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季節は冬。
アルデルト学院の一年生にとって最大のイベントが開催される、節目の時期である。
学院一の落ちこぼれの新入生と評されながらも、サザーラやユハスの院内クエストにより不足単位を補うことに成功したガルディウスだが、ここにきて大いなる問題に直面していた。
「学武会、どうしよう……」
学武会こと、『学院武術大会』。
半年以上かけて学んできた武術や魔術――それを対戦という形式でぶつけあう、必要単位を満たした一年生のみが挑む進級を左右する学内行事である。
この学武会において、上位60名の優秀者に入ることが進級への最低限の条件になっている。
筆記ではなく、実技。
ユハスという教師を得て大分読み書きの能力を上げたガルディウスだが、正直筆記では未だに赤点レベルを脱していない。それを考えれば、実技というのはありがたいことなのだが――。
問題は、学武会の対戦は、すべてパートナーを必要とするペア戦闘であることだった。
「僕と組んでくれる一年生なんている……?」
パートナーは自分自身で探さなければならない。
交友関係の狭いガルディウスにとって、これはとてつもない難題だった。
学武会のパートナーは、一年生のみが挑むイベントである以上当然一年生に限られる。
(アルティナさんも、ユハスさんも2年生だし……サザーラ先生なんて教師だし。)
パートナーとして力量をある程度認めてくれそうな相手では条件を満たさず。
(一年である程度僕の話を聞いてくれそうなのって、ハルルク君だけだけど魔法科で僕と同じ後衛タイプだし。)
ある程度交流のある寮のルームメイトである一年生は同じ魔法科だが――学武会においてのペアは武闘科と魔法科の生徒で組まれることが多い。
ペアは事前に、前衛・後衛の役割を含めて登録し、前衛役は前衛役としての評価。後衛役は後衛役としての評価が加算される。
武闘科において魔法科の授業を受ける者、魔法科において武闘科の授業を受ける者もいるため、こうした役割分担を課さなければ、闘技場と言う限られたスペースにおける戦闘では魔法や遠距離攻撃の準備が整わないうちに近接戦闘で圧倒できてしまうため、近接戦闘に特化した者に有利になりがちだ。
接近戦が得意な者。
支援や遠方からの攻撃を得意とする者。
それぞれを得意分野において評価するため、前衛・後衛制度であり、前衛役の評価点は近接戦闘においてのみ加算され、後衛役の評価点は支援・遠距離攻撃においてのみ加算されるのだ。
この制度によって、身体能力の低い魔法しかない生徒たちにも活躍の場が生まれる。
身体能力が低くとも魔法のみで単位をとれるだけの力がある生徒であれば、前衛が魔法を発動させる時間さえ稼げれば大きな戦力となる。
後衛の魔法使いを活かす――それは対魔獣戦闘において、王道ともいうべきスタイルであり前衛として高い評価点につながる。
一年生がこのイベントで評価されるのは総合力ではなく、特化した特性と、他者との協調性なのだ。
武闘科の生徒たちのほとんどが前衛能力が高く、魔法科の生徒は後衛の能力に優れる場合が多いため、自然と武闘科の前衛、魔法科の後衛というペアが多く生まれる。
例外はあるが、それは後衛・前衛の能力がうまく組み合わさった――武闘科の弓使いや、魔法科の魔法剣の使い手など――特殊なパートナがいた場合だ。
ガルディウスは根っからの後衛タイプであり、必要パートナーは前衛タイプだ。
しかし、ガルディウスが交流を持つ一年生に、前衛タイプは一人もいない。
トーナメント形式で行われるこのイベントにおいて、ペアの順位は評価における大きなウエイトを占めるが、順位が低くても、自分の役割内で高い評価点をたたき出すことができれば、敗者にも進級の可能性はある。
とはいえ、確実を期すのであればやはり目指すはペアにおいての上位入賞。
当然――学院一と噂される落ちこぼれであるガルディウスなど、誰もお呼びではないのが実情なのだ。




