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仮面の紋章使い  作者: 9BO
Chapter3:秘匿されない魔術
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 魔法具によって変わった視界のなか、改めてガルディウスを見て思う。


(どうやら、こいつの魔術に仮面の呪いは関係無さそうだな)


 魔力が見える今ならわかる。

 あの仮面の呪いの力は微力なものだ。


(あの程度の呪力だったら、装備したら外せなくなる程度がせいぜいだろ)


 だとすれば、ガルディウスの魔法の正体は別にある。


「行くぞ。まずは様子見だ。」


 そう宣言し、ユハスは詠唱を始める。


「我が魔力よ、燃え盛り目の前の敵を焼き払え……」


 ゴーレムに魔術名のみの短縮詠唱をさせることができるユハスは、その気になれば無詠唱での発動も可能だが、あえてきっちり詠唱する。

 このクエストでは攻撃はユハスだけなのだから、短縮詠唱や無詠唱にはさして価値がない。

 ガルディウスにの魔術が見たいユハスとしては、防ぐ隙を与えないようにする必要などないのだから。

 ガルディウスの無効化は高速での発動可能であるようだが、備える時間はあるに越したことはないだろうし――魔力値が低いユハスとしても、こうした現代魔術は時間に余裕があるのなら、きっちり詠唱した方が消費魔力が節約できていい。


 宣言。

 詠唱時間。

 そして、現代の主流である炎の中級精霊魔術――


「ファイアーブレス!」

 

 術の練度、込められた魔力量ともに申し分のないお手本のようなファイアーブレス。

 2年生であるユハスが発動したこの魔法を完璧に防ぐのは、普通の1年であれば難しいだろうが、このクエストを受けると意思表示をした以上、これほどお膳立てされたこの攻撃を防げないはずがない。


 ユハスの発動した紅蓮の炎が、ガルディウスに迫る!


 しかしそれは案の定、ガルディウスの数シーム手前で跡形もなく消え失せる。

 それはユハスにとっても予想通りだったが――


「なっ!?」


 その時見たガルディウスの魔術に、ユハスは目を見開く。


 無造作に蠢かされているようにしか見えなかったガルディウスの両指から生み出される、複数の魔力の紋章――今までの常識を覆すほどの完成度の自己魔導をその目に見て。

 

(なんてスピード!それに一気に複数の陣を自己魔導で展開させてやがる!?)

 

 恨めしいほど、憎らしいほどの幼馴染が、紋章術でもその天才ぶりを見せつけるのかとうんざりしていたが――こんな自己魔導を見れば、クロードのそれなどまだ生ぬるい。


 そして思い出す。サザーラの言葉――

『自己魔導を使えるクロード君と、自己魔導を使いこなす彼の差です。』


 

 

「おまえが……おまえが紋章術の実技で1位の1年か!」



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