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魔力制御がお粗末なバーデルの魔力の放出は意図したものではないが、意図的な高濃度の魔力を放出は魔法使いの基礎ともいえる初歩的な魔力操作であり、それが攻撃として用いられることもある。
実際魔獣の中にも、それを攻撃手段とする種も存在するのだ。
魔獣と戦い続けている人間は、魔力酔いにも対処法を編み出している。
魔法使いであれば、高濃度の魔力が来る――それがわかって備えていれば、初級の精霊魔術以下の魔力でそれを防ぐことは可能だ。魔法使いでなくとも、気の操作に長けた武人であれば同様のことが言える。
必要単位を満たすことができた生徒たちを対象とすれば、そのほとんどが面と向かって対峙する分にはバーデルの魔力の放出はさして脅威とはならないだろう。
バーデルの魔力の放出は有名であり、対戦ペアがそれに備えないわけはない。
そうでなくとも、戦闘において敵の攻撃には備えるのが当たり前だ。
けれど、それが味方からもたらされるものであれば――それも一般的な魔力の放出に当てはまらない場合は話は別だ。
そもそも魔力の放出は基本的に放出者の可視範囲の外へはあまり強く働かない場合が多い。
魔力操作は基本的に意志の力で制御されるため、認識の薄れる視界外には及びにくいためだ。
しかし無意識の中放出されるバーデルの放出は、それに当てはまらない。
完全に視界外の背後の味方へも、無造作に放出されるのだ。
学院は魔獣と戦う兵士の育成施設であり、一年とはいえ敵と対峙して前方への警戒を怠る者は少ないが――それが味方……それも安全なはずの自分を守る前衛の背後から、前振りもなくもたらされる脅威に備えろというのは、戦闘経験の少ない一年生には酷な話だ。
二対二のはずのペア戦闘が――バーデルと組む生徒は時として三対一も同然の立場に追いやられるのだから。
ユハスに言い負かされ項垂れるバーデルに、ガルディウスは口を開く。
「大丈夫です。僕、魔力酔いにはなりませんから。」
仮面で表情はわからないが、やたらときっぱりと言い切ったガルディウスを、バーデルは睨みつける。
「魔力値50のくせに何言ってんだ。」
魔力値が低いほど魔力酔いになる恐れは高まる。勉強嫌いで馬鹿だ馬鹿だと言われるバーデルでさえ知る常識だ。
「でも、大丈夫だと思うんです。だって僕、魔力酔いになったことなんてないですから。」
「それはたまたま高濃度の魔力の放出をくらわなかったからだろ!」
「そんなことはない……と思い、ますけど。……多分。」
語気を荒げたバーデルに、思わず弱気に返すガルディウスの頭をユハスは持っていた本で思い切り叩いた。
「い、痛いです。」
頭を抱えるガルディウスを、ユハスは冷ややかに見据えた。
「その馬鹿の言葉ごときでうろたえると、その仮面……剥ぎ取るぞ。」
その言葉にぎょっとしたように仮面を抑え、ガルディウスはバーデルをきっと見据えて叫んだ。
「あ、あなたの魔力で魔力酔いになんて絶対なりません!!」
学院中に響き渡るほどの宣言。
「……そこまで嫌か。」
元凶のユハスも呆れるほど、仮面愛のガルディウスには有効な脅し文句であった。




