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【書籍化】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
第六章 対決

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「どうぞ」


 涙がこぼれないように上を向いていると、スッと紅茶のカップが出された。


「心を落ち着かせるカモミールティーにしました」

「あ、ありがとう」


 礼を言うとビアンカはニコッと微笑んだ。


「おい、俺のは!?」


 フレデリックがわめくとビアンカはスンッと無表情になる。


「私はラリエット様専属のメイドですので」


 つまり、お前の分の紅茶はねえよ、ということだ。


「く、クソッ……」


 ビアンカに視線を向けられたフレデリックはなにも言えずに、悪態をついた。

 その様子に胸が少しだけスカッとした。

 

 夜になり、湯を浴びるように勧められるが、フレデリックが同じ空間にいるのに、そんなことできるわけがない。

 だがビアンカは胸を張る。


「大丈夫でございます。私がついております」


 その言葉通り、フレデリックから私を守ってくれている。その行動が頼もしく思えた。

 猫足のバスタブにつかり、ビアンカがお湯をかけ流してくれる。


「ねえ、セリーヌはゼロニスのことが好きで、私のことが邪魔だったのかな……」


 バスタブの中で膝をかかえ、うつむいた。

 気持ちが緩んでくるとポロッと弱気な発言が出てしまう。ビアンカもこんなことを聞かされて、困るだろうに。


「私に事情は分かりませんが――」


 ビアンカは湯が入ったバケツを片手でヒョイヒョイと持ち上げる。筋肉のついた腕がたくましい。


「セリーヌお嬢さまは私に、とても大事な友人だから側を離れず、守ってあげて欲しいと依頼されました」

「ビアンカ」

「だから私はラリエット様を守ります」


 力強い彼女の言葉に安堵する。

 本当かな、セリーヌはまだ私のことを友人だと思ってくれているのかしら。

 膝をギュッと抱え込んだ。


 湯を浴びたあと、ビアンカが寝る準備を整えてくれた。本当に手際がいい。さすがセリーヌが以前、褒めていただけある。


「おい、なんでお前がここで寝るんだよ‼」


 フレデリックの怒声が寝室に響き渡る。


 ベッドが二つ並べられていたが、ビアンカは二つのベッドのちょうど真ん中に体を横たえた。


「私はラリエット様のお側を離れないよう、指示されています」


 ビアンカが低い声を出すとフレデリックはひるむ。

 相当、びびっているみたいだ。


「メイドのくせに主人と同じベッドで眠るなんて、聞いたことないぞ!!」

「ラリエット様が逃げ出さないよう、見張るように言われております」


 ビアンカはため息をつくと体を起こした。


「仕方がないですね」


 そう言うとおもむろにベッドを移動し始めた。


「な、なにをしているんだ」

「ラリエット様が逃げ出すことのないよう、移動させます。鍵のかかる部屋で寝ていただきます」


 ビアンカは隣の部屋にベッドを移動させた。


「おい、勝手なことをするな‼」


 だがフレデリックと同じ空間で眠るなんて、絶対嫌だったので、私はビアンカが運んでいたベッドに手をかけた。


「手伝うわ」

「おい‼」

「言い忘れていたけど、私、寝相が悪いしいびきもかくから……恥ずかしいの。フレデリックに、そんな姿を見られたくないわ」


 はにかんだ笑みを浮かべ、体をモジモジさせた。


「そ、そうか。それなら仕方ないな」


 フレデリックは納得したようだ、単純な奴め。


 ビアンカと共に隣室へ移動する。


 ビアンカはベッドには寝転がらず、壁を背にして立った。


「どうしたの? 眠らないの?」

「私のことは気になさらず、眠ってください」


 変なの、私を監視しているはずのビアンカなのに、守られている気がするなんて。


「ありがとう、ビアンカ」


 私が小さくお礼を口にするとビアンカは薄い笑みを浮かべた。窓からは月明かりが差し込む。


 ゼロニスは今頃、視察先で宿泊だろう。


 私が軟禁状態なことを知らないはずだ。明日、出航する船に乗せられると聞いた。

 だが、私は大人しく乗せられないんだから。どうにかして隙を見て逃げ出してやる。


 フレデリックと一緒だなんてバッドエンドもいいところだわ。


 ゼロニスはこの状況を知ったら、迎えに来てくれるかしら? バカな真似をした私に呆れる?


 それともセリーヌの方が自分には相応しい相手だと気づくのかしら。


 考えていると涙がにじむ。だが、グッとこらえ、瞼を閉じた。

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ビアンカ最強
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