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仮面の紋章使い  作者: 9BO
Chapter2:院内クエスト
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「先生、これが今回のリードリーフです。」


 クロードとユハスから受け取ったリードリーフを確かめ、サザーラは微笑んだ。


「確かに受け取りました。良質の物をありがとうございます。今回の報酬はどうしますか?」


 サザーラのクエストの報酬には、2つの選択肢がある。

 院内クエストならではの『単位』。

 もう一つは、サザーラの造る『魔導水』だ。

 

 二人ともこのクエストは何度も受けている。

 クロードもユハスも優秀な生徒であり、単位に不足はないため選ぶのはいつも後者だ。

  

「今回も魔導水で。」


 迷いなくユハスは答える。

 ユハスはもともとサザーラの造る魔導水が目当てでこのクエストを受けている。

 魔法具を造るユハスにとって魔導水は重要な素材である上、サザーラの造る魔導水の品質は市販の物とは比べ物にならない程に良質だ。


「……俺も、魔導水で。」


 やや迷いを見せたが、クロードも魔導水を選択する。

 ユハスと違い魔法道具の制作をしないクロードにとって、魔導水はそれほど価値がない。

 一般的な紋章術の行使には魔導水が使われるが、自己魔導(セルフリード)を扱うクロードは魔導水を必要としない。


 紋章術の授業の中で多少は魔導水も使うが、何度もこのクエストを受けているクロードには、既に授業では使い切らないくらいのストックがあるのだ。

 売れば多少のお金にはなるが、これといった用途はない。

 とはいえ、魔法系・武闘系共に優秀な成績を修めるクロードにとって、授業以外の単位などもっと不要だ。

 クロードがサザーラのクエストを受ける理由はただ一つ。――紋章術の実技一位の生徒の魔法を見ることなのだ。


「……先生、実技でこいつを越える1年がいるというのは本当なのか?」


 ユハスの問いに、サザーラは微笑む。


「ええ。本当です。ユハス君も、クロード君に聞いたんですね。」

「ああ。あんたがその手の嘘をつくタイプじゃないことはわかっているが……この馬鹿は、その1年を見つけるためだけにこのクエストを受けているみたいだが、そんなことをする意味があるのか?」


 ユハスとしても、実技一位の一年に興味はある。


 紋章術をとる生徒は基本的に魔法値が低く、現代魔法では単位を取るのが難しいために単位は不足しがちだ。

 それ故、サザーラの院内クエストを頼る可能性は高い。

 そう考えるクロードが間違えているとは思わない。


 けれどもし、その生徒が魔法科以外の授業で単位をとっていたら?


「そいつがこのクエストを受けるかどうかなんてわからないだろ。」


 院内クエストは、単位が足りない生徒にとっては効率のいい単位稼ぎだ。

 けれど、その生徒の単位が足りていたら?

 単位さえ足りていれば、ユハスのような魔法具製造に携わる者でもなければ、このクエストを受けるメリットはさしてないのだ。


 他の可能性だってある。

 単位が足りないとしても受けられないケース――


「そもそもそいつが1年だって言うなら、同行する相手がいなけりゃこのクエストは受けられないわけだしな。」


 シモンの洞窟は、1年生の単独での立ち入りは制限されているため、パートナーがいなければ受けられないのだから。

 

 

 

 

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