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「魔力値50の魔法使いが、魔術を暴かれても平気?……はなから諦めて、魔法使いとして名をあげる気などないというわけか。」
確かに魔力値50というのは、魔法使いとして絶望的な才能だ。
どれだけ魔術に工夫を凝らしたところで、魔法使いの平均値どころか一般人の平均値すらはるかに下回る魔力値ではその差を埋めることができるとは思い難く――入試突破レベルの魔法を使えたというだけでも奇跡的だ。
入試突破レベルの魔法をそれだけの魔力値で発動させたことは評価するが――
(この先努力を続けたところで、魔法使いとしては良くて3流レベルといったとろか。)
そんな考えに至るユハスに、アルティナは肩を竦める。
「それはどうかしら?確かにガルにとって、世間の評判なんてどうでもいいことかもしれない。だけど、ガルの目標は『立派な魔法使いになること』だもの。そうよね?」
アルティナの問いかけを受けて、ガルディウスは頷く。
「はい。」
迷いのない肯定に、ユハスは目を細めた。
「立派な魔法使い……ね。」
立派な魔法使い――それがどの程度のレベルを言っているかはわからないが、アルティナの含みのある言い方からして、3流程度で満足するわけではないだろう。そして家柄的に多くの騎士と接する機会のあった――優秀な魔法使いとも多く顔を合わせてきたアルティナが、評価する新入生。
学院一の落ちこぼれと噂される新入生――それも、たったの50の魔力値しか持たない魔法使いが迷いも見せず目指す先とは?
「暴かれても平気なのは、諦めているからじゃないわ。そもそもガルに秘匿する気なんてないだけなの。」
「秘匿する気がない?本当か?」
ユハスの問いを受けて、ガルディウスの視線が揺らぐ。
ガルディウスにも、秘密にしたいことはある。
「ええと……魔術の話?」
「他に何がある。」
鋭い眼光で言い切られて、ガルディウスは怯む。
「うっ……その……仮面の下は見せられないけど、魔術は別に隠してない、です。」
「仮面の下?そんなどうでもいいものを隠して、魔術を隠さないとは魔法使いとしてどういう了見だ。」
眉を吊り上げ更に鋭い眼光を向けるユハスに、怯えるように後ずさるガルディウスの背をアルティナが支える。
「ちょっとユハス。ガルが魔術を隠してないことを何故貴方が怒るのよ。むしろ好都合でしょう?」
魔力値50で入試を突破するガルディウスの魔術。
それに興味を持ってガルディウスを研究室に招いたのなら、この事態は好ましい筈。
そんなアルティナの指摘に、ユハスは忌々しげに舌打ちする。
「隠していた魔術を暴かれ絶望した顔を見る楽しみが減るだろう。」
「…………最低ね。知ってたけど。」




