第三話 森へ行こう、免疫を求めて
「……で、ほんとに行くの? 森に?」
週末の朝。
祥子のスマホには、SNSの怪しげな投稿が表示されていた。
『花粉症? 森で思い切り花粉を浴びろ! 免疫が付いて春を制覇できる!』
「これよ! この方法で克服したって人がバズってたんだよ!」
「どう見ても嘘じゃん……! やめときなよ、絶対ヤバいって!」
紗季が必死に止めるが、祥子の決意は揺るがない。
「もう青汁もマスクもダメだったし……残るは現地特攻作戦しかないんだよ……!」
「現地特攻って、戦争じゃないんだから……」
結局、紗季を無理やり巻き込み、祥子は電車を乗り継いで市外の山奥へと向かった。
最寄り駅で降り立つと、目の前には見渡す限りの杉林が広がっている。
「おおお……見ろ、紗季! 花粉の楽園だ……!!」
「やめて……楽園じゃなくて地獄だから……」
森の入口には「花粉症荒療治体験コース」なる手書き看板が立っていた。
どうやら最近SNSで有名になり、ちょっとしたお金儲けビジネスになっているらしい。
「お姉さん方、花粉浴びに来たの? 500円ね!」
森の入口にいたおじいさんが、ニコニコ現金払いを請求してくる。
「安い! これは期待できる……! 紗季、行くよ!」
「……どうかしてる……」
いざ、杉林の中へ。
杉の木が林立し、微かな風が吹くたびに、空気中を花粉の黄色い粉が舞う。
目が、鼻が、一瞬で悲鳴を上げる。
「ふ、ふぁっ……はっ……はくしょんっ!!」
「ちょ、祥子!? 鼻血出てない!? 大丈夫!?」
「だ……だいじょぶ……。花粉を……体に叩き込んで……免疫……強化……!」
そう言って祥子は、なんと地面に落ちた杉の枝を拾い、自らの肩に花粉をパタパタと叩きつけ始めた。
「ふははははっ!! 花粉よ来い! 私を強くしろおおおおお!!」
「完全に頭おかしい人だって……! 誰か止めてええぇぇぇ!!」
10分後。
祥子は花粉まみれで倒れていた。
目は真っ赤、鼻は完全に詰まり、声も出ない。
「……さ……き……か……えろ……」
「……もう帰ろ……ほんと帰ろ……」
帰りの電車の中。
花粉まみれの祥子と、看病する紗季。
「結局……荒療治とか嘘だった……ぐすん……」
「だから言ったじゃん……」
「……でも、これで分かった……。
私に必要なのは……正しい治療と、無理しない心……」
「うん、普通の人はそうなる……」
しかし――
祥子の心の奥にはまだ『最終奥義』が眠っていた。
『花粉を克服するには異国の砂漠でリセット療法を――!?』
この春、祥子のくしゃみが止まる日は……来るのか……!?




