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天空の村・アタシはミーナ  作者: シード
17/42

第十六話『銀光虫(ぎんこうちゅう)』

「困ったわん。本当に困ったわん」

「ミーにゃん。なにを困っているのにゃん?」

「ミアン、実はね。前回ぐらいで終わりになるんじゃないかって思っていたのよ」

「この本が、かにゃ?」

「違うわん。イオラの出番。だから、ありたっけの知恵をしぼって必死になってやったのよ。それなのにぃ」

「知恵はともかく、必死になってやったのはウチのような気がするのにゃけれども」

「気のせいだわん。そんなことより、今回のお話ではさらに、……」

「ふむふむ。……にゃ、にゃんと! そうなのかにゃ?」

「そうなのにゃ……じゃなくて、そうなのよ。だからなんとかしなきゃ、なぁんて思っているんだけどね。いい考えが浮かばなくって。ねぇ、ミアンはなにか思いつかない?」

「ただ読めばいいじゃにゃいか。綱渡りも、とどのつまりは大変だっただけで、本当にイオラにゃんが喜んでくれたかどうかは判らないのにゃもん」

「そんなぁ。せめてあと一回、あと一回だけでいいから、なにかやりたいのよぉ」

「ミーにゃん。そんなにいうにゃら、一つ提案があるのにゃ」

「えっ、あるの! ミアン、お願い。聞かせて」

「前回やった綱渡りをにゃ。ミーにゃんもやるのにゃ。どうにゃ? いい考えにゃろう」

「ア、アタシっ? アタシがあれをやるの? ミアン、幾らなんでもそれは無理だわん」

「ミーにゃんは練習を一回もしにゃいのに、一回転してウチの頭の上に乗ったじゃにゃいか。大丈夫。練習をくり返せばできるようになるのにゃん」

「そうかなぁ。……ねぇ、ミアン。どれくらい練習すればできると思う?」

「100回ぐらいやれば、なんとかなるんじゃにゃいか」

「ひゃっ、100回! ミアン、悪いけど遠慮させて貰うわん。アタシにはとても」

「ウチにはやらせたにゃろう?」

「そうだけど……。ミアンだからできたのよ。アタシなんか」

「ミーにゃん。ウチはミーにゃんに聞きたいことがあるのにゃ」

「なによん。急に改まったいい方なんかして」

「ミーにゃんがこの綱渡りを始めたのは、見ているかどうかは別として、イオラにゃんに喜んで貰おう、そんな素朴な気持ちからじゃにゃかったのか?」

「それは……そうだわん」

「ウチはそんなミーにゃんの気持ちをかなえたくて、ウチなりに一生懸命協力したつもりにゃん」

「うん。それは感謝しているわん」

「にゃけど、ミーにゃんがやったことといえば、音を鳴らすお祭り装置を動かしたことと、一回転してウチの頭の上に乗ったこと。その二つぐらいにゃろう?」

「そ、それだって、アタシなりにやれることを考えて」

「判っているにゃ。ただ本当にそれだけでイオラにゃんは喜んでくれたのにゃろうか?」

「イオラ……が?」

「そうにゃよ。本当にそれだけでミーにゃんの愛が届いたのにゃろうか?」

「愛……」

 愛、愛、愛、愛、愛、……。

 がくっ、ぜん!

「アタシ……。確かに最初は、イオラに喜んで貰えたら、っていうのが目的だったわん。本当よ。でも、だんだんと面白くなってきて……、イオラへの思いを忘れていたのかも。それとは全然かけ離れた、ただ自分が楽しければ、みたいなものになってしまったような気がするわん」

「ミーにゃん……」

「そんなのだめだわん。なんの意味もないわん。

 ミアン。アタシは……妖精。自分本位で身勝手な。でも……だからといって、それが思いやりや愛を忘れていいという免罪符には……断じてあってはならないわん!」

「ミーにゃん!」

「ミアン、アタシは決めたわん。アタシもミアンとともにいっぱい苦労して、自分の愛がどんなものかをイオラたちに披露することにするわん」

「うんにゃ。それでこそウチの親友にゃん」

「ミアン!」

「ミーにゃん!」

 ひしっ!


 …………………………………………………………………………。


「うわうわうわぁ!」

 ばたん!

「またやっちゃった……。現実は厳しいわん」

「ミーにゃん。もっと高く飛んで。あと、もっと身体の動きをうまく調節しにゃいと」

「……前回までとは逆になってしまったわん。ふぅ」


 …………………………………………………………………………。


「はぁはぁはぁ。な、なんとか形だけは『さま』になったわん」

「はぁはぁはぁ。ウチもまさか本当に100回目までいくとは……思わなかったにゃあ」

「はぁはぁ……。ミ、ミアン、もう、へとへとだわん。こうなったら」

「はぁはぁ……。うんにゃ。あとは本番に賭けようにゃん」

「そ、それじゃあ、休みもかねて」

「だ、第十六話にいくにゃ……よぉ」

「う、うん。(……疲れすぎて、これ以上、声が出せないだわん)」

 第十六話『銀光虫ぎんこうちゅう


 昔、天空の村にある主な五つの森に、森の精霊がそれぞれ一体ひとりずつ、棲んでおりました。彼女たちの中でも、おさであり、唯一、目で見、触れることのできる銀霊は、森に生きる全ての生きものに慕われていました。

 人間の女性にも似ていましたが、銀色の光におぼろげながら浮かびあがるそのさまは、まさに森の守り神に相応しい姿です。銀霊は森の仲間たちを守るとともに、森がいつまでも健やかにと、霊力を与えていたのでした。

 銀霊がすみかとする『銀霊の森』。ここには甲虫こうちゅうという、黒い甲で覆われた生きものがかなりの数、棲んでいました。この虫は銀霊が大好きで、銀霊が行くところ常に一緒にいて、その翅を羽ばたかせていたのです。

 朝になって銀霊が姿を見せれば、甲虫たちはこぞってその周りに群がります。甲虫のおさが銀霊の肩や手に乗るなどしてあいさつを交わすのは、ごくあたりまえの光景でした。

「銀霊さま。おはようございます」

「おはよう。そなたたちも元気そうで、なによりじゃ」

 この甲虫たちにつられるように、他の生きものも次から次へと銀霊のところへ集まってきました。そのため、彼女の周辺はいつもにぎやかさであふれていたのです。


 ある日のこと。村の下を流れている雲よりも、どす黒く、しかも特異な匂いを放つ異様な雲が現われました。本来の雲を、まるで飲みこむかのようにすっぽりと包み、村まで湧きあがってきたのです。それはのちに『死の灰』と呼ばれる毒性の強い噴煙で、森を含めた村全体に襲いかかろうとしました。

 村の危機を察した森の精霊五体は、ともに手を携えて霊波による防御の壁を生成、『死の灰』の侵入を食いとめようと力をつくします。それが功を奏し、『死の灰』はいく分、村へと飛散はしたものの、ほとんどがおさえられ、大事にいたるのを未然に防ぐことができました。


 ただ、あまりにも大きな力を使ったがために、森の精霊たちは己の存在すら保つことができないほど霊力がおとろえてしまいます。一体、また一体と、その姿を消し、とうとう森の精霊は銀霊ただ一体となってしまったのです。

 その銀霊もまた、自分の滅びの時が近づいてくるのを感じていました。

「このままでは、わらわも他の者たちと同様、消えてしまうこととなろう。されど、わらわには、この森やここに棲む生きものたちの行く末が案じられてならぬ。どのような形でもよい。この森に心を残し、見まもるすべはないものか」

 残りわずかな時の中で、銀霊は思案に明け暮れていました。そんな折、いつも周りで仲良くささやいていた甲虫たちが彼女の身を案じて、『精霊の間』が隠されているとされる森の一角、普段は遠慮して近よらない『銀霊のすみか』と呼ばれる広場へ、多くの仲間とともに集まってきてくれたのです。


 銀霊は心を決め、甲虫たちに自分の意志を伝えます。

「そなたたちに大事な話がある。……われらの棲む天空の村は、惑星ウォーレスの上空に浮かぶという、極めて特異な状況下におかれた孤島じゃ。その自然環境を維持するために、われら森の精霊が日夜、森の保全に務めていたことはみなも知っていよう。

 されど……、森の精霊はわらわのみとなってしもうた。そのわらわでさえこの森から消えるのも、そう先の話ではあるまい。わらわがいなくなれば、頼りとするは雨神が降らす霊水など霊翼竜たちによる支援のみとなってしまうが、それでは、はなはだ心もとない。そこでじゃ」

 銀霊は言葉を切ると、改めてそばにいる甲虫たちを見まわします。

「そなたたちに願いしたき儀がある。我が意志と霊力をその身に宿してはもらえぬか。わらわと一つになり、子々孫々に渡って、村にある全ての森の安泰に力をつくしてもらいたいのじゃ」

「銀霊さま……」

「長よ。むろん、身勝手な願いであることは重々承知しておる。そなたたちに過大な負担をかけることになるやもしれぬ。断わられてもいたしかたのない話じゃ。わらわも無理に、とはいわぬ。全てはそなたたちの判断に任せたい」

 銀霊の言葉が終わっても、誰もが押し黙ったまま、口を開こうとはしません。しばらくしたのち、『やはり』と銀霊は言葉をつづけます。

「無理な願いであったようじゃ。もうよい。この話はこれで終わりとしよう。もし、先ほどの言葉に気を悪くしたのであれば許されよ。わらわはただこの身が消える前に、親しくつきあってきたそなたたちへ心のうちを伝えておきたかった。それだけなのじゃ」

「銀霊さま」

 ややあって、甲虫のおさが言葉を返します。

「ご返事が遅れて申しわけありません。何分急なお話だったもので、どう答えたらよいか判らず、とまどってしまったのです。

 判りました。我が身が銀霊さまの思いをこの地に残し、森を守るのにお役に立つというのであれば、なんの遠慮をなさる必要もありません。どうか銀霊さまの使徒として、この身をお使いください」

「わたしも」「あたしも」「わたくしも、です」……。

 長の言葉を皮切りに、他の甲虫たちも口々に声をあげます。

「銀霊さま。みなも、銀霊さまのご意向に沿いたいと申しております」

「そなたたち……。かたじけない。この銀霊、深く、深く感謝する」

 銀霊は甲虫たちの言葉に心を打たれ、目をうるませてうなずきました。


 既に消えてしまっている森の精霊四体が残した霊力の残滓ざんし。銀霊は、それを手元に引きよせ、自分の霊力と一つにしました。

「我が力を発動するには我が意志が必要となる。力だけではなく意志までもその身に宿させるのは、それが理由じゃ。我らが一つになれば、わらわの意志はそなたたちの意識の底深くに沈められ、眠りにつくこととなろう。それでも、わらわの意志が存在するかぎり力は使える。ゆえになんの心配もいらぬ。

 わらわはこれからもそなたたちとともにある。されど、そなたたちがわらわを目にすることや、わらわと語りあうことは、もう二度とかなわぬであろう。仮になんらかの理由で我が意志が目覚めたとしても、どうなるかは判らぬ。ならば今のうちに告げねばならぬことの葉がある。

 ……これにてお別れじゃ。そなたたちとすごした楽しき日々。そなたたちのやさしさ。わらわは決して忘れぬ」

「銀霊さま……。銀霊さまぁ!」

 甲虫たちが涙を流す中、言葉を終えた銀霊は己の身を光へと変えます。

「こ、この光は!」

 甲虫たちが驚きの声をあげる中、銀色に輝くその光は集まっていた彼ら全てを覆いつくします。目もくらむばかりの光の前に甲虫たちはこうべをたれ、うつむいたままでした。


 やがて光が消えます。甲虫たちが見あげたその目には、もう銀霊の姿が映ることはありませんでした。ですが、すぐに気がつきます。黒い甲で覆われていた自分たちの身体が、銀色の姿へと変わったことに。

「悲しむ必要などありません。銀霊さまは、わたしたちの中に生きているのですから」

 長の言葉に他の甲虫たちは涙を流してうなずきます。そして銀霊の願いどおり、森を守る役目を果たそうと、心に誓うのでした。


 以来、森の生きものたちから、甲虫はその名を『銀光虫』と、『銀霊の森』は『銀光虫の森』と呼ばれるようになりました。こうして銀光虫は銀霊に代わる森の守護者となったのです。


 イオラの話が終わった。

「ふぅん、そうだったんだ。じゃあ、銀光虫は銀霊がこの世に残した姿なのね」

「銀光虫の放つ光が、どうしてワタシの光と同じようにミーナちゃんの力をみなぎらせたのか。その理由がこれで判ったでしょう。ワタシの力も銀光虫の力も、銀霊が与えた同じ力だからよ」

「やっぱり、あれは錯覚じゃなかったんだわん」

「そうよ。ミーナちゃんはワタシの代わりに、銀光虫から少しばかり霊力をもらったことになるわね」

「ねぇ、イオラ。アタシ、以前、ミアンから聞いたことがあるわん。夜になると、たくさんの銀光虫が集まって一つの光となり、森の中をさまようことがあるんだって。その姿はまるで精霊のようだった、ともいっていたわん」

「そんな話を。……銀光虫が祖先から受け継いだ銀霊の意志と力が、銀霊という精霊を束の間だけでも復活させているのかしら。それとも、銀霊に対する追慕の念が、銀光虫たちに、その姿をなぞらえさせているのか……」

 イオラは深い思いにふけっているみたい。

「もし、たとえわずかな間であったとしても、逢えるものならお逢いしたいわ。だけど……」

 ふぅ、とイオラはため息をつく。

「やっぱり、だめね。森の精霊たちがいなくなってからまもなく、ワタシはこの森から外には出られなくなってしまった。それは今も変わらない。お母さまが復活していたとしても、おそらくさまよえるのは、ご自分が甲虫に命を分けたあの森だけでしょうね」

「ねぇ、イオラ」

 アタシはイオラが悲しそうな顔をしているのを、じっとして見てはいられず、声をかけた。

「アタシ、夜になったら外へ出て、逢ってこようかな」

 イオラは、はっ、とした様子でアタシの顔を見た。でも、すぐに頭を横にふる。

「ミーナちゃん。ワタシのことを思ってくれてありがとう。でも、だめよ。あなたは、夜はこの森を出てはいけない。ワタシはあなたに強い力を与えた。それでも、あなたが花の妖精であることに変わりはないわ。夜が造りだす闇の力には抵抗できない。夜、この森を出れば、たちまち、あなたは霊力を吸いとられてしまい、二度とここへ戻ることはできなくなる。ワタシのことを思ってくれるなら、絶対にそれはやめてね。お願いよ」

「イオラ……」

 イオラの悲しそうな表情がますます強くなる。アタシにはイオラをこれ以上、悲しませることなんてできない。

「判ったわん。約束する。アタシは、夜は絶対にこの森からは出ない」

「お願いよ、ミーナちゃん」

 イオラはそういって、アタシの額に口づけをした。


 ここに帰ってきてから、だいぶ時がすぎたような感じがする。

「イオラ。それじゃあ、アタシ、また出かけるね」

「夜になる前に帰ってくるんですよ。そうでないと、あなたの身体が持たないの」

 イオラは再びアタシの額に口づけをした。アタシの身体に力がみなぎる。これでもう大丈夫。

「うん、判っている。じゃあ、イオラ。行ってきまぁす!」

「行ってらっしゃい」

 アタシは手をふっているイオラを背に『精霊の間』を、そして森を飛びだした。


「ねぇ、ミアン。どうして銀霊は自分の意志と力を宿す相手に、銀光虫を選んだのかなぁ。

 やっぱりあれかなぁ。仲良しだったから?」

「それが一番の理由とは思うのにゃけれども……、数の力と種の寿命も考えてのことじゃないかにゃ」

「どういうこと?」

「数が多ければ村の隅々まで目が届くから、にゃにか起こったとしてもすぐに見つけて、素早く対応できるじゃにゃいか」

「なぁる」

「甲虫は個体としての寿命は短いのにゃけれども、村のどの生き物よりも、環境の変化に対して柔軟に対応できる。他の生き物がいなくにゃったとしても最後の最後まで生き残る種だと、イオラにゃんから聞いたことがあるのにゃ。この種に自分の意志と力を与えれば、親から子へ、子から孫へと受け継がれ、ある意味、永久とわの命を持つことと同じ意味ににゃる。そう考えたからかもしれないにゃん」

「ほろ」

「ミーにゃん、どうしたのにゃ? さっきからアホみたいにゃ顔になってこっちをむいているのにゃけれども。ウチの話、ちゃんと聞いているかにゃ?」

「途中まで聴いていたわん」

「どうして聴くのをやめたのにゃん」

「判りにくくて、つまんないから」

「にゃある……ほろ」

「あはははは。なんてアホな顔を……、ごほん、真似なんてしなくてもいいわん。それにしても知らなかったな。銀光虫って、元々はただの甲虫だったのね」

「それが銀霊にゃんの意志と力を授かって今の姿ににゃった……か。

 にゃんのかんのといっても、とどのつまりは、『ずぅっとみんなのそばにいたかったから』っていうのが本音じゃないのかにゃ。たとえ、触れあうことができなくなったとしても、にゃ。銀霊にゃんは天空の村が、森が、大好きだったのに違いにゃい」

「うん。それならアタシにも判る気がするわん。同じ別れでも、また逢える、逢えるかもしれない、ならまだしも、もう逢えない、はつらいもの。その気持ちは多分、消えていくものも、それを見送るものも、同じじゃないかな」

「森のみんなが好きにゃから、森を守りたい、離れたくない、って思ったのにゃん。ウチも森が、この村が好きにゃから銀霊にゃんの気持ちがよく判るのにゃ。もちろん、ミーにゃんも好きにゃよ」

「えっ。ふふっ。ありがとう、ミアン。……さてと。それじゃあ」

「うんにゃ。やるとするかにゃ」


 ぐゆん! ぐん!

「うまく綱の上に乗ったにゃあ。ミーにゃん、どうにゃ? いけそうかにゃ?」

「うん。安定しているし、やれると思うわん」

「ミーにゃん。自分の手順は判っているかにゃ?」

「もちろん。

 1.真ん中まで歩いたら、うんと高く飛びあがるわん。

 2.ミアンの動きを予想して、くるっと後転するわん。

 3.ミアンが逆立ちしていなければ上空で待つわん。していれば、扇子を手放すわん。

 4.降下するわん。ミアンの左後ろ足に両手をついて逆立ちの姿勢をとるわん。

 5.手放した扇子を両足でつかむわん。

 これでおしまい。そうよね?」

「それでいいにゃよ。ウチは逆立ちを早くやるつもりなのにゃけれども、ミーにゃんのおりる方が早くなりそうな場合は、仕方がにゃいからはねを使って、浮いたまま待ってて欲しいのにゃん」

「うん。ちょっと格好悪いけどね」

「うまくいくように霊覚交信を使って声をかけ合うのにゃよ」

「その方が安心だわん」

「にゃら、ミーにゃん。ウチの前にいるミーにゃんから歩くのにゃあ」

「判ったわん」

 ぐっ。ぐっ。ぐっ。ぐっ。

「な、なんとか歩けるわん」

「慌てる必要はないのにゃよ。ウチもそろそろいくにゃん」

 ぐゆっ。ぐゆっ。ぐゆっ。ぐゆっ。

「大丈夫……みたいにゃ」

 ぐっ。ぐっ。ぐっ。ぐっ。……ぐっ。

「ふぅ。真ん中にたどり着いたわん」

 ぐゆっ。ぐゆっ。ぐゆっ。ぐゆっ。……ぐゆっ。

「ウチもにゃ。にゃんとか着いたにゃん。

 それじゃあ、ミーにゃん。お先にどうぞ、にゃ。余裕を持って高ぁく飛ぶのにゃよ」

「よぉし。やるわん!」

 ぐん! ひゅぅっ。

「いいにゃん、いいにゃん。よし、ウチもいくにゃよぉ!」

 ぐゆん! ひゅぅっ。

 くるりっ。

「回転は成功にゃ。あとは着地と扇子を開くだけにゃん」

 ぐゆん!

 ちょん。ちょん。

『イオラにゃん見ているかにゃあ』『銀霊にゃん見ているかにゃあ』


「やったにゃん! ミーにゃんも回って」

「いる途中だわん!」

 くるりっ。

「よぉし、うまく回れたわん。お次は降下、と」

 ひゅーっ!

「ミーにゃん。着地と扇子をうまくにゃあ!」

「判っているわん。慎重に、慎重に」

 ひゅぅっ。

 のん!

 ちょん。ちょん。

『イオラありがとう!』『銀霊お母さまありがとう!』


「ミーにゃん!」

「ミアン! ……ぐすっ。……アタシ、やったわん!

 演技はここまでだけど、仕上げに念動波を、……おっとと、最後の難関があったわん。左手をミアンの足から離して……と。うん。うまくいった、うまくいった。身体もふらついていないわん。

 それじゃあ、……えい!」


 ふみっ! ふみっ!


 うぉーっ! わぉーっ! がぉーっ! ……。

 ぱーん! ぱーん! ぱーん! ぱーん! ……。

 ぱちぱちぱちぱちぱち。ぱちぱちぱちぱちぱち。……。



「ミーにゃん、やったにゃあ。予定していた以上の完成にゃん!」

「ぐずっ。……うん。今まで協力してくれてありがとう」


「それじゃあ、ミーにゃん。最後は同時に降りるのにゃよ」

「もちろんだわん」

 ぐゆん! ひゅぅっ、すたっ。

 のん! ひゅぅっ、すたっ。

「ミーにゃん……」「ミアン……」

「やったにゃあ!」「やったわん!」

 ひしっ。

「ミアン。アタシね。何度もだめじゃないかって……。本当に成功してよかったわん」

「心配だったから、首をちょっと長めにしてミーにゃんの方に顔をむけていたのにゃけれども、落ちついて演技していたのにゃん。むしろ、安心して見ていられたのにゃよ」

「そうかなぁ。無我夢中で判らなかったわん」

「終わったにゃあ、にゃにもかも」

「ううん。最後の決め台詞がまだだわん。ミアンも一緒にやろう」

「判ったにゃん。ミーにゃん、いくにゃよぉ! せぇのぉ!」


「決まったわんにゃあ!」


「ミーにゃん。これで本当に終わったのにゃん?」

「うん。ミアンもお疲れさま」

「ふわぁぁん。にゃんか緊張感が解けたら眠くなってしまったのにゃん」

「ふわぁぁい。実は……ふわぁい……アタシもぉ」

「それじゃあ、一緒に眠ろうにゃん。ミーにゃん。ウチはうつ伏せになって倒れるから、ミーにゃんはウチの背中で倒れにゃさい」

「そういってくれるの、待っていたわん」

「終わってよかったにゃあ」

 がくり。ばたん。

「多分、夢も見ずに眠れるわん」

 がくり。ばたん。


 すぅぅっ。すぅぅっ。

 すぅぅっ。すぅぅっ。



 …………………………………………………………………………。



 ひゅううぅぅぅ。



「ミーナちゃん、ミアンちゃん。ワタシたちの為にありがとう」


「わらわからも礼をいう。まこと、美しき舞いであった」

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