セレンさんの釣りは、お魚さんたちに怪我を負わせることが多いのです。『えさが取られているのにもかかわらず釣りをつづけていて非常に危ない』とか、あるいは『意味もなく、ひんぱんに竿をあげるため、「すれ」がかりになって傷ものにされた』など、日が経つにつれて苦情が増えつづけ、とうとう他のお務めにも支障が出るほどになったぐらいです」
「いいかえすようだが、それは誰にでも起きることだと思う」
「セレンさん。あなたの場合、被害の数が尋常じゃないぐらい増えつづけています。それに引きかえ、あなたのかたわらにいるネイルさんは、なんの問題も起こしていません」
「我がネイルを釣りにさそうようになったのは、つい最近のことだ。当然、釣りにきた回数も我に較べればはるかに少ない。苦情がなくてもあたりまえの話だ」
「セレンさん、それは違います」
レイナスさんは即座に否定し、ネイルさんも、
「ええ。違いますよ、先生」と同意した。
「ほぉ。どう違うというのか?」
「ワタクシはセレンさんに出会う以前から、ネイルさんをよく知っています」
「なんと!」
目を大きく開けるセレンさん。
「村にある全ての湖を守護することが、ワタクシの責務。ネイルさんは小さい頃から、この森だけではなく、全ての森で釣りをなさっているのです。セレンさんとは経験が全然違います」
セレンさんが驚いてネイルさんの方をふり向く。
「先生。レイナスさんのいうとおりです。本来、森の湖で釣りをしていいのは、ここ『自由の森』だけなんですが、子供が遊び目的でやる場合は、他の森でも管理人さんに前もって話しておけば、やらせてもらえるんです。釣りをしていれば必ずといっていいぐらい、レイナスさんには会えましたね」
ネイルさんの言葉に、湖の精霊は、にっこりと微笑んだ。
「それにもかかわらず、セレンさんのような被害報告は一件も入ってきません。釣りの経験があなたと同じぐらいか、それ以下と思われる村人もやってきますが、彼らとてこれほど多数の被害はないのです。実をいえばこのワタクシ自身ですら、出会う前はセレンさんのことを『たちの悪いいたずら者』としか考えていなかったのですから」
この思いがけない事実を知らされ、さしものセレンさんもがくぜんとしている。
「まさか、我が楽しみでやっていた釣りでこれほどの被害や苦情があったとは……。
大変、申しわけなかった」
セレンさんが素直に頭をさげたので、レイナスさんもいささか驚いているみたい。
「いえ、判っていただければそれで結構です。先ほどもいいましたとおり、セレンさんが『うまく釣れるようになりたい』との願いを持ってくださるのは、ワタクシたちにとっても歓迎すべきことです。喜んでその願いをかなえたいと思います」
レイナスさんはセレンさんへ手をかざした。手のひらから放たれた光がセレンさんを包みこむ。でも、それはほんのわずかの間。光はセレンさんの体内にしみこむように、すぅっ、と消えていった。
「終わりました。これから先セレンさんは、お魚さんを極力傷つけることなく、釣りを楽しむことができるようになるでしょう」
「かたじけない。次に湖へ来た時にはぜひ、大物を釣りあげたいものだ」
セレンさんは集まっていたお魚さんの一匹を見て、にやり、と笑みを浮かべている。一方、きらり、と光る彼女の目に見つめられた大きなお魚さんは、『ぎょっ! あ、あたし?』とばかり、うろたえていた。
(やれやれ。ご愁傷さまだわん)
「さてと。それではネイルさん。ネイルさんには、なにか願いことはありますでしょうか?」
「願いごとですか……。そうですねぇ」
レイナスさんに問われ、ネイルさんはうつむいた。なににしようかと、考えあぐねている風にも見える。ややあって、思いついたことでもあったのか、顔をあげた。
「できれば、一つだけかなえてほしいことがあるんですが」
「どうぞ。それをおっしゃってください」
(ひょっとしたら、「正式な呪医へ昇格したい」っていうかもしれないな。かなえてくれるかどうかは別として、ネイルさんなら、それを願う資格は十分あると思うし)
そう思っていたんだけど、ネイルさんの口から飛びだしたのは意外な言葉だった。
「レイナスさん。実はついさっきまで、僕にはミアンさんの親友であるミーナさんという妖精が見えていたんです。ところが……、精神を集中していない今は、姿はおろか、声も聞こえません。できれば普段でも、そうなれたらいいな、と考えているのですが」
(ネイルさんが……アタシのことを気にかけてくれている!)
なんだかとても嬉しい。そして……はずかしい。
「あなたらしい願いですね」
レイナスさんもネイルさんのやさしさが嬉しいのか、笑顔になっている。
「ネイルさん。先ほどもいいましたが、あなたが潜在的に持っている霊力は相当なものです。もしよろしければ、ワタクシがその霊力を一時的にではなく、完全な形で覚醒して差しあげますが、いかがでしょう?」
「大変ありがたい申しでだとは思いますが、それは遠慮しておきます」
「そうですか……。ネイルさん。できれば、その理由を教えてくれませんか?」
レイナスさんの言葉に、ネイルさんはセレンさんの顔を、ちらっ、とのぞく。でも、すぐに視線を元に戻した。
「レイナスさん。僕の中に眠っている霊力なら、僕自身の手で目覚めさせてあげたい。たとえ、どんなに時間がかかっても。少しずつでも。先生の元で修業しながら、使えるようになっていきたい。そう思っているからです」
ネイルさんの言葉に、レイナスさんはにっこりと微笑んだ。
「そうですか。その方があなたにとっては、いいことなのかもしれません」
「ただ……、今、僕が喋ったこととは矛盾をしているのですが、できれば」
「ネイルさん。お気持ちは十分伝わりました。それ以上の言葉を口にする必要はありません。
では、あなたが持つ力のほんの一部だけを覚醒させましょう。それでミーナさんを確認することも、会話を楽しむこともできるようになります」
「ありがとうございます、レイナスさん」
レイナスさんはネイルさんにも、セレンさんと同じような仕草をくりかえした。
「ネイルさん。もう、あなたはミーナさんを普段でも認識することができますよ」
「えっ!」
ネイルさんはあたりを見まわす。その目はミアンの背中の上でとまった。もちろん、そこにはアタシがいる。彼はアタシに近づくと、手を差しだした。
「改めて自己紹介させて頂きます。僕はミアンさんの友だちで『ネイル』といいます。ミーナさん。どうか僕とも友だちになって頂けませんか?」
(えっ、えっ。こんな風にあいさつをされたことなんか今までなかったんだけど。一体どうしたらいいの?)
顔が急にほてってきているのが自分でも判る。そんなあわてふためくアタシにミアンが声をかけてきた。
「ミーにゃん、なんでもないことにゃ。その気がないのにゃら首をふって、
『ごめんなさい』っていえばいいし、友だちになる気があるのにゃら握手して、
『こちらこそ、よろしくお願いします』っていえばいいのにゃよ」
(そうか。そういうことなのね。じゃあ、どうしようかな……って、答えはもう決まっているけどね)
アタシは差しだされた手に自分の小さな手を乗せる。
「こ、こちらこそ、よ、よろしくお願いするわん」
(ちょっと緊張したからかな。うわずった声になっちゃった。それでも、いいたいことはいえたから、ほっとしたわん)
「ありがとう、ミーナさん」
ネイルさんの、そっと握った手がとても温かい。彼はにっこりと微笑みながら、アタシを見つめている。
ぱちぱちぱち。
レイナスさん、セレンさん、そしてミアンが、アタシたちに拍手をくれた。
(嬉しいな。初めて人間と、しかもネイルさんと友だちになれたわん)
本当をいえば、アタシは最初、ネイルさんが好きじゃなかった。嫌いだったといっていい。だって、アタシからミアンを奪った人だもの。会いたくなんかなかった。でもミアンから、
『ウチの新しい家へ遊びにこないかにゃ?』とさそわれ、会わないわけにはいかなくなった。
アタシは考えた。
(それなら、アタシの霊力を使ってできるだけ嫌がらせをしてやろう。そうすれば、二度と会うことはないだろうから)
こんなことも考えていた。
(ネイルさんの部屋を散らかして、文句をいってきたら霊力攻撃をお見舞いしちゃおう)
そして……ネイルさんに会った。
(この人が……)
アタシは我を忘れた。自分が考えていたことも。
ネイルさんのやさしげなふるまいや言葉づかい。それにどこかさみしげな感じ。これらがアタシの中からいつの間にか、彼に抱いていた嫉妬みたいなものを消していた。
ミアンの態度もあたしの心に変化を与えた。ネイルさんと接する時。あぁん、と口を開けて食べさせてもらう時。あんな甘えた表情のミアンをアタシは見たことがなかった。何百年もつきあってきたっていうのに。彼のそばで笑っている時の顔も違う。部屋でくつろいでいる時の顔も。
ネイルさんがミアンを見る目も温かさにあふれていた。『愛しい』っていう気持ちが、こちらにまで伝わってくる。ミアンも感じているはず。だから、彼のそばにいるのだろう。
ここがミアンのいる場所。『いたい』と望んでいた場所。そう思えてならなかった。
(ミアンの笑顔。あれをくもらせてはいけないわん)
アタシはそう思った。親友だもの。
ミアンがこんなにも好きなネイルさんを、親友であるアタシが嫌いでいるわけにはいかない。いつまでも我を張ってはいられない。
嫌いでいられないなら……、そしてミアンのそばにいたいなら。アタシが取るべき方法は一つしかない。
だから……、アタシも好きになった。ネイルさんのことを。
だから……、話をしてみたかった。友だちになりたかった。
そして今、……やっと、その願いはかなえられたわん。
「ミーナさん」
レイナスさんがアタシの前に立つ。
「ワタクシもミーナさんのお友だちに加えては頂けませんか?」
(えっ。……また友だちができた)
「よ、喜んで」
今度は迷うことなく、自分から手を差しだした。アタシの手を指で握ってくれたレイナスさんの顔からは笑みがこぼれている。
「よかった。今日はみなさんに逢えて本当によかった」
(アタシもレイナスさんと同じ気持ち。ここに来て本当によかったわん)
レイナスさんはミアンとアタシにも願いごとを尋ねた。ミアンは霊力を戻してもらえたことで既に満足していた。
(だけど、アタシは……)
願いの一つは、ネイルさんが代わりにいってくれた。でも、あともう一つ。
「レイナスさん、あのね」
みんなに聞かれるのがちょっとはずかしいのでアタシは耳元でそっとささやいた。レイナスさんが目をつむった。なにやら困っているみたい。ややあって目を開くと、小声で言葉を返してきた。
「イオラお姉さまでもできないのでしたら……、ワタクシなどではとても」と申しわけなさそうな顔になっていた。
「眠っている力を目覚めさせる、というのであればともかく、備わっていない能力を使いたい、というのは無理な願いというものです。もしそれをやるとするなら、霊体そのものを再構成させねばなりません。ワタクシの知るかぎりそれができるお方は、イオラお姉さまをのぞけばあとは一体だけです」
「へぇ。イオラの他にもいたんだ。一体誰なの?」
「森の精霊『釈奈』様です。ドラスをアーガに、ディルドをフーレに。不完全な霊体となった翼竜を完全な霊翼竜へと造りかえた、あのお方の力をもってすれば、決して不可能なことではなかったと思います。ですが、森の精霊はもう一体残らず……」
「そうよね。いないものに期待しても無理な話だわん」
(やっぱり、あきらめなきゃいけないのかな。……実体波を使う能力を身につけるのは)
かなえられぬ願い。それでも、いつかは、と望みをつなごうとするアタシがそこにはいた。
「目に浮かぶにゃあ」
「なにを?」
「怪我をしたお魚さんたちが集まっている姿にゃ。魚だというのに、立ち姿で松葉つえをついたりにゃんかして。頭やおなかには包帯を巻いているのにゃん」
「おまけに『ひれ』を腕や足代わりに使っているのよね。『ぎょっ! あ、あたし?』のところでは多分、前ひれを、くいっ、と曲げて、自分を指さしているのに違いないわん」
「『ぎょ』はおそらく、『魚』にゃからかもしれないにゃあ」
「文字数的にはここも、いつもの二倍以上はあるお話だったけど……」
「興味があったのは、ここだけだったのにゃん」
「えっ。……ねぇ、ミアン」
「どうしたのにゃん?」
「あのぉ、お話のミーナでさぁ」
「ふむふむ」
「ほら、割と乙女ちっくなところがあったじゃない。ネイルさんのこととか、実体波のこととか……。心の葛藤みたいなものが描かれていたと思うんだけど、あそこは?」
「ミーにゃん……。ミーにゃんの前でこんにゃことをいうのも、なんなのにゃけれども」
「なによん」
「ちょっと……、お話のミーにゃんが可愛すぎて、目の前にある現実との格差に悩んでしまったのにゃよ。にゃから……読まなかったことにしたのにゃん!」
「(かぁぁぁっ!)んもう!」
「にゃあんだ。赤くなったこっちのミーにゃんも、結構、可愛いにゃん」
「ところで、ねねねのよしこにゃん」
「なんなのねっ? って思わず返事をしてしまったけどねっ。よしこ、の名前はねっ」
「まぁ、いいじゃにゃいか。友だちなんにゃし」
「いつの間にか、友だちになってしまったみたいねっ。まぁ、悪くはないわねっ。なら、いいわねっ」
「ミーにゃんの粗相はウチも謝るのにゃ。ミーにゃんはやったらやりっ放し、みたいなところがあるのにゃん。お片づけっていう概念に乏しいのにゃよ。済まなかったにゃ」
「もう友だちなのよねっ。だったら謝らなくてもいいのよねっ」
「よかったにゃん。そういって貰えて、ウチも、ほっとしたにゃん」
「ちょっと待ってよ、ミアン」
「ほら、よしこにゃんも許してくれるって。ミーにゃんも改めてお詫びをするのにゃ」
「えっ。う、うん。……本当にごめんね、よしこ」
「だから、いいっていってるじゃないのねっ」
「うん、ありがとう。……って、ちょっとミアン!」
「どうしたのにゃ? ミーにゃん。にゃにか不満でもあるのかにゃ?」
「よしこ、に謝ること自体は不満じゃないわん。アタシも悪かったと思っているわん」
「にゃら、いいじゃにゃいか」
「そうじゃなくて」
「じゃあ、なに、ほっぺたをふくらませているのにゃん?」
「だってミアンの話だと、アタシがまだ幼くて、世話が焼ける子供みたいに聞こえるじゃない」
「実際、そうにゃろ?」
「そうにゃろって……。ねぇ、それってアタシにけんかを売っているつもりなの?
だったら」
「どうなのにゃん?」
「受けてたつわん。いくわん。せぇのぉ! あっぷっ」
「ぷっ!」
「………きゃははは! だめだわん。アタシの負けだわん。きゃははは!」
「勝ったにゃん。にらめっこ連勝記録はまだまだつづきそうにゃん」
「くっくっくっ。は、鼻だけを逆さまにするなんて反則はいけないわん……くっくっくっ。
にらめっこ連敗記録はまだまだつづきそうだわん。でも、おもしろいから……くっくっくっ。全然くやしくないわん。くっくっくっ」
「ミーナ、ミアン。あんた方って……いつも楽しそうねっ」
「うん。楽しいわん」「ウチも、にゃ」
「そう……なのねっ」
「にゃんか、たそがれた目をしているのにゃ。あっ、それで、なのにゃけれども」
「どうしたのねっ」
「一番最初ぐらいに聞いた気がするのにゃけれども、よしこにゃんはどうやってここに来たのにゃん」
「そういえば、よしこ、のことは、なんにも話していなかったわねっ」
「もっとも、ウチのことも、にゃんにも話していないのにゃけれども」
「アタシのことも、ね」
「まぁ、いいわねっ。新参者ということで、よしこ、から話すわねっ。
さてと。それじゃあ、なにから……、そうねっ。まずは生いたちから始めるわねっ」
「随分と端っこから始めるのにゃん。いつまでかかることやら心配なのにゃけれども」
「聞いているこっちが飽きちゃうかもしれないわん。よしこ、なるだけ手短にお願いするわん」
「大丈夫なのよねっ。そう、たとえるなら……深呼吸を一回するぐらいの間なのねっ」
「無理だわん」
「無理にゃよ。もっと長くしてもいいのにゃん」
「では、お言葉に甘えましてねっ。長編時代劇の始まりなのねっ」
「あちゃあぁぁ。ミアン。アタシたち、ひょっとして墓穴を掘ったんじゃないの?」
「そうかもしれないにゃん」
「ふふふ。冗談、冗談なのよねっ」




