第28話 イカ怪人の悲劇
源次郎と日向は、夜の漁港へ向かう。漁港に常夜灯はあるが暗かった。二人は辺りを探すがイカ怪人の姿は見えない。しかし、イカ怪人の目は良く源次郎と日向の姿をとらえていた。
イカ怪人は海水を口からジェット噴射して空中へ飛び出す。源次郎と日向は水音に反応して振り向くがその時には上を取られていた。
源次郎が先に空中のイカ怪人に気づく。
「上じゃ。」「遅いげそ。」
イカ怪人はイカ墨を噴射して源次郎と日向の視界を奪う。そして10本の足でキックを繰り出す。源次郎と日向は防戦一方になる。
「弱いげそ、手も足も出ないげそ。」
源次郎は耐えてイカ怪人が油断して隙を見せる時を待っていた。そして大振りのキックをかわすと足を掴み投げ飛ばす。
「日向、逃げるぞ。」「は、はい。」
源次郎と日向はダッシュして逃げる。イカ怪人が体勢を取り戻した時には、二人の姿はない。
「逃がしたげそ。次はないげそ。」
源次郎と日向は宿に戻ると風呂に入りイカ墨を落とす。風呂から出た時には、宿に漁師たちが詰めかけていた。
生きのいい若集が源次郎たちに詰め寄る。
「あんたたち負けたんだって、どうするつもりだ。」「負けてはおらん。後退しただけじゃ。」
「それは逃げたんだろ。」「そうも言うな。」
「イカ怪人をどうするんだよ。」「もちろん倒す。明日、再戦する。」
「勝てるんだそうな。」「むろんじゃ。S級超人が二人いるのだぞ。疑うのか。」
源次郎は若集を目で威嚇する。
「わ、わかった。頼むよ。」「うまい海鮮のためじゃ。イカ怪人はわしらが料理してやろう。」
漁師たちは帰って行く。日向が源次郎に言う。
「師匠、負けたら。漁師たちに袋叩きにされますよ。」「まあ、そうじゃろうな。」
「どうやって戦うのですか。」「攻撃のパターンは分かっておる。対策するだけでよい。」
「イカ墨ですね。」「明日。朝一番でゴーグルを用意してくれ。」「分かりました。」
一夜明けると日向は漁協へ行って潜水用のゴーグルを借りてくる。日向が宿に戻ると源次郎は赤いスーツに黒いマント姿になっている。
「さあ、赤い雷光と御曹司の出撃じゃ。」「はい。」
二人は漁港へ到着するとイカ怪人を探し始める。漁港は漁師たちに囲まれている。負けたら、すぐに袋叩きにされるだろう。
イカ怪人は体の色を海と同化させてカモフラージュしている。源次郎と日向は見つけられない。二人が海を背にした瞬間、イカ怪人は口から海水をジェット噴射して空中に飛び出す。
イカ怪人は背後と上を取る。源次郎と日向が振り向いて上を向くとイカ墨を噴射する。イカ怪人は二人の視界を奪ったと思って、10本の足でキックを繰り出す。
源次郎と日向はキックの連撃を間一髪でかわしていく。日向がイカ怪人の足を掴んで地面に叩きつける。そこを源次郎がパンチを繰り出す。イカ怪人はイカ墨を吐き出して倒れる。
源次郎は右腕を突き上げて勝利を宣言する。漁師たちが歓声を上げる。そして、イカ怪人を取り囲む。手には出刃包丁を持っている。イカ怪人が言う。
「負けたげそ。このままで済むと思うなげそ。」「やってしまえー」
漁師たちはイカ怪人を出刃包丁で解体し始める。
「やめてげそ。痛いげそ。」
漁師たちはさらに鉄板を用意してたき火で加熱し始める。日向が口を押えて言う。
「まさか食べるつもりじゃ。」「たぶんそうじゃろう。わしらも食べるか。」「僕は嫌です。」
イカ怪人はこんがり焼かれて漁師たちの腹に収まる。この時から日向はイカが苦手になる。




