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天空の村・アタシはミーナ  作者: シード
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第十話『生還』

《森の中に拡がる深い樹海。生い茂る木々の枝から枝へと、飛び続ける二人。愛しあっていた筈の二人が今、皮肉にも追う者と追われる者とに立場を分けていたわん》

 すたっ。すたっ。

《樹海の中にぽつんとできた広場。その地面に二人は下りたわん。それぞれが手には霊波刀を握り、相手の隙をうかがっている》

「ミーにゃん。一つ疑問があるのにゃけれども」

「なによん」

「どうしてウチが男の子役で、ミーにゃんが女の子役なのにゃん? ウチだってれっきとした女の子なのにゃけれども」

「うんうん。ミアン。気持ちはよく判るけどね。女の子同士では絵にならないわん。男女の心の葛藤や愛憎こそが物語を盛りあげる最高の手段になるの」

「あんた、誰にゃん。

 にゃらウチが女の子役で、ミーにゃんが男の子役でもよかったのじゃないかにゃ?

『どうしてにゃの。どうしてウチを愛している筈のあんたが、こんにゃことを』

 どうにゃろう? なかなかいいと思うのにゃけれども」

「じゃあ、『監督』もやってくれる? もちろん、『説明』も『ぎ音』も、だけど」

「ミーにゃん。ウチは男の子でもいいにゃん」

「了解。続けるわん」


「どうしてなの? ミアン。どうしてアタシを愛している筈のあなたが、こんなことを」

「ミーにゃん、済まにゃい。でも、判ってほしいのにゃ。ウチの部落は今、絶滅の危機に瀕している。そのウチらの唯一の希望がこれにゃんよ。この『お魚の天日干し』さえあれば、みんなが救われるのにゃん」

「ミアン……って、やっぱり、ちょっと待ってよ」

「どうしたのにゃ? ミーにゃん」

「打ちあわせの時もいったと思うけど……。二人の愛を分かつきっかけとなったのが、『お魚の天日干し』っていうのは、どう考えてもおかしいわん。ねぇ。今からでも遅くないわん。考えなおしてみようよぉ」

「ミーにゃんはなんにも知らないのにゃ。やっぱりにゃんといってもまだ子供にゃん」

「どういうこと?」

「いいかにゃ、ミーにゃん。『お魚の天日干し』には身体の成長にかかせない大切なものが入っているのにゃん。住む場所によっては、宝物といっても決して過言じゃにゃい。それほど価値があるものにゃんよ」

「へぇ。そうなんだ」

「納得してくれたかにゃ?」

「うん。お芝居の邪魔をして悪かったわん。じゃあ、話を再開するね」


「ミアン……。それじゃあ、アタシを愛してるっていうのは嘘だったの。最初から、『お魚の天日干し』目当てで」

「違うのにゃよ、ミーにゃん。確かにウチは部落のみんにゃを一刻も早く救いたい。そう願っているのは事実にゃ。でも……君を愛しているのも本当なのにゃ。判ってくれにゃ」

「ミアン。いいわけなんか聞きたくないわん。あなたは、この部落のおさがアタシの父であることを知って近づいたんだわん。そして、ほしがっていた獲物が手に入ると、さっさと部落から逃げだした。そうじゃないの!」

「今、いったにゃろう。違うのにゃん。判ってくれ、ミーにゃん。本当にウチは」

「もう聞きたくないわん。あなたには判る? 家の蔵から『お魚の天日干し』を持ちだすあなたを見た時の、アタシの心の動揺を。アタシの苦しい胸のうちを。なにかの間違いだわん。あなたがそんなことをする筈がない。アタシは……アタシはあなたを信じていたの。

 それなのに……、許せないわん!」

「判ってくれにゃ。このまま黙って見逃してくれ。ミーにゃん!」

「駄目だわん。あなたは『お魚の天日干し』を奪った。部落の敵は、長の娘であるアタシの敵でもあるの。絶対に見逃すわけにはいかないわん」

「こうまでいっても判ってもらえにゃいのか……。なら仕方がにゃい。ウチは君を愛している。でも……闘うしかにゃい!」

「覚悟を決めたみたいね、いくわよ、ミアン!」

「ミーにゃん。これも部落の為にゃん。許してくれにゃあ!」


「ってなわけで、もちろん、続きは第十話を読んだあと」

「やれやれ。律義なことにゃん」

 第十話『生還』


 休憩室で静かにお茶を飲むみんなへ向かって、嵐がやってきた。

 どかどかどか! どかどかどか!

「うむ。どうやら戻ってきたようだな」とセレンさん。

「来ましたね」「うん。やったぁ」

 ネイルさんとレミナさんが顔を見あわせている。

「やかましくなるにゃ」「そうみたいね」

 ミアンとアタシもうなずきあった。

 どがぁん! ばたぁん!

 ドアが蹴りとばされ、待ち人来たるとばかりに、ラミアさんが飛びこんできた。見れば、服はぼろぼろで、身体中が傷だらけになっている。

「うわぁい。アタシの願いがかなったわん。でも、ひどい格好」

「お空のお星さまになっていたからにゃよ」「まぁ、あれくらいは仕方がないわん」

 ミアンとアタシはひそひそ話をしていた。


 ラミアさんはかんかんみたい。レミナさんの前で腕を組んで仁王立ちになっている。

(えっ! す、すごい復元力。傷がすっかり消えているし、服も新品同様だわん)

「やい、レミナ! お前なぁ」とラミアさんは声を荒げて怒鳴る。

「もぐもぐ。うん? おや、ラミアさん。お帰りなさい」

「おや、じゃない。この餓鬼ゃあ。のんびりとお菓子なんぞ食いやがって」「うん? どうぞ」

 レミナさんはラミアさんの、大きく開けた口の中へお菓子をつっこむ。

「お、おめゃえ、いきにゃり……、もぐもぐもぐ。

 うん? もぐもぐ……、なかなか美味いなぁ、これ。もぐもぐ」

「もぐもぐ。ねっ、美味しいよね」

「これってさぁ、あれだろう? ネイルがこの前、買ってきたやつだよな。今度、あたいも……、じゃなくて!」

 言葉とともに、いろいろなものを吐きだすラミアさん。

「もおぉっ。人の顔に食べかけのお菓子とつばをまき散らすのはやめてよ。一体、どうしたっていうの?」

『あぁあ。やだやだ』と顔についたお菓子をぬぐうレミナさん。

「どうしただと! お前、あたいになにをしたのか、もう忘れたのか!」

「なにって……。なんかあったの?」

『えっ?』と首をかしげているレミナさんに、ラミアさんはあきれた表情を浮かべる。

「こいつ、本気でいっているな。……いいか、よく聞けよ。さっき、お前はあたいをふりまわして診療室の窓から外へとほうり投げたんだ!」

 レミナさんは、『はて?』といった顔つきで考えこんでいる。そのうち、思いあたる節があったのだろう。『ああ、なるほど』といった表情を浮かべて、ぽん、と手を打つ。

「なんだ、あの時か。あちきは、ラミアさんが雲のように消えたから、わけが判らなかったんだけど……。そうか。あれは、あちきがやったんだ。あはははは」

 頭の後ろに手をあて、『やぁ、参ったなぁ』と大笑いするレミナさん。当然、ラミアさんの怒りは静まるはずもない。

「『あはははは』、じゃない! あれから、あたいがどんな目に遭ったと思っているんだ。この村の上を飛んでいる小さな衛星にぶつかって、地上へと落下しそうになったんだぞ!」

「へぇ。そんなことになっていたの。でも、それにしては帰ってきた時も、それほど重傷じゃなかったよね。『復元』するのだって早かったしさ。一体どうして?」

「気を失ったまま落下しているあたいを、ミレイが」

「ああ。いつものように助けてくれたんだ。ラミアさんって本当、アーガに頼りっぱなしだね」

「なにをいっているんだ。元はといえば」

「はいはい。あちきあちき。あちきがやりました! いぇぇい!」

「はしゃぐな、このぉ! 元気いっぱいにいうことかよ。しかも、なんでガッツポーズなんかとっているんだ」

「へへへへへ」「こらぁ。照れるな!」

「仲がいいな、君たち。見ているこちらがうらやましくなる」

「セレン、ちょっと待て。あたいたちのどこが、仲がいいっていうんだ」

「なにいってんのよ。セレンにはね、全部お見とおしなの。あちきとあんたが、切っても切れない縁だって」

「確かに。くされ縁だな」「またまた。もう照れちゃって」

「世迷い言はよせ。これ以上、お前にふりまわされるのはごめんだ」

「まだ会話がつづいているのか。本当に仲がいいな」

「そうですね。あれだけぶっ飛ばされたにもかかわらず、こんなに親しげでいられるんですから。信じられません」

 ネイルさんもセレンさんと同様、感心している。

「ネイル。それは誤解だ。あたいは別に親しくなんか」

「ほおぉら。あちきたちは、みんなが公認の間柄なんだから。抵抗してもむだだよ」

 レミナさんは、ぐぃっ、とラミアさんと腕を組む。


「ミーにゃん。聞いたかにゃ?」「なにを? ミアン」

 人間の観察を一時中断し、アタシは声をかけてきたミアンの方をふりかえる。

「あれっ。ミアン。夜じゃないのに、どうしてお目目がまぁるいの?」

「今の会話を聴いてびっくりしたのにゃん。ラミアにゃんは大気圏を出たのにゃと。よくまぁ、そんなので生きていられるものにゃ」

「ミアン。『アーガの使い手』って呼ばれる人間はね。アーガの前身といわれたドラスの細胞と血が、人間のそれと入りまじっているの。アーガが使い手に従うのはそのためよ。

 使い手は人によって異なる能力を保有するそうなの。自らがドラスに変身する者、神力とも呼べる復元力を持つ者、みたいにね」

「へぇ。よく知っているにゃあ」

「えへん。だって、この前、イオラから聞いたばかりなんだもん」

「そんなことだろうと思ったにゃ。……ということはラミアにゃんの能力は」

「復元力よね、もちろん。今見たとおり、身体だけじゃなくて着ている服も復元しちゃうの。

 ……でもさぁ。いくらなんでも、大気圏を行ったり来たり、なんていうのは」

「にゃろ? しかも衛星にぶつかっても、無事でいられるにゃんて」

「本当。宇宙の神秘よねぇ」

「ミーにゃん……。ひょっとして、それでうまく話をまとめたつもりかにゃ?」

「うふ。うふふふ」

「ほら、ミーにゃん。ミーにゃんってばぁ」

 なんといわれても。夢見る児女がつぶやく言葉は一つだけ。まるで壊れたおもちゃみたいに。

「本当。宇宙って神秘だわん」


「ラミアさんって、すごいお人にゃ」

「全くだわん」

「宇宙の神秘で済ますミーにゃんは、もっとすごい」

「あたりまえだわん。……それじゃあ、ミアン」

「うんにゃ。始めるとするかにゃん」


《かきぃん! かきぃん! かきぃん! かきぃん! すぱっ!》

「うっ! 肩が斬られたのにゃん!」

「ミアン。これで終わりだわん。いざ、覚悟! うぉーっ!」

「ここで負けるわけには……、にゃあああ!」

《ざくり!》

「ううっ!」

 ばたっ!

「あっ、ミーにゃん!」

「ミアン……」

「ミーにゃん、どうしてにゃ? ……どうして握っていた霊波刀を消したのにゃん!」

「あたりまえじゃない。愛する人を殺めることなんか、アタシにはできないわん」

「じゃあ最初から死ぬ気で……。ミーにゃん、許してくれ。ウチは、ウチは」

「もういいのよ、ミアン。もう……。

 あなたは部落の宝(『お魚の天日干し』)を奪い、逃走を計った。アタシは長の娘。あなたの裏切り行為を許すわけにはいかず、追っ手の一体ひとりにならざるをえなかったわん。でも、……そのお役目もこの命とともに終わる。今のアタシは恋するただの乙女にすぎない。こうやってあなたの腕に抱かれながら死ねるのだもの。本望だわん」

「ミーにゃん……」

「他の追っ手はすべてアタシが足どめした。もう誰もあなたを追いかけてはこないわん。さぁ、ミアン。安心して部落へお戻りなさい。そして、その『天日干し』を使って、部落の人たちを救ってあげてちょうだい」

「ぐすっ。……ウチはそんなミーにゃんの気持ちも気づかずに、とんでもにゃいことを」

「ううっ……。ミアン、さよなら、アタシもあなたを心から愛して……」

 がくっ。

「ミーにゃん……。ミーにゃああん!」


《どっく。どっく。どぉっく。どぉっく。……》


「まだにゃ。まだミーにゃんは生きている。でも、鼓動が次第に弱く……。

 ぐすっ。ウチは取りかえしのつかないことをしてしまったのにゃん。『お魚の天日干し』にゃんてミーにゃんの命に較べたら……。くしょお。こんにゃもののせいで、ウチはかけがえのないものを失ってしまうのにゃん。こんにゃもののせいで。ばりばり。もぐもぐ。こんにゃもののせいで。ばりばり。もぐもぐ……。

 うん? にゃ、にゃんと! ミーにゃんに斬られた肩の傷が消えていくぅ」

《すぅーっ》

「な、治ってしまったのにゃん。先祖代々から伝えられてきているものとはいえ、こんにゃ摩訶不思議な力が秘められていたにゃんて……。待てよ。この力をミーにゃんに与えたらひょっとして……。よし。口移しで食べさせてやるにゃん。むしゃ。ばりばり。もぐもぐ。ばりばり。もぐもぐ……。

 それにしてもにゃあ、この味わい。この風味。なかなかのものにゃん。天日干しにより、このお魚さんの持つ香ばしさと旨みが一段と引きだされている。加えてこの歯ごたえ。まさに究極の食材。ミーにゃんの部落がお宝としている理由がよく判るにゃあ。もぐもぐ」

「ちょ、ちょっとミアン」

 がばっ。

「なんにゃ? ミーにゃん」

「『なんにゃ?』じゃないわん。死にかかっているアタシにお尻を向けて、いつまで『天日干し』にパクついているの。さっさと口移しで食べさせなさいよ」

「(死にかかっている割には随分と勢いよく飛び起きたのにゃあ……)

 いやあ、ミーにゃんには悪いけどもにゃ。食べている間に、にゃんか我に返ってしまって。お芝居を続けるのがアホらしくなってしまったのにゃん」

「こらぁっ! 役者がお芝居の途中で冷静になったり、我に返ったり、自分のやっていることに疑問を感じたりしてどうするぅ!」

「にゃから、それこそが『お魚の天日干し』に秘められた、本当の摩訶不思議な力によるものなのではにゃいかと」

「アタシが考えだした設定を変な風にねじ曲げるんじゃない! もう、ミアンったらぁ。折角、めでたし、めでたし、の大団円で幕を閉じようと思ったのにぃ。これじゃあ、台なしだわん」

「へぇ。どんな風にするつもりだったのにゃん?」

「こんな感じ」

《『天日干し』を食べたミーナも元気になったわん。ミアンの部落へ一緒に落ちのび、そこで祝言をあげた。一方、それを伝え聞いたミーナの部落では、夫婦めおとになった以上、いつまでもいがみ合っているのもいかがなものかと、ミアンの部落と仲直り。『雨降って地固まる』の言葉どおり、時が経つにつれて部落どうしのつきあいも次第に深まってきた。その結果、秘伝の『お魚の天日干し』も多く造られるようになり、二つの部落に住む全員がその恩恵を浴するようになる。そして時は流れて……。

 二つの部落は一つとなり、みんな仲良く幸せに暮らしました……とさ。……おしまい》

「とまぁ、こうなる筈だったのよ。どう? いいでしょ。それなのにミアンはぁ……って、あれっ?」

「にゃははは! ミ、ミーにゃん! ぶふふふ! ぶははは! ぶわっはっはっは!」

「なによ、ミアン。おなかを抱えて笑ったりなんかして。なにがそんなにおかしいのよ!」

「ぶふふふ! ミーにゃん。幾らにゃんでもそれはないにゃよぉ。だってよく考えてみるのにゃん。どんなに身体によくても、たかが、『お魚の天日干し』。傷を治したり、死にかけた命を救うにゃんて。しかも、そのおかげでめでたしの大団円? そんなアホにゃあ。ぶわっはっはっは!」

「かぁーっ! だからいっているでしょ? 最初から。アタシは別なものにしたかったんだって。ミアンがどうしてもっていうから、……しょうがなくてそうしたんじゃないよぉ。それなのに、……ぐすっ」

「ぶはっ……。

(い、いけにゃい! ミーにゃんが涙目に!)

 そういえばそうにゃった。ウチが悪かったのにゃん。ごめんにゃ、ミーにゃん」

 ぺこり。

「ぐすっ。……いいわん。別に謝るほどのことでもないし」

「(機嫌が少しなおったみたいにゃん。よかったよかった)

 ところでミーにゃん。お芝居はどうする気にゃん?」

「お芝居かぁ……。全くぅ。こんなしらけた状態じゃあ、もう続けられないわん。困ったなぁ」

「この際にゃ。やめたらどうにゃろう?」

「やめるのは構わないわん。でもね。一応、けじめはつけないと。でも……、うぅん。どんな台詞でしめくくったらいいかなぁ」

「お芝居の後始末も大変にゃあ。もぐもぐ。あっ、そうだ。ミーにゃん。一つ聞きたいことがあるのにゃけれども」

「ミアン。今は考えごとをしている最中よん。あとにしてくれない?」

「ちょっとでいいのにゃ。聞いてくれにゃいか?」

「ふぅ。まぁ、いいけどね。それで? なんなの? 一体」

「もぐもぐ。このお魚の天日干し。なんで風呂敷の中にあるのにゃん。ウチは入れた覚えがないのにゃけれども」

「ああ、それ。ええと。確かネイルさんが、『ないとは思いますけど、万が一、なにか起きた場合は非常食としてこれを食べてくださいね』っていいながら、アタシが見ている前で入れたと思ったんだけど」

「にゃに? ネイルにゃんが!」

「うん」

「ネイルにゃん。そんなにウチのことを思ってくれるにゃんて。ううっ。もうウチにとってあんたはご主人様以上の人にゃ。神さまといってもいいにゃん。ネイルにゃああん!」

「ミアンったら、だぁぁっと涙を流しているわん」

「ネイルにゃああん!」

「……そうだ! これを使ってお芝居の終わりを変えちゃおう!」

《ミアンを心から愛し、命をかけて守ろうとしたミーナ。でも今はもういない。あるのは安らかな死に顔だけ。ミアンの心には、たとえようもない悲しみがこみあげてきた。愛する者を失った辛さ。その思いに耐えきれないとでもいうかの如く、ミアンはミーナの亡がらに背を向けると、天を見あげて慟哭どうこくの涙を頬に濡らした。いつまでもいつまでも。……おしまい》

「うん! これならいいわん!」

「ミーにゃん。ウチがこんなことをいうのもなんにゃけど」

「なによん。折角いい気持ちになっているのに」

「『思いっきり泣いた』でいいじゃにゃいか。よく知りもしないのに、『慟哭』にゃんていう言葉を軽々しく使ってはいけないと思うのにゃけれども」

「お芝居を放りだした、とうの化け猫がよくいうわん。もう、やけになった。だったら」

《ミアンは『お魚の天日干し』がもたらすあまりの美味しさに、ミーナのことも忘れて号泣した。いつまでもいつまでも。……おしまい》

「どう? これなら文句ないでしょ?」

「ミーにゃん。ウチが泣いたのは『天日干し』を食べたからじゃにゃくて、ネイルにゃんの好意に感動したからにゃんよ。そこのところをもっと正確に伝えて貰わにゃいと」

「もう、本当にこの化け猫は……。聞く耳持たないわん!

 お芝居ごっこ。これにておしまぁぁい!」

「……ほっ」

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