02
続々と門を通過する新入生たちをじっと見つめる少女がいた。
ぱっちりとした大きな瞳と、華やかな金髪が印象的なとびきりの美少女である。
胸元のピンバッチの二本のラインが、彼女が新入生たちにとって上級生にあたる二年生であることを示していた。
それは彼女が対魔獣技能において優秀な生徒であることと同義だ。
何せアルデルト学院においては、入学よりも進級が難しい。
新入生の半数以上が進級できないうちに辞めていくという実態がそれを物語っている。
門を通過した新入生――特に男子生徒は、そんな優秀で可憐な先輩美少女の視線に胸を高鳴らせる。
その場を通り過ぎていく新入生たちには見向きもせず、門を通過する生徒を見逃すまいというようにじっと見つめる様子から、誰かを探しているのだろうと察しはつく。
通り過ぎた生徒たちはその対象が自分でなかったことにいくらか落胆しながらも、まだ見ぬ少女が探し求める存在に興味と嫉妬を半々に抱く。
そしてある人物の姿を捕えた少女の瞳が、喜色に輝いた。
少女は軽やかに大地を蹴り、探し求めていた存在へと駆け寄っていく。
「ガル!」
そうして少女が飛びついたのは、不気味な仮面をつけた新入生だった。
美少女と、不気味な仮面の新入生の抱擁という異様な光景に周囲は凍りついた。
よりにもよって、何故アイツ!?
男子生徒は思わず視線に殺気と嫉妬を多分に乗せてしまう。
そんな周囲の穏やかならぬ空気を知ってか知らずか、少女を抱きとめた仮面の生徒がおずおずと口を開いた。
「お、お久しぶりです。アルティナさん。」
それは派手な仮面の印象とは裏腹の、気弱そうな頼りない細い声だった。