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「ああ。うちの家系は代々『守護者』として名をあげてるんだ。とはいっても名声は過去の話。最近じゃ『守護者』なんてって言われがちだがな。」
現代において前衛といえば、その8割以上が『遊撃者』だ。
年々増え続ける魔獣と戦う者として――前衛として後衛を守りながらも、攻撃役も兼ねる『遊撃者』こそが需要が高く、またその活躍も目立つため花形的役どころなのだ。
数が増えている魔獣の多くは低級から中級レベル。
上級レベルともなれば、魔法使いの火力が必要不可欠とされるが、レベルの低い魔獣であれば、前衛のみでも十分対処が可能だ。
レベルの低い魔獣が群れをなし、人々を害する事例が増えつつあるある昨今、単体でもその数を減らせる『遊撃者』こそが最も需要が高く、そして人気も高い。
『守護者』に攻撃能力がないわけではないが、積極的に仕掛ける『遊撃者』と違い、『守護者』の攻撃は基本的にカウンターが主体であり敵の撃破に重きを置いていないため、縁の下の力持ち的な役どころであり、世間一般としてのイメージを端的に言うなれば『地味』の一言に尽きる。
加えて『守護者』としての訓練には痛みに対する耐性を付ける訓練がつきもの――極めて辛いものなのだ。
「上級の魔獣との戦闘では一応需要もあるけど、ここ最近じゃ不人気職ナンバー1だろ?」
苦笑しつつそう言うディアラに、ガルディウスは少し考えてから頷く。
「そう言われてみれば、ここ最近の名のある『守護者』といえば、割と高齢の方ばかりですね。」
「そうそう。前衛で最近名を挙げてる若手は、基本的に『遊撃者』だろ。」
立派な魔法使いを目指すガルディウスにとって、そんな近年の前衛事情は知るところではなかったが、言われてみれば納得するものはある。
「でも、『守護者』もいなくなったら困ります。」
今でも上級の魔獣との戦いでは、『守護者』が重要な役割を占めることもあるのだ。
後衛である魔法使いの立場として、それはガルディウスの率直な意見だ。
「ああ。俺もそう思うし、だからこそ『守護者』を目指してる。若手で『守護者』の英雄が名をはせれば、後続も出るだろうしな。変態って言われる俺の悪癖も、一応『守護者』の卵としちゃ一種の才能だろ?」
「……一理あるとは思いますけど。」
そう言いつつも納得できない様子のガルディウスに、ディアラは笑う。
「久々に女扱いされて自分の性別を思い出した気分だぜ。ま、エリシャと組んでりゃ、そうそう傷は残らねえから気にすんな。」
小治癒でも上級魔法並みの回復魔法を発動させるエリシャにかかれば、確かにそうそう傷は残らない。
だが――
「ディアラさんとエリシャさんって、学武会のペアなんですよね?」
「ああ。」
即座に肯定するディアラだが、ガルディウスとしては納得がいかない。
エリシャは回復専門だ。
そしてディアラは『守護者』。
このペアには、攻撃力がどう考えても足りないのだ。
「学武会、どうやって勝つつもりですか?」




