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「呪いも込みでとはどういう……」
問いかけようとしたクロードをぶった切って、ユハスは問いかける。
「そんなことはどうでもいいが、その気になれば解呪の魔法ぐらい使えるっていうのは本当か?」
「は、はい。」
小さな声で――しかし、しっかりと頷いたガルディウスにユハスは目を細める。
「おまえ魔法科一の落ちこぼれだろ。解呪の魔法はかなり難易度の高い魔法だぞ。」
「はぁ……そうなんですか?」
自己魔道までをも見様見真似で覚えたガルディウスに、一般的な魔術の難易度は理解できていない。
武術一筋のアルティナの方がまだ、二人の間にある認識の違いを察することができた。
「ユハス。この子は特殊だから、一般的な魔法の難易度を説いても無駄だと思うわ。」
「特殊?……そういえば噂によれば、学院歴代最低の魔力値と聞いたが、本当のところいくつあるんだ?」
「50ですけど。」
「「50!?」」
問いかけたユハスだけでなく、クロードもまた唖然とする。
一般人の中にもそれだけ低い魔力値など、そうそういるものではない。
「それでもガルは、『魔法科』として入学できた。その意味が貴方ならわかるでしょう?」
魔法科に入学するには、入試において高い魔力値か、一定レベル以上の魔法を見せる必要がある。
魔力値50であれば、前者はあり得ない。
そうなれば当然、ガルディウスは後者でしかない。
入試における一定レベル以上の魔法――中級以上の魔法をたったの50しかない魔力値で見せたのだ。
「……噂に聞くような『ただの落ちこぼれ』ではないってことか。」
精霊魔術などの内包魔力を用いる現代魔法では、すべての魔力値を注ぎ込んでも中級以上の魔法を使うことは不可能。それどころか、初級ですら使えるかわからないような魔力値である。
そのガルディウスが実技で入試をクリアしたということは、外遊魔力を使う魔術を高いレベルで使えるという証拠である。
(……面白い)
ユハスは、にやりと笑う。
その笑みに思わずビクリと震えたガルディウスに、ユハスは胸元から出したカードを差し出す。
「受け取れ。」
「こ、これは?」
「フレンドカードだ。それがあれば、俺の研究室に入れる。場所はアルティナにでも聞け。」
「研究室?何で僕に?」
「落ちこぼれと噂されるくらいだ。単位、足りないんだろ?俺のクエストを受けさせてやる。」
学院内でも優秀な生徒に分類されるユハスとクロードは、ガルディウスとは違い単位が足りずに院内クエストを受けているわけではない。
クロードは紋章術の実技一位の一年生と会うため。
ユハスはサザーラの作る魔道水を譲り受けるために、サザーラのクエストを受けている。
単位に不足のないユハスは、必要があれば自らが院内クエストの依頼者になることもあるのだ。




