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ゴーレムに加えられた攻撃自体、ユハスの目には映らなかった。
地に伏したゴーレムに、目につくような破損は見られないが――108ある全ての核が機能しない。ゴーレムの心臓部とも言うべき核が機能しなければ、ゴーレム自体動かしようもない。ガルディウスの宣言通り、これでは終わりだ。
「……おめでとう。このクエストも達成だ。」
残るクエストは、ただ一つ。
「あとは、ユハスさんの魔法の的になればいいんですよね?それもここでやるんですか?」
「ああ。ここなら思いっきり魔法が使えるからな。」
「じゃあ、いつでもどうぞ。」
そう言ってどうぞとばかりに両手を広げるガルディウスに、ユハスは眉を寄せる。
「……待て。今すぐやる気か?」
「え?やらないんですか?」
首を傾けるガルディウスに、ユハスは舌打ちする。
ガルディウスの魔力値は50しかない。
いくら魔力コストの低い外遊魔力メインの魔術を使ったとはいえ、これだけ魔法を使えばかなり消耗しているはずだ。
まだ、ガルディウスの魔術についてほとんど把握していない以上、なるべく多く試したいユハスとしては、そんな状態でのクエストは望ましくない。
「次のクエストは、俺の魔法を全て防ぎきることだ。一発二発防げば終わるクエストじゃないぞ。万全の魔力で挑め。」
「それほど魔力は消耗してないですけど……じゃあ、5分後くらいに?」
「5分後だと?」
思わず地を這うような低い声で聞き返したユハスに、ガルディウスはひるむ。
ガルディウスは、ユハスの機嫌が悪くなっての声だと思ったようだが、実際は驚きのためだ。
(5分で消耗した魔力が回復するっていうのか?)
本当に、それだけ微量の魔力しか使用しなかったのか。
それとも魔力の自然回復力が高いのか。
どちらにしても興味深いが――それが事実なら、こちらとしてももっと準備して次のクエストに臨みたい。
「ええと……いつならいいですか?」
「…………明日の放課後、来い。」
「わ、わかりました。」
「報酬は、明日まとめて渡す。それでいいな?」
「はい。……あ、ゴーレム直した方がいいですか?」
「……直せる、のか?」
「ええと……はじめの攻撃で壊した核は無理ですけど、他は直せます。よければすぐにでも……」
そう言ってゴーレムに近寄ろうとしたガルディウスを、ユハスは遮るようにして制する。
「いや、いい。自分で直す。おまえはさっさと帰れ。」
「は、はい。失礼しました。」




