第2話 老人の朝は早い
老人の朝は早い。源次郎は午前4時から村のパトロールに出かける。日向はまだ眠いが師匠が出かけるのだから当然ついていく。
すると1軒の家から人影が出てくる。200メートルくらい先でまだ暗いため、男か女までわからない。源次郎が言う。
「あそこは山門さんの家じゃな。まだ新婚だから今頃はひゃっひゃっはーーー」「笑っていないで、捕まえないと。」
日向が源次郎に声をかけた時には、源次郎は人影を取り押さえていた。いつの間に200メートルはあるぞ。日向は驚きながら駆け出す。源次郎が日向に言う。
「遅いのう。これではヒーローは勤まらんぞ。」「師匠が早いのですよ。」
「こら、じじい離せ。人の上でしゃべっているんじゃねえ。」「見ない顔じゃのう。どれ。」
「いいいいででででで、やめて、やめてくれー」
男が痛がる。源次郎は日向に言う。
「わしが押さえているから、男の持ち物を調べてくれ。」「はい、師匠。」
男のポケットからマイナスドライバーが出てくる。さらに男のリュックサックの中には、財布がいくつも入っていて、他にお札が無造作に入れられていた。
「師匠、こいつドロボウですよ。」「そうじゃの。警察に突き出すか。」
「じじい、やめてくれ。金をやるから見逃してくれ。」「ほぉーーーー」
バキとものすごい音がする。男は痛みに痙攣している。日向が源次郎に聞く。
「師匠、何をしたんですか。」「うるさいから骨を折った。」
うるさいからって骨を折るか?師匠はバイオレンスじじいだ。源次郎は駐在を叩き起こして男を預ける。翌日、警察署長が源次郎を訪ねてくる。
「源次郎さん、ありがとうございます。昨日の男はこの辺一帯を荒らしまわっていたドロボウで、困っていたところでした。感謝状を受け取っていただけませんか。」
「わしゃ、村のパトロールをしていただけじゃ。感謝状はいらん。」
「そういわず。お願いします。これで5件目ですよ。今日こそは受け取っていただきます。」
「いらん。帰ってくれ。」「今回は紅白饅頭もお付けします。」
「そこまで言うのなら仕方ないのう。」「おお、受け取ってくれるのですね。ありがとうございます。」
師匠は甘いものが好き。日向がメモを取る。
この日のウォーキングは、日向が地獄を見る。被害にあった村人たちが盛大にお礼を渡してきたのだ。米俵20俵は新記録だった。




