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初めの一撃で機能しなくなった核については、機能停止の理由は一目瞭然。
素体の破損による術式の欠損だ。
魔石に内包された魔力を術式で放出し、放出された魔力を動力としてゴーレムは稼働している。
魔力を放出する術式は核の素体に物理的に刻まれているため、核に刻まれた術式が破損すれば動力を失いゴーレムは停止する。
素体が破損してゴーレムが動かなくなるのは、当然の結果だ。
しかし、無効化で機能停止に追い込まれた他の核には一目でわかるような傷はない。
素体自体は無傷なのだ。
核の素体に破損がない以上、無効化での機能停止として考えられるのは、魔石から術式で放出された魔力がすべて無効化されたための一時停止のみのはずで――素体に刻まれた術式により新たに魔力が放出されれば、またゴーレムは動き出すのが道理。
無効化の魔術は、魔力や神力に作用するものであり、物理的な効果を及ぼすものではない。
自己魔導のような魔力で描かれた術式にならば干渉できるが、物理的に刻印された術式には効果がないのだ。
それが動き出さない要因は何か。
無傷に見える核を手に取り、ユハスは目を細める。
(……やっぱり放出の術式に問題はない。だとすれば、問題は中身か。)
地下の訓練室から研究室に戻ったユハスは、ビーカーに魔導水を注ぎ、その中に問題の核を投入した。
魔導水は、紋章術を行使する際の魔力のインクとして使われる他、様々な魔法道具の材料となる利用価値の高い水だ。
外遊魔力を集める他にも、魔力に反応して色を変える性質があり――今回の目的は後者。
高濃度の魔力を内包した魔石を浸せば、はっきりと色を変えるはずなのだが……魔導水には色の変化はなかった。
「……中の魔力が枯渇してる、か。」
耐魔性の高い素体をどう攻略したのか――ガルディウスの無効化は、魔石に込められた魔力を根こそぎ『無効化』していたのである。
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残るクエストは1つ。ユハスの魔法の的となり全てを受け切ることだ。
今までのクエストと違い、アルティナとともに受けることもできるクエストだ。
前衛を援護する補助魔法はガルディウスの得意とするところであり、ユハスの示したアルティナとともに受けるという選択肢はクエストの難易度をさげるものでもある。
「残りのクエストって、私が参加してもいいって言ってたやつだけど……。ガル、一人で大丈夫?」
明日から課外演習の予定のアルティナのそんな言葉に、ガルディウスは頷く。
「はい。元々自力でなんとかするつもりでしたから。」
アルティナが明日から課外演習であることは事前に知っていた。
一緒に受ける気ならば、まず一番に受けたクエストを最後に残したのは、もともと単独で成し遂げるつもりでいたためだ。
「魔法だけを防げばいいなら――僕、得意です。」




