ぼくたち
ぼくたちはみんなとってもにてる!
違う色の子もいるけど、みんななかよし!
ぼくたちはずっとね、ちいさな出口いっぱいのからだを出す時を待って、出ていいと言われたらにょきにょき伸びて、伸びてからは振り落とされる時まで、顔を見合わせておしゃべりしてた。
でもぼくは知らなかったんだ。
「ねえ、なあに?すごい大きな音がするしすごく揺れてるね」
先に生えていた隣の子に尋ねると、その子はため息をついた。
「たまにあるの。しばらく続くよ」
見えたのは目に涙をいっぱいためたちいさな女の子だった。
おおきなおとがしてびっくりする。
するとちいさな女の子は倒れていた。
「ねえ、どうしてあの子は泣いているの?」
「あの子は怒られてるの、ぼくたちがいる、こいつに」
こいつ。
そのすこし乱暴ないいかたに少し驚いたけれど、ぼくはまた尋ねた。
「でも、どうして怒鳴ったり、殴ったり、蹴ったりするの?
そこまでして怒られることをこの子がしたの?」
にんげんのことばは全部は分からないけれど。
「してないよ。こいつがへんなの。あのこはかわいそうなこ。
親を選べなかったかわいそうなこ」
はらがたつって、こういうことをいうんだ。
ぼくたちは髪の毛とよばれていた。
こいつの髪の毛として生えて、抜けるまでに、「いかり」を知ってしまったぼくは耐えられなくなった。
あのこが、かわいそうだ。
でも、ただ生えて抜けるだけのぼくたちにできることなんて。
そう思っていたけれど、ヒントが降ってきた。
こいつが言ったの。
「あーハゲってかわいそうだわー。俺はハゲない遺伝子でよかった」
その言葉を、先輩の髪の毛に翻訳してもらって、ぼくはおもいついた。
「ねえ!にげようよ!こいつから!」
「なにいってるの?」
「ぼくたちこいつの肌を守るために生えているけれど、ぼくもうこいつを守りたくないよ!
それに、ぼくたちがいなくなったらこいつは恥ずかしい思いをするんだよね?
それに、もうこいつの髪の毛としていたくない」
何を言い出したんだ。
隣の子はそんな顔をしていた。
でも、先輩たちが、賛成して、その声は大きくなっていた。
そうして全員がちからをあわせて、こいつのあたまからぬけだしたんだ!
自分の意思で、髪の毛全員がいなくなったなんて、こいつが世界初かもしれないね!
そうしてぼくたちの冒険は始まったんだ。