表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
第六章 対決

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/65

58

「メイデス家の害虫を処罰しないとな」


 ゼロニスの低い声が響く。


「すべて事情は聞いている。ロンバルディ家のメイドを買収し、ラリエットをおびき寄せたのだろう? 俺は一度裏切られたら、絶対に許さない。その対価は決して小さくはないぞ」


 これぞ、暴君の発言。小説で読んだ暴君の行動が、ここで再現されるのか。

 み、見たくない‼


「まずはその買収されたメイドとやらを探し出し、血祭りにせよ」

「はっ」

「連帯責任でそのメイドの部署全員をクビにし、総入れ替えしろ」

「わかりました‼」


 お、恐ろしい命令しているんじゃないわよ!! それにフォルクも即答しているんじゃないってば!! 暴君はお控えなすって。


「さて、お前はどう処罰しようか」


 フレデリックが肩をびくりと揺らす。


「メイデス家――断絶するか」


 クッと笑いながら口の端に浮かべるのは残虐的な笑みだ。

 ゼロニスが言うと冗談には聞こえない。


「も、もとはといえば、お前が、お前が……」


 フレデリックが必死に口を動かす。ゼロニスは腕を組み、顔色一つ変えない。


「お前が僕からラリエットを奪おうとしたのが悪いんじゃないか!!」


 フレデリックが叫んだ。


「ラリエットを昔から知っているのは僕しかいない。僕たちは障害にも負けず、愛を育んできたんだ」


 は? なにを言っている。勘違いもいいところだ。


 その時、ゼロニスのこめかみが初めてピクリと動いた。

 ゆっくりと私に視線を向ける。顔は笑みを浮かべながらも、その目は決して笑っていない。視線で問い詰められている気分だ。


「そ、そんなわけないでしょ!!」


 やばい、変に誤解されては、私も命の危険がある。


「私はずっとあなたが嫌いだった。ねちっこい視線も二人になりたがる時も、気の休まるときなんてなかった」


 私は息をスッと吸い、一歩前に出る。


「あなたのことは義兄とも思っていない。二度と私の人生で関りたくない」


 はっきり言ってやるとスッキリとした。


 ああ、長年の恨みを口にすることが、こんなに気持ちいいだなんて。


「こ、この……。どこまで僕をバカにすれば気が済むんだ」


 プルプルと肩を揺らし始めたフレデリックの目が血走り始めた。そして胸元に手を入れると、光るナイフを取り出した。鋭利な刃物をちらつかせ、私目がけて飛びかかってきた。


 えっ……‼


 避けないといけないと頭ではわかってはいるけど、体が動かない。動きはスローモーションのように感じられる。


 その時、体に強い衝撃を受けた。


 ゼロニスが私を突き飛ばし、フレデリックの前に出た。フレデリックのナイフがゼロニスの胸を突き刺す。


 刺された箇所から真っ赤な血が噴き出した。


 さ、刺された⁉


 ビアンカがフレデリックを後ろから羽交い絞めにした。最初は苦しそうに呻いたフレデリックだが、抵抗むなしく五秒で意識を失った。


「ゼ、ゼロニス……」


 う、嘘でしょう!? 誰か嘘だって言って!!


 床に倒れ込んだゼロニスの胸からは赤い血が流れ、じんわりと服を鮮血で染める。


「い、嫌、嫌……‼」


 涙をあふれさせながら、首を横にふる。


 こんな結末、あってたまるか。


 ヒーローが亡くなるなんて、こんなバッドエンド、私は認めたくない。これ以上の最悪な結末はないわ‼

 涙がポタポタと流れ、ゼロニスの頬に落ちた。


「お願いだから、目を開けてよ」


 まだ温かい体を揺さぶる。


「私、まだあなたに気持ちを伝えていない。愛しているのに……‼」


 もう遅すぎるの? 私は気持ちを伝えることもできないまま、このまま会えなくなってしまうの?


 そんなの認めたくない。ゼロニスに突っ伏して涙する。


 ネックレスにしていた指輪が胸元からポロリと落ちる。


 号泣していると、ネックレスが引っ張られる感触がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ