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「この魔法具の効果は、『神眼付与』だ。」
正体不明の魔術の解明に、『神眼付与』は有益な魔術だ。
とはいえ残るクエストではユハスは攻撃魔術を使うため、神眼付与を併用して使用することは不可能だ。
だからこそ、この魔法具の出番なのである。
「ええと……そんな魔法具があるなら、はじめから使えば良かったんじゃ?」
ガルディウスは、自らの魔術を隠そうとは思っていない。
ただし――自らの生まれ持った神眼と少なすぎる魔力値から身についた魔術が、たまたま普通の目の人間にはわかりにくいものだということは認識している。
だから知っている。
ガルディウスと同じように魔力を見ることが可能となる『神眼付与』を使えば、ガルディウスの魔術が目に見えてわかることを。
とはいえ、生まれつき神眼を持つガルディウスにとっては今一つピンとこない話だが、神眼付与は一般的に高度な複合魔術だ。
魔術を見抜くことを目的としながらもユハスが神眼付与を使わないのは、学院一の落ちこぼれとして有名な自分の術ごときを見抜くことに、そこまで難易度の高い術を使う必要性を感じなかったからかと思っていたのだが、そんな魔法具があるのならば――なぜ使わなかったのか疑問だ。
「まだこの魔法具は試作品なのさ。完成すれば日常的に使えるだろうが、常用の装備型魔法具に仕上げる予定なのに、今はまだ限られた時間しか使えない。まだ俺の中で実用レベルに達してもいないものをはじめから使おうとは考えないさ。」
「まだ未完成ってことですか?」
「ああ。」
数年前から神眼の有用性に着目して開発していた魔法具だが、こうしてある程度かたちになったのはつい最近だ。
ただでさえ難易度の高い複合魔術の魔法具化――それも、常時その恩恵を継続させるとなると、魔法具の開発に精通したユハスにとっても容易いものではない。完成までの目途はたったが、まだ半年ほどは完成までにはかかるだろう。
「だがまあ、今日のクエストに限定すれば問題ない。一戦中くらいは保つ程度の持続時間はあるからな。」
そう言ってユハスは魔法具に魔力を流し込み、魔法具の力を発動する。
視界が変わる。
魔力が映る――ガルディウスに近い世界に。
「おまえの神眼には及ばないだろうが、この魔法具の効果の精度もかなり高いぞ。」
「んー……そうみたい、ですね。僕の魔術、それなら充分見えると思います。」
自らの術を秘匿する魔法使いの中には、神眼対策をする者も少なくない。
しかし、ガルディウスはそうではない。
「そんなに大したものではないですけど、好きなだけ見てください。」




