未定(冒頭部分のみ)
25時を過ぎていた。
コンビニからアパートまでの暗い夜道を歩く。
持っているビニール袋には、コンビニのサンドイッチが1個と牛乳パックが1個だけ入っている。
終電で家に帰りコンビニの食事を済ませて寝る。そんな毎日だった。
アパートの階段をあまり音をたてないように歩く。下の階にどんな人が住んでいるか知らなかったが、面倒事は避けたい。
ぼーっとしていた身体が驚きで縮んだ。4階の共同廊下まで来ると座り込んでいる人影があった。こんな時間に人に会うなんて思ってなかったので驚いた。
いや、こんな時間じゃなくてもアパートで人に会うことはなかった。
405号室。自分である404号室の隣だ。
自分の部屋まで来ると人影は頭を上げた。少年だった。小学生に入る前くらいだろうか。なぜ、こんな時間。こんな場所に。考えてみると405号室に誰が住んでいるのかなんて知らなかった。反対の403号室も知らないし、その更に奥も知らない。知らないのがこのアパートのルールかと思うくらいだ。
「やあ。」
しばらく、向き合った後、重い空気に耐えきらず声をかける。少年は何も答えなかった。父親か母親を待っているのだろうか。ただ、少年の視線は、ビニール袋の中のサンドイッチに向けられていた。
「食べるか?」
腹が減っていると予想した通りだったのか、少年は目を見開き頷く。
「そうか。食べて良いよ。じゃあな。」
少年は黙ってビニール袋を受け取った。
部屋に入ると、なぜ見ず知らずの少年に食事を渡したのか、自分でも不思議だった。少年のことを考えながら買い置きしてあったカップラーメンを探す。熱湯を注ぎ、タイマーをセットする。待っている間にスーツを脱ぎ、風呂のスイッチを押す。
食べたら、風呂に入って寝なくては。4時間半は寝たい。
睡眠時間の計算を終えカップラーメンを食べる頃には少年のことは忘れていた。