第三話 野球部に入部しました
温かい目線で読んで頂けると嬉しいてす。
アイディアがうかんでは、新しい小説を書いているので投稿頻度が遅い事をお詫びします。
学生ながら頑張ってます。読んでいただけると幸いです。
翌日。
アキラは野球場に立っていた。
親に頼んで、アメリカにいた頃の所属チームを記した入部届を提出し、硬式チームへの編入が決まった。一郎と昌平が口利きをしてくれたおかげで、手続きは驚くほどあっさり終わった。
(……空気、違うな)
アメリカにいた頃のチームは、良くも悪くもフランクだった。
日本の部活は、もっと張りつめている。挨拶一つで、それが分かる。
「おはようございます!」
声が揃う。
きっちりしすぎていて、少しだけ面白い。
(でも、悪くない)
アキラは小さく息を吸い、気合を入れ直した。
そこに現れた男を見て、空気が一段締まる。
デイブ・ムーキー。
野球部監督。
アキラは詳しい経歴をすべて知っているわけじゃない。だが、周囲の反応だけで察した。
――この人は、ただ者じゃない。
「知ってる者もいると思うが、八年の汐アキラが今日からチームに加わる」
視線が一斉に集まる。
「それから、もう一人。七年のナタリー・アリス・シンデレラ。マネージャーを務めてもらう」小さな拍手と、ざわめき。
「以上。アップだ」
それだけ言って、監督は歩き出した。
♢ ♢ ♢
練習は、思っていたよりずっと楽しかった。
三年生たちは夏の大会を控えているというのに、どこか余裕がある。
監督のノックは厳しいコースを突いてくるが、怒号よりも軽口が多い。
「今の取れねぇのか? 老眼か?」
「監督の打球がいやらしいんすよ!」
笑いが起きる。
(いいチームだ)
アキラはそう思いながら、自然と身体を動かしていた。
その頃――
ベンチの隅で、アリスはスコアブックを抱えていた。
正直、野球の細かいルールはまだよく分からない。
けれど、それでも「変だ」ということだけは、はっきり分かった。
外野に打球が飛ぶ。
声が上がる前に、もう終わっている。
「……え?」
今の、ヒットじゃなかったの?
そう思った瞬間には、アキラは何事もなかったようにボールを返していた。
「今の、普通アウトになるっけ?」
隣の三年生が呟く。
誰も答えない。
グラウンドの空気だけが、少しずつ変わっていった。
♢ ♢ ♢
練習後。
グラウンド整備を終えて集合すると、監督が短く言った。
「恒例、やるぞ」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、
「おっしゃー!!」
歓声が上がる。
「恒例って?」
アキラが昌平に聞くと、にやっと笑われた。
「編入生が入ったら、練習試合。逃げ場なしだね」
監督が近づいてくる。
「汐。ポジションは好きに選べ。レフトか、ピッチャー。どっちも見たい」
(……最初から投げさせる気だな)
アキラは一瞬考え、頷いた。
「じゃあ、最初はレフトで。最後、投げてもいいですか」
「いいだろ」
デイブはそれ以上何も言わなかった。
♢ ♢ ♢
試合は終盤まで接戦だった。
アキラは打って、走って、守った。
だが本人に派手な自覚はない。
(まだ、試されてるだけだ)
九回。
一点リード。
「汐」
名前を呼ばれ、アキラはマウンドへ向かう。
デイブは腕を組んだまま、その背中を見ていた。
(早いか? いや……)
ここで投げられないなら、それまでだ。
最初の打者。
ボールが四つ外れる。
ざわめき。
(力んでるな)
デイブは動かない。
次の打者。
セカンドゴロ。
ダブルプレー。
一気に二アウト。
「……やるじゃん」
アリスは、知らず息を呑んでいた。
最後のバッターは昌平。
初球、外。
二球目、空振り。
三球目、ファール。
四・五球目、外れてボール。
フルカウント。
(……まだ、ある)
アキラは一度だけ深く息を吐いた。
デイブが、ほんの一瞬だけ口角を上げる。
(何が来るか...)
アメリカでは、最後まで投げさせてもらえなかった球。
( これが、向こうでも使えてたら... )
落ちた。
縦に、鋭く。
昌平のバットが空を切る。
「ストライクスリー! ゲームセット!」
静まり返ったグラウンドで、デイブが小さく呟いた。
「……パワーカーブ、か」
アキラは、ようやく肩の力を抜いた。
完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!
モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。
これからも、よろしくお願いします!




