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ゴーレムにこれ以上練度の高い魔法を使う能力はない。
神眼で見極めた上で無効化を常用しているのか、対ゴーレム戦故なのか――その答えは次回クエストに持ち越すしかないだろう。
(さすがに俺の本気の魔術まで無効化できるとは思えないが、ある程度の練度を試し撃ちしてみるのもいいな。)
練度とは魔力操作の技量であって、魔力値の大小は関係ない。
練度の場合、かえって魔力値の低い人間が高いということはままある話だ。
魔力値が高い魔法使いは扱いやすい内包魔力を使う現代魔法のみを使う者も多いが、逆に魔力値の低い魔法使いは扱いにくい外遊魔力を用いた魔術にも手を出さざるを得ないのだから、より優れた魔力操作の技量が必要となるのだから、当然と言えば当然だ。
魔力値が高い魔法使いでも、クロードのように外遊魔力を用いた魔術を多用する魔法使いもいるため、必ずしも魔力値が低い方が練度が高いわけではないが。
魔法使いとしては平均の半分程度の魔力値しか持たない上、研究家であるユハスは、あらゆる外遊魔力を用いた術に精通しており、その分練度は高いという自負がある。
(さて、どうするか。)
ゴーレムの核の2割の機能を奪った攻撃魔術。
ゴーレムのはじめのフレイムアローを避けた、身体能力向上の補助魔術。
次のフレイムアローを防いだ無効化と、先ほどの無効化。
すでに少なくても4回は術を発動させているガルディウスだが、魔力切れの気配はまだない。
(普通に考えれば、魔力値50じゃもう魔力切れのはずなんだけどな。)
初級の精霊魔術一発で魔力切れを起こしたというガルディウス。
身体能力向上の補助魔術も、無効化も、魔力コストは低いものだ。
とはいえ無効化だとて、現代魔法である神聖魔術の無効化ならば、すでに魔力切れをおこしていなければおかしい。
(50なんて魔力値で魔法使いになろうなんて考えるなら当然っちゃ当然だが、本来こいつは現代魔法は一切使わないスタイルなんだな。)
ゴーレムは、核の内部の魔力を使って魔法を発動させている。
核には相当量の魔力が貯められているが、初級とはいえ魔力コストの高い精霊魔術を連発し続ければこちらの魔力切れは近い。
ゴーレムの魔法が外遊魔力で無効化される以上、これ以上魔法を撃たせ続けてもこちらが一方的に消耗するだけだ。
かといって、物理攻撃にしてはガルディウスからしかけてくる余裕を奪いかねない。
(そういえば、向こうから仕掛けてきたのは一度きりか。)
今のガルディウスなら、こちらに仕掛けてくる余裕はありそうだが――
「消耗戦に挑もうって腹づもりか?」
「え?別にそういうつもりは……ただ、参考になるかなぁって。」
「参考?」
「でも、ユハスさんの時間を無駄にするのも悪いですし、もう終わらせます。」




