天才肌のアイツ
努力はした、勝つためにならなんでもした。
それでも俺は、天才肌のアイツには届かなかった。
昔から天才肌だったアイツを傍でずっと見ていて、俺はアイツに勝ちたいってずっと目標にしていたんだ。
だけど勉強、スポーツ、時に運さえ、天才肌のアイツには敵わなかった。
俺は天才肌のアイツに追いつきたくて、形振り構わず頑張った。
頑張っても頑張っても、俺の見る天才肌のアイツには追いつく気がしなかった。
五年、十年、三十年。必死に頑張った。
辛いことを続けたし、楽なことも選ばなかった。
けれども、俺の見るアイツの影は俺よりもずっとずっと先を歩き続けていた。
アイツの影を追いかけていくうち何時の間にか、俺は沢山の人たちから「先生」と呼ばれる立場になった。
褒めてくれる人がいる、称えてくれる人もいる。
だけど天才肌のアイツならきっと「先生」と呼ぶ人も、褒められる事も、称えて人も、もっと多いんだろうな。
ある日、偶然天才肌のアイツと再会した。
俺はアイツの背中を追いかけはしていたけども、自分の事に必死で、本当のアイツを見るのは随分と久しぶりだった。
天才肌だったアイツはサラリーマンになっていた。
毎日営業を頑張って、それなりにノルマをこなし、それなりの報酬で、それなりに暮らす日々。
上司に叱られることもあるけれど、それなりのポストに収まって、愛する妻と子供がいてそれなりに充実しているらしい。
天才肌のアイツ、天才肌だったアイツ。
どっちも同じアイツだけど、俺が勝ちたかったアイツはもういなかった。
『十歳で神童、十五歳で才子、二十歳過ぎればただの人』
才能って本来は追いつかれるためにあるのではないかというのが自分の感想です。
ただ早熟なだけの同年代を比べて、自分に才能がないと悲観する人って多い気がします。
勉強だろうが運動だろうが、『継続は力なり』。絶対に伸ばすことができます。誰にでも。
時間がかかるだけであって、「やって出来ない事は無い」のが自分なりの考えです。