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【書籍化】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
第三章 クビ宣告

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 婚約者候補たちが集い、定期的に開催される舞踏会。

 これにはラリエット・メイデスとして参加しなければならない。ラリーとしての私はあらかじめ休みを申請し、朝から大忙しだ。


 なんせ着替えも化粧も一人でこなさないといけないから。

 手伝いのメイドの一人もいない私は苦労するわ。

 クローゼットを開けると、派手なドレスばかりがずらりと並んでいる。


 お次に化粧。

 これはもう、白く塗ったくり、チークだってアイメイクだってゴイゴイ入れる。そう、これでもかというほど化粧を濃くするのだ。

 ラリーとラリエットが同一人物だと見破る人はいないと思うが、万が一のためだ。


 髪の毛は綺麗に巻いてヘッドドレスで飾る。

 鏡の中には派手なラリエット・メイデスが出来上がった。


「よし、これでオッケーね」


 いつも以上に化粧を念入りにしたのは、ゼロニスに気づかれては困るから。いつもラリーとして接しているが、今日は久々ラリエット・メイデスとして彼の前に登場する。この化粧ではばれることはないと思うが、勘の良いゼロニスのことだから、細心の注意を払わなければいけない。


 でもまあ、ゼロニスはラリエット・メイデスには興味もないから大丈夫でしょう!!


 それにこの舞踏会でゼロニスはセリーヌと踊ったはずよ。ラリエットは嫉妬して二人の邪魔をして、ゼロニスの不興を買ったという、恐ろしいストーリーだが、今回は大人しく二人を見守っているわ。


 だからなにごともなく舞踏会が終わるはずよ。せいぜい壁の花になって、ゼロニスとセリーヌのダンスを見守りましょうかね。


 私は張り切って会場へと向かった。


 華やかな会場に到着すると周囲を見回す。

 着飾った女性が集まり、談笑している。だが以前、ここに集まった最初の時より、人数があきらかに少なくなっていることに気づく。


 それだけ婚約者になるのをあきらめて帰宅した女性が増えた、ってことよね。はたまたゼロニスの不興を買い、帰れと命令されたかのどちらか。

 婚約者が決まるまでの時間が、長い方が私にとってはいい。それだけラリーとなって賃金を稼ぐことができるから。


「ラリエット様」


 考えごとをしていると背後から声がかかる。

 そこにいたのはセリーヌだった。ネックラインが高く首元をすっきりと見せるハイネックのドレスを着用している。レースにチュールを全体的に重ねたドレスで、華奢で上品な女性を演出していた。


「あら、ごきげんよう。素敵なドレスね、よく似合っているわ」


 セリーヌは照れたように頬を染めた。


「ありがとうございます。ラリエット様こそ、大人っぽい装いでとても素敵ですわ」


 目を輝かせて私を褒めてくれるセリーヌは本当に性格が良い。

 そう、あの根性が良くないゼロニスにもったいないわ、と思ってしまうほど。


 そうこうしているうちに、会場の上にある扉が開いた。

 ゼロニスの側近、フォルクが最初に登場し、続いてゼロニスが登場した。

 ゼロニスは正装に身を包み、髪を後ろになでつけている。


「わあ……素敵ですね」


 セリーヌが感心した声を出す。確かに彼は金髪碧眼で背も高く、美形だが。

 自分に盾突くものは容赦なく潰す、冷酷非道な部分もある。


 小説を読んでいた私だからこそ知っているが、セリーヌから見たら素敵な王子様に見えるのだろう。

 目を輝かせてゼロニスを見上げるセリーヌだが、私は一歩下がって大人しくしていた。


 ゼロニスは上から私たち婚約者候補を一堂に集め、ぐるりと見回している。


 まるで見定められているみたいで、嫌な感じ。


 ともあれ、あなたのセリーヌはここにいますよ。早く見つけてダンスに誘ってあげてくださいな。


 セリーヌの側にいるとゼロニスに会う機会が多くなると考えたため、私はソソソッと会場の隅に移動した。

 フォルクがズイッと一歩前に出ると、声を張り上げた。


「これより舞踏会を開催いたします。各自楽しんで欲しいと、ゼロニス様より承っております」


 それぐらい自分で言えよ、側近に言わせないでさ。


 だがフォルクの声を皮切りに、音楽が流れ始めた。


 ゼロニスは大して興味もなさそうに、椅子にふんぞり返って座っている。


「ラリエット様、ここにいらしたのですね」

「ああ、セリーヌ」


 わざと距離を取ったはずのセリーヌが近づいてきた。


「私、緊張してしまって」


 会場はゼロニスが登場したことで、一気に色めきたっている。肝心のゼロニスは特に興味もなさそうに頬杖をついているが。


「そうね、もう少し近くにいってみたら?」


 その方が早くセリーヌを見つけることだろう。だがセリーヌは顔をブンブンと横に振る。


「無理です!」


 その様子が微笑ましい。そんなこと言ってても、彼と相思相愛になるのを知っているんだからね。


「ふふ、大丈夫よ」


 ゼロニスはあなたには優しいから。それこそ無条件に、あなたにだけ。


 フッと微笑んだあと、ふと視線を感じて顔を上げる。


 頬杖をつき、こちらを射抜くように真っすぐに見ているゼロニスと、目が合った。

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