1話:幼馴染が告白してるのに、BL妄想してごめん
__やばい
今、非常にやばい状況な気がする。
いつものベッドの上。
床に落ちた、私の宝物のBL同人誌。
ギシリとベッドが音を立てる。
「俺、朱音のことが好きだ」
私、鈴谷朱音は、弟のようにかわいがっていた幼馴染の野井静海に、押し倒されています。
うわ〜、受けってこういう視点なんだろうな…。
ってちょっと待った!
違う違う。
朱音って言った?
私じゃん。
…やばい。全然ドキドキしないし。こういうのって少女マンガとかで、心臓がうるさくなるものなんだよね。
でも今、私の頭を大きく占めている感情は…
解釈違い!!!!!!!
「あっ…」
「…?」
「あんたには蓮くんがいるでしょ〜〜」
「…おっ前な〜〜!!この期に及んで、BL妄想やめろ!!」
ごめんね、ママ。
ママは意外と平気よ〜って言ってたけど、さすがにこのことを話したら、あんたは結婚できないわってなると思う。
BL脳すぎて。やっぱり、私は一生BLと共に生きていくわ…。
ここだって、女の子の可愛らしいピンクなお部屋ではなく、シンプルで大きめ本棚には大量の商業BLのコミックと小説が並び、机の上の開かれっぱなしのノートパソコンには、私の書きかけのBL小説が表示されている。
こんな部屋に呼べる彼氏はいない。
「蓮はただの親友だって言ってんだろ!」
「朝だって毎日一緒に学校行ってるじゃん」
「それはサッカー部の朝練。てか、話そらすな」
じっと真剣に見つめられると、返事に困る。
もちろん、静海のことは、小さいときからお隣さんで、湊にい(静海のお兄ちゃん)と静海と3人でいっぱい遊んだし、湊にいが一人暮らしをし始めてからも、よくうちで夕飯食べたりしたし。
大事な幼馴染。
…でも
「ごめん、幼馴染以上には見たことないかも…」
「__そっか」
静海はそう呟くと、ごめんと言いながら私の上から退いて、ベッドに座った。えっうわ、罪悪感がすごい。
私も起き上がって必死にフォローに回ることにした。
「あっえっと、でも、静海のことは普通に好きだし!」
「慰めんなよ」
え、鼻ズピズピしてるじゃん。
「えっ、何、泣いてんの」
俯いたままの静海の前髪を少し避ける。やっぱりサラサラ黒髪、むかつく。私なんて、癖っ毛だから仕方なく伸ばして、寝癖やばいときは結べるようにしてるのに。
「泣いてねーよ、バカ」
いやいや、泣いてるじゃん
って嘘でしょ。まってまって。
あの可愛い連くんに対して、静海は絶対攻めだと思ってた。(勝手に失礼)
でも目が赤くなってて、眉ハの字で、真っ赤で——
「こんなん絶対受け顔じゃん」(本当に失礼)
「なに…」
ムッとしながらこっちを見るのも…。
「あっ違う違う。ごほん、可愛いなって…」
「馬鹿にしてんの?」
突然、低めの声で睨まれて、心臓が跳ねた。
「やっぱ無理やりでもやっとけばよかったかな」
「クズ発言やめい!」
思わずツッコミながら後退りして、静海から少し距離を取る。
さっきの押し倒れたときに比べれば全然だけど、まだ私たちはベッドの上にいるわけで…。
この状況で、文系のスポーツをする機会が減った大学生の私が、ピチピチのサッカー部所属の高校生に勝てるわけない。
にしても怒ってても、目が潤んでて本当に可愛いな。
あー、私が攻めならいただいてるわ…。
…あっそうだ!このピンチを抜け出す方法がある!
「待って、分かった!」
「なに」
「私が攻めでいいなら付き合ってやらなくもない!」
「は…?」
…予想通り!静海はよく『BLにすんな』って言ってるし、これでさすがに引く。
「…わかった。なんだっけ。朱音がよく言ってるBLのやつだよな。俺、何すればいいの」
「えええ?」
待て待て、受け入れるな。
「朱音しか分かんねーじゃん、その受け?とか攻めとか」
「いやいや....もう少し考えたほうがいいよ。意味分かってないでしょ」
「グダグダうるせーな…。朱音がそれで付き合うっていうなら、俺が合わせればいいだろ」
「男前受け?!(違う)」
「なにそれ」
はあっ大きなため息を吐く静海。
さすがに無理って思われたかな。
突然、ふわっと抱きしめられた。
「はあ…もうやだ」
「ええ?」
「こんな言われても嫌いになれないなんて最悪」
やだ、この子、私のこと好きすぎじゃない?
静海の肩を掴んで、バッと離す。
「と、とりあえず、まずはデートとかしない?!」
危ない。私が押し倒しそうになった。
「……え、あ、うん」
あーあ、戸惑った顔もめっちゃ可愛く見える。
とりあえず、後で、攻めが最高すぎた作品を探して読もう。
せっかくデートするなら、完璧なエスコートをしてあげたい。