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お義母様、それは私が殺しましたが、何か問題でも?〜復讐完遂令嬢は次の人生を無双する〜  作者: 和三盆


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第54話:説明という名の刃

説明は、紙で来た。


派手な布告でも、演説でもない。

王宮の印が押された、整った文章。


――治安維持に関する補足説明。

――誤解を避けるため、以下を明示する。


「……出したか」


ローレンが、短く息を吐いた。


「ええ」


アリエルは、紙面を追う。

因果が、文字の行間に貼り付いている。


――禁止対象は、組織的な情報共有行為。

――日常会話は、これに含まれない。

――先日の拘束は、誤認に基づくものであり、当人は解放済み。


(……遅い)


説明は、遅すぎた。


市場では、人々が立ち止まり、紙を読む。

だが、ざわめきは起きない。


「……じゃあ、昨日のは?」


「誤認、だってさ」


「誤認で、捕まるのか」


声は低い。

怒りではない。


不信だ。


(ここが刃)


アリエルは、思う。


(説明は、正しさを示すためのもの。

でも――遅れると、傷になる)


昼過ぎ、治安詰所の前に、男が現れた。

例の父親だ。


歩いている。

鎖はない。


だが、目が合わない。


周囲が、息を詰める。


「……帰ってきた」


誰かが言う。


男は、頷いた。


「帰った」


それだけ。


「何を、話したんだ?」


沈黙。


男は、しばらく考え――首を振った。


「……覚えてない」


嘘ではない。

因果が、そう告げている。


(切られたのは、記憶じゃない)


アリエルは、理解する。


(語る意欲だ)


説明文が、貼り替えられる。

兵が、丁寧に、低姿勢で。


だが、人は近づかない。


ローレンが、囁く。


「説明したのに、戻らないな」


「ええ」


アリエルは、紙を見る。


「説明は、安心の代わりにならない」


その夜。


一枚の紙が、また置かれた。


――説明は、分かりました。

――では、昨日の“誤認”は、誰が判断しましたか。


短い。

攻撃的ではない。


ただ、一点を突く。


翌朝、二枚目。


――同じ誤認が起きない保証は、どこにありますか。


三枚目。


――誤認された場合、どこに行けば説明を受けられますか。


質問は、増える。

声は、出ない。


(……刃だ)


ローレンが、低く言う。


「説明文が、逆に刺さってる」


「ええ」


アリエルは、目を閉じる。


「説明は、

“分かったつもり”を与えるものです」


目を開く。


「でも、信じる理由は、別」


王宮の因果が、揺れる。

今までより、細かく。


(内部で、割れてる)


誰かは、さらに説明を出したがる。

誰かは、黙らせたい。


その日の夕方。


詰所の前に、札が出た。


――質問受付時間:毎日、申刻。


短い。

だが、具体的。


人が、一人、立ち止まる。

二人目が、並ぶ。


列は、短い。

だが、消えない。


(……戻り始めた)


アリエルは、少しだけ息を吐く。


(派手な勝利じゃない)


でも。


説明という名の刃は、

王宮自身の手を、確かに切った。


次に必要なのは――

言葉ではない。


応答だ。


アリエルは、外套を整える。


(ここからは、

答え続けられるかどうか)


それが、試される。

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