第二話 青汁 VS 花粉、そして涙
翌朝。
「――あっずみさーん! なんか緑の液体持ってきてるんだけど……」
教室に入った祥子の手には、見るからに怪しいプラスチックボトルがあった。
中身はドロリとした深緑色の液体。
どこからどう見ても、青汁だ。
「これが……私の切り札なの! SNSで“これ飲んだら花粉症治った!”って書いてあったんだよ!」
「それ、絶対ステマだって……!」
隣の席の紗季はげんなりしている。
しかし祥子はめげない。
「どうせ薬飲んでも眠くなるし、目薬も効かないし……
だったら、信じられるのは青汁しかないじゃない!!」
そう言い放つと、クラスメイトがドン引きする中、祥子は豪快に青汁を一気飲みした。
「ゴク……ゴク……ゴホッ!! にがっ! でも負けない……!
……ん、……鼻水が……止まって……ない!!」
一瞬の静寂。
「止まってないんかい!」
紗季の鋭いツッコミが教室中に響いた。
昼休み。
青汁作戦が失敗に終わった祥子は、次なるプランを決行していた。
それは――ネットで話題の『花粉ブロックマスク』だ。
特殊なコーティングが花粉を弾き、顔に花粉が付着しないという夢のマスク。
「……どう? これ、最新モデルなんだよ?
鼻の周りがふわふわクッションになってて、花粉が入ってこないらしい!」
「……いや、見た目めっちゃロボットみたいなんだけど……」
クラスメイト全員の視線が祥子の顔に集中する。
というのも、そのマスクは銀色のコーティングがされており、遠目には鉄仮面のようなのだ。
「花粉の前では恥など捨てるのだ……っ!
……くしゅんっ!」
しかし鉄仮面マスクをもってしても、祥子の鼻水は止まらない。
くしゃみも止まらない。
花粉は思ったよりも強かった。
放課後。
部活の帰り道、祥子は桐山紗季と並んで歩いていた。
「……私、どんだけ頑張っても花粉症に勝てないのかな……」
夕暮れの空を見上げて、祥子は小さく呟く。
「大丈夫だよ。ほら、花粉症の薬も毎年進化してるし……。
克服っていうか、うまく付き合えばいいじゃん?」
「付き合いたくない……。別れたい……。花粉と……」
涙なのか鼻水なのか分からない液体を拭いながら、祥子は固く誓った。
「でも……次はもっとすごい作戦を考えるから!
花粉なんかに負けてたまるかーっ!!」




