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ユハスの操るゴーレムの核の総数は108。
ガルディウスの魔法で数を減らしたとはいえ、まだ90もある。
そしてこのゴーレムは、ただ核が多いだけのゴーレムではない。
人の手により造られたゴーレムは、逐一術者の命令を受けて動く操縦型と、あらかじめ組み込まれた命令通りに動く自動型に大別されるが――このゴーレムはその両方の性質を持っている。
ユハスの言霊で、ゴーレムは動きを変えるのだ。
「セット、36」
ユハスの言霊に、ゴーレムは巨大な体に似合わない俊敏さでガルディウスから距離をとり、両手をガルディウスの方向へと向ける。
常道で言えば、近接戦闘をメインとするゴーレムが敵の魔法使いから離れるなど愚策でしかない。
しかし――淡々とした音色でゴーレムは言葉を発する。
「フレイムアロー」
魔術名のみの短縮詠唱とともに、ゴーレムの指先から10本の炎の矢が放たれる!
「うわっ!」
ガルディウスは、とっさに魔術で身体能力を向上させそのすべてを回避するも、思わずゴーレムをまじまじと見つめた。
「ゴ、ゴーレムが魔法を使ってる!?」
ガルディウスの驚きに、ユハスは不敵に笑う。
「このゴーレムには、核の数と同数の命令系が組み込まれている。中にはこうやって魔法を使う命令系もあるというわけだ。2割ほどお前に壊されたが……まだ充分戦えるってわけ。」
このゴーレムの核は、心臓であるだけではなく、頭脳でもある。
あらかじめ組み込まれた命令通りに動く自動型でありながら――108パターンもの命令を組み込まれた核の中から戦況に適した核を主頭脳に切り替えることで、操縦型並みに融通のきく固体に仕上げてあるのだ。
108もの命令系の中には、3割ほど魔法系の攻撃パターンを組み込んだものもある。
近接攻撃に特化するゴーレムとして、魔法が使えるという点は異彩を放つが――。
「まあ、魔法は初級の精霊魔術しか使えないけど。」
核に内臓した魔力量の問題もあり、あまり魔力消費の高い術は使えないのだ。
まだまだ研究段階であり、魔法系のパターンはユハスを満足させる出来には程遠い。
――が……
「精霊魔術だと、僕ってゴーレム以下だったんだ……」
肉体的には無傷だが、多大な精神ダメージにガルディウスはがっくり項垂れる。
それを見てユハスは、耳にしていた噂を思い出した。
「話半分で聞いた噂だが……初級の精霊魔術一発で倒れたらしいな?」
「……はい。」
力なく頷いてさらに落ち込むガルディウスとは裏腹に、ユハスはガルディウスへの関心を高める。
(それだけ魔法使いの才能に欠けていながら、このゴーレムにここまでの損傷を与えられるとはね。)
ガルディウスの魔術を理解するには至らないが、察せられることはある。
呪文や魔道具の使用はなし。
けれど、何のモーションも見られなかったという訳ではない。
ガルディウスから見て取れた魔法を発動するきっかけとなるような動きと言えば、手の動きだろう。
(印術の一種か?)
印術とは主に手の動きで刻む印を式として展開する魔術の総称で、術の発動には印が必須であり発動する魔法の性質によって組む印の組み合わせはある程度決まっているため、有識者が見ればどういった性質の魔法が発動するかをある程度は見切ることができる。
だが印術は種類は数が多く、魔術の秘匿のためアレンジを加えられていることも多いため、初見での見切りは難しい。
印術の知識を広く持つユハスであれば、それでもある程度察しがつくことが多いが――
(こいつのは、初見じゃ無理だな。)
さらっと何でもないように使っているが、一瞬で組み立てられる複雑な印はとても目で追い切れない。
複雑な印術では術者自身も印の把握が難しいため、あえて通常は不可視の魔力を可視化するだけの魔力を込めて印を刻むことが多いが、ガルディウスにはそれもない。
(まあ神眼持ちじゃ、印の可視化なんぞ無用だからな。)
ユハスには見えない複雑な魔力の印が、ガルディウスには普通に見えているはずだ。




