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仮面の紋章使い  作者: 9BO
Chapter2:院内クエスト
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16

 

 リードリーフの採取を終え学院へと戻る途中――シモンの洞窟の中層で、彼らは遭遇した。


「あら。ユハス。久しぶりね。」

「アルティナ?なんであんたがここに……」


 アルティナとユハスには、学院に入る前からの面識があった。

 特別仲が良いわけではないが付き合いは程ほどに長く、お互いのことはよく知っている。


「サザーラ先生の院内クエストよ。」

「は?なんだってあんたがこのクエストを……」


 サザーラ・モンティーの院内クエストはただ一つ。リードリーフの採取のみである。

 紋章術の授業を受けていない武闘一筋のアルティナには、無縁ともいえるクエストである。


「この子の手伝いみたいなものよ。」


 そう言って後ろを示すアルティナに、ガルディウスの姿を見たユハスはぎょっとする。

 アルティナの陰に隠れるように存在する、不気味な仮面をつけた小柄な人物――


「何だその変人は!」

「変人って失礼ね。見た目はちょっと怪しいけど、ガルはあんたよりよっぽど人としてまともよ。」

「そんな不気味な仮面をつけてまともなんて言えるか!……って仮面?そうか、おまえが噂の落ちこぼれの新入生か。」


 ビシッと指を突き付けられて、ガルディウスは怯む。


「うっ……そ、そうですけど。」

「噂に違わず怪しいな!」


 面と向かってきっぱりと言い切られて、ガルディウスは消沈する。

 噂になっているのはガルディウス自身知っていたが、こうもはっきり目の前で言われると堪えるものがある。

 

 噂の上でガルディウスのことは知っていたユハスだが、実際顔をあわせるのはこれが初めてだ。


 新入生だけでも1084人いる学院において、授業が1コマしかない授業など存在しない。

 紋章術の授業は人気がなく受講希望者が少ないため、教師はサザーラ一人しかおらず授業も他の科目に比べて極端に少ないが、それでも週に3コマは同じ授業が行われる。

 同じ授業をとっていながら、ユハスやクロードがガルディウスと遭遇したことがなかったのは、たまたま別のコマの授業を受けていたためである。


「ちょっとユハス!ガルをいじめないで頂戴!」

「俺は事実を言っただけだ。大体、怪しいって言われたくないならその仮面を取ればいい話だろ。」

「仕方ないでしょ。ガルの仮面は取れないんだから!」

「は?」


 訝しげな視線を向けられ、ガルディウスはおずおずと説明する。


「ええと……この仮面、呪われてるので。」


 呪われた装備の中には、身に着けると外れなくなるというものがよくある。

 ガルディウスの仮面もまたそうなのだ。


「呪いの仮面!見た目を裏切らずに危ない仮面だな!」

「別に危なくはないです。」


 愛用の仮面を悪く言われて、気の弱いガルディウスもさすがにむっとして口を尖らせる。

 それを見かねてか、今まで後ろの方から黙って様子を見ていたクロードが口をはさむ。


「すまない。連れの口が悪くて。」

「あら、クロード君じゃない。あなたユハスの知り合いだったのね。」

「先輩こそ。」 


 武闘科の授業でも成績で上位をおさえているクロードと、武闘科2年のアルティナもまた面識があった。

 普段から会話をするような間柄でもないが、お互いにその実力を注目しあう先輩後輩の関係であり、会えばあいさつ程度は交わす仲だ。


「お詫びと言っては何だが……その仮面の呪い、俺が解こうか?」


 クロードのそんな提案に、ガルディウスは慌てて首を振る。


「だ、駄目です!」

「駄目?」


 呪われた仮面。

 それはガルディウスが手に入れた時からすでに呪われていた。

 紋章術に限定すればあらゆる魔法が使えるガルディウスにも、呪いを解こうと思えば解くことはできる。それでも、そのまま愛用しているのは――


「呪いも仮面の一部ですから。」


 ガルディウスのそんな言葉に怪訝な表情を浮かべるクロードに、アルティナは苦笑する。


「ありがとう、クロード君。でも仮面はそのままでいいのよ。その気になれば、ガルだって解呪の魔法ぐらい使えるんだから。」

「では何故呪われたままにして……」

「その仮面ね、ガルにとって大切な人からの贈り物なのよ。――呪いも込みで、ね。」


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