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仮面の紋章使い  作者: 9BO
Chapter3:秘匿されない魔術
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 翌日、残るクエストを受けにきたガルディウスは、昨日とは違うユハスの装備に目を瞬いた。


「そのゴーグルって、魔法具ですよね?」

「いきなり気づくとは……本当にいい眼をしているな。」


 このクエスト用にユハスが用意した魔法具は、ユハスが独自に開発したもので世間にでまわっていない上、一見したところただのゴーグルにしか見えないものだ。

 効力を発動させれば、ガルディウスが気付くであろうことは予測できたが――まだ未発動の状態のこの魔法具を見て気づくなど、よほど優れた神眼でなければ無理な話だ。


「おまえ、特科で入ればおちこぼれとは言われなかったんじゃないか?」

「……アルティナさんにも言われました。」


 神眼は希少価値のある異能だ。


 神眼能力者でなくとも、魔術による神眼付与で同じように魔力を認識することは可能だが、そもそも神眼付与は高度な複合魔術だ。

 魔力を可視化することは、魔獣の弱点を見抜いたり、術の特性を見抜くのに有用だが、それが実戦で活用されることは意外と少ない。


その一番の要因が、その難易度だろう。


 一時的に短時間可視化する程度であれば、それほど難易度は高くない。

 敵のステータスを見破るアナライズなどの魔術は神眼付与の延長上にあるが、難易度は低く習得している魔法使いも多い。

 しかしその効果は『その時』の状態を見る、瞬間の可視化――いわば静止画状態で見る術であり、それを継続するとなれば難易度は格段に上がる。


 とはいえ、神眼付与だけならば腕の良い魔法使いならば使いこなす。

 ただし――更に他の魔術を併用できるほど、容易い術ではないのだ。


 ユハスもこの術が使えるが、魔力の可視化を他の魔法使いよりも有益と考える研究家色の強いユハスですら、複数人のパーティー戦において格上の魔獣と戦闘する時以外ではめったに神眼付与など使わない。神眼付与だけにかかりきりになってしまうため使えないのだ。

 魔力値が低いとはいえ、神眼付与の術に頼らない神眼があれば、神眼の恩恵を受けながら魔術を行使することができるという大きなアドバンテージにつながる。


「多少魔法がヘボくても、神眼強化をかかげて入学すれば、落ちこぼれどころか優遇されてもおかしくないぞ?」

「僕は別に神眼を強化したいとは思ってませんから。それよりそのゴーグルは、どんな魔法具なんですか?ひょっとして眼からビームでも出るんですか?」

「出るか!」

「え?……出ないんですか?」

 そう言って残念そうに肩を落とすガルディウスに、ユハスは眉を寄せる。

「なんだその期待外れ的な、あからさまながっかり具合は……」

「出たらカッコイイと思ったから……」

「いや、むしろ不気味だろ。」

「そんなことないです!アルティナさんから魔法具も造る人だって聞いたから、そんなことができるなら僕の仮面にもぜひ能力追加をお願いしたかったんですけど……」

「た、ただでさえ悪趣味なその仮面で、目からビームだと?」


 可能か否かといえば――ユハスには、可能だ。


 だが、そんな悪趣味なものに関わるのは、断固拒否である。

 どこかまだ期待しているようなガルディウスの瞳に、ユハスは全力で気が付かないふりをするのだった。

 



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