第1話 源さん弟子をとる
「街中を怪獣が建物を破壊しながら進んでいるーーーー」「ヒーローは現れないのかーーーー」
「只今、フジミテレビが命がけで中継しています。」「アーっとカメラマンが危ない。怪獣の下敷きかーーーー」
テレビカメラを持ったカメラマンが怪獣の足の下敷きになる。しかし、彼は死んでいなかった。すぐさま起き上がるとテレビカメラを構える。
中継を映し出しているテレビには「LIVE」の文字がしっかり表示されている。
「カメラマン、生きていたーーーー、フジミのカメラマンは死んでいられない。そこに怪獣がいるからだーーーー」
怪獣の前方に赤いつなぎのスーツを着て、黒いマントの男が現れる。
「オーっとヒーローがあらわれたーーー、真紅のつなぎに黒マントまさしく「赤い雷光」西郷源次郎がやって来たーーーー」
「勝てるでしょうか。解説のヨモヤマさん。」「彼はS級超人です。彼が負けたら、あとがないでしょう。」
「これは負けられない戦いになって来た。赤い雷光はいかにして戦うかーーー、怪獣は20メートルはあるぞーーー」
源次郎は目にも止まらない速さで助走するとジャンプする。そして怪獣の心臓めがけて蹴りを放つ。源次郎の蹴りは怪獣の背中に突き抜けて、源次郎はビルの屋上に着地する。
怪獣の胸には源次郎が開けた穴が出来ている。怪獣は動きを止めて地面に倒れる。
「赤い雷光、やったー、キックの一撃で怪獣を撃破ーーー、強い、強い、さすがはS級超人。」
源次郎は右こぶしを突き上げて勝どきを上げる。
超高齢化が進んだ現代社会、悪と戦うヒーローも高齢化が進んでいた。ここに107歳の超人が現役で悪の怪人と戦い続けている。
この話は、超老超人源次郎と弟子日向の過酷な日常を描いたものである。
107歳の西郷源次郎は、ヒーロー歴87年の大ベテランである。若いころには「赤い雷光」と呼ばれたS級ヒーローだった。
そんな彼に小堺日向17歳がヒーローになろうと訪ねてくる。
「師匠、僕を弟子としてください。」「あきらめろ。ヒーローになる修業は厳しいぞ。」
「どんな厳しい修行も耐えてみせます。」「お前は耐えられるのか、107歳になっても修行を続けるのだぞ。」
「どのような修行をしているのですか。」「わしは毎日、腕立てを20回、腹筋を30回・・・」
「ちょっと待ってください。それのどこが厳しいのですか。」「これはまださわりじゃ。」
「続きを教えてください。」「ストレッチを5分、ウォーキングを1時間じゃどうじゃ。」
「とっても健康に良さそうですね。これのどこが修行ですか。」「107歳でこの運動は厳しくないのか。」
「はあ、ご高齢ですので無理はいけないかと思いますが、僕は17歳ですよ。」「お前に耐えられるのか。」
「余裕です。」「そこまで言うなら弟子にしてやろう。」
この後、日向はモーレツに後悔する。
「では、早速ウォーキングじゃ。」「はい、師匠。」
源次郎は日向を連れて村の中を歩く、思った以上に歩くペースが速い。だが、日向はこれでは準備運動にもならないなと思う。
するとあちらこちらから声がかかる。
「源さん、こないだはありがとう。大根持っていってよ。」「すまんのう。」
日向は大根10本を抱える。大根は通常の倍はある結構重い。
「源さん、イナゴ怪人を倒してくれてありがとう。米持って行ってくれよ。」「ありがとう、ご飯は大好きじゃ。」
日向はさらに米俵3俵を背負う。さらにスイカやトマトなどが追加される。日向の足が地面にめり込み始める。
なんじゃこれ、これのどこがウォーキングなんだーーーーーーーーーー
「どうじゃ、ウォーキングはいいだろう。」「師匠、少しは持ってくださいよ。」
「わしが持ったら修行にならんじゃろ。」「でも、こ、腰が・・・」「それ、歩け、歩け。」
ウォーキングが終わるころには、日向はゾンビのように疲れ果てていた。




