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仮面の紋章使い  作者: 9BO
Chapter2:院内クエスト
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19

 ユハスたちと別れ、洞窟の奥へと改めて進みながらアルティナため息を漏らす。


「サザーラ先生以外に院内クエストのあてができたのは喜ばしいけど、よりによってユハスなんて……微妙な心境だわ。」


 落ちこぼれと名高いガルディウスが受けられる院内クエストなど、そうはない。


 幸いにも、サザーラの院内クエストは何度でも受けることのできるタイプのクエストだが、それだけでは不足単位は補いきれないだろう。

 学院の修練場とはいえ、野生の魔獣の徘徊するシモンの洞窟は、不測の事態に備え単身での立ち入りが禁止されている。

 ガルディウスに可能なかぎり協力しようとは思っているが、自らもまた学生であり、将来は名門家の名を背負う立場になるアルティナが、常に同行することは叶わない。


 そんな中、アルティナ不在でも受けられるユハスの院内クエストは、願ってもいない申し出であり、ユハスの関心度によっては今後のクエストにも繋がる可能性さえある。

 ユハスとガルディウスの両方を知るアルティナからしてみれば、むしろ今後にも期待できる可能性が高いのだが……ユハスの性格はあまり褒められたものではない。


「ユハスさんって、どういった方なんです?」

「一言で言えば、魔術オタク。オリジナル魔術や、魔法具の開発に特化した研究者色の強い魔法使いよ。腕は良いんだけど、性格には難あり。敵をつくるのに事欠かない奴よ。」

「性格に難……ですか?」

「話したのは少しだったから、ちょっと感じが悪いくらいにしか思わなかったかもしれないけど、初対面なのに落ちこぼれとか平然と言ってきたでしょ?ガルだって嫌な思いしたんじゃない?」

「仮面を悪く言われて少しむっとしたのは事実ですけど、僕が落ちこぼれなのは事実ですから別に……。この仮面の魅力を理解してくれない人が多いのは今更ですし。」


 後半の台詞にアルティナの笑顔が引き攣る。

 ガルディウスのことは大好きだが、アルティナにも仮面の魅力は全く理解できない。


「……まあ、ガルはあんまり人を嫌うことってないものね。」

「嫌いというより……現時点ではユハスさんの印象は良いです。ちょっとご主人様に似ている感じがして、懐かしいです。」

「あいつに似て……まあ、確かにあいつも敵をつくるのには事欠かない性格よね。」


 ガルディウスの崇拝する『ご主人様』もまた、かなりの性格難である。

 そんな人物を慕うガルディウスからすれば、少し関わった程度で悪印象にまで至る人間などそうそういないだろう。


「ガルってほんと、人間の好みが変わってるわよね。」

「そうですか?僕はただ……色々はっきり言ってくれる人が好きなんです。」

「あいつもユハスも、はっきり言い過ぎて敵をつくってるけどね。」

「アルティナさんの知り合いってことは、ユハスさんも家柄の良い方なんですか?」

「ええ、家柄はいいわよ。騎士にはならないでしょうけど。」

「そうなんですか?」


 家柄があり、無事進級できる優秀さを備えているのに騎士にならない者は珍しい。


「騎士と言うより職人として有名な家なの。ユハス自身魔法具を造ってるし、その分野じゃ既にそこそこ有名よ。負けず嫌いだからきちんと進級できるくらいには強いけど、ガル程じゃないにしても魔力値は低いし、騎士よりも職人向きだと思うわ。騎士になるには不可欠な最低限の協調性もないしね。」

 

 そんなアルティナの言葉に、ガルディウスは首を捻る。


「協調性がないといっても、さっきは同行者がいましたよね?」

「私もあの二人の関係性は知らないから詳しいことはわからないけど、ユハスはパートナーが必要な時は院内クエストで生徒を雇うから、雇用主と被雇用者だった可能性もあるわ。そうなれば協調性なんて関係ないでしょ?」


 たとえ協調性がない人間であろうとも、雇用主という立場にあれば、優先的な立場に立つ。

 雇われた方が雇用主にあわせるのだから、見合う報酬さえ用意すれば問題はない。


「じゃあ、僕もそういう風に雇って貰えるのかな?」

「いずれその可能性はあるにしても……現時点で目的は別にあるでしょうね。」


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