表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
第二章 暴君のお世話係

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/65

24

 南通りに戻り、ひととおり街を見て歩いた。

 直接物件などは探すことはできなかったが、ちょこちょこ建物の中に空きがあるのを見つけた。


 本気になれば、住む場所を見つけることができるかもしれない。

 それにこんな大きな街だもの。仕事だってなにかしらあるはずだわ。住み込みだったら一番いいかも。

 街の雰囲気などもあわせて、この目で確認できただけでも、大きな収穫だ。


 すっかり遅くなってしまった。そろそろ日が暮れそうな時間だ。

 停留場に止めてある船の汽笛が大きな音を出した。


「そろそろ帰るか」


 ゼロニスに笑顔でうなずいた。


「はい、今日は一日満足しました。美味しいものも食べれましたし」


 ゼロニスは海を眺めながら口にする。

「この街の様子を見たかったんだ」

「え」

「この街の発展に、毎年少なくはない額を寄付している」


 それは初めて知ったことだった。


「だが支援が足りているか、人々が暮らしで困っていないかなど、自分の目で見ないとわからないところもあるからな」


 ゼロニスは淡々と口にする。


「だから自分で確認する必要があったんだ」


 そうか。書類上での報告では、彼は信用しないということだ。


 確かに人からの報告では、わからぬ部分もあるだろう。信用していないわけじゃないけれど、人は悪い報告を隠したがるものだから。


 ゼロニスはちゃんと考えているんだな、ふと感じた。


 小説では暴君の描写が多かったけれど、それはセリーヌが関係するようになってから、徐々になりをひそめていった。愛ゆえに改心していったのだろう。


 それに言葉の端々は乱暴だと感じる時があるが、私にはなにもしてこない。

 街の様子を自分の目で確かめたいとか、ちゃんと考えているんだと感心すらした。

 彼はきっとセリーヌと出会い、成長していくだろう。そして彼が出資するこの街で、私は第二の人生の幕を開けるんだ。


 だから早くセリーヌに出会い、本当の愛に目覚めて欲しい。


「なに、ニヤニヤしているんだ」


 ゼロニスから言われハッとする。

 しまった、考えが顔に出ていたかもしれない。


「変な奴だな」


 ゼロニスは私を見て、愉快そうに口端を上げた。


「いえ……」


 恥ずかしくなり視線を逸らす。だが、今日は思いもよらず楽しかった。最初一緒に街に行くなんて、どんな罰ゲームかと思ったが、実際は――


「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」


 海から吹く風が冷たくなってきた。私は風になびく髪を抑えながら感謝の言葉を口にする。


 夕日に照らされたゼロニスの顔はいつもより赤く見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ