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【書籍化】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
第二章 暴君のお世話係

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「あと、その言葉遣いもやめろ」


 ゼロニスはビシッと私を指さした。


「今日はお忍びだ。言葉遣いで周囲に感づかれるといけない」

「そうは申しましても……」


 ゼロニスに対して敬語を使わないなど、恐れ多くてできるかどうか。


「俺が許す」


 ビシッと指を突き付けられた。ここまで言われては、従わなくては。


「わかりました、ゼロニス様」

「あとその様もやめるんだ。誰が聞いているか、わからない」


 それはそうだけど、呼び捨ては心臓に悪い。

 さすがにここは躊躇する。


「呼びにくいというのなら、ゼスでいい」


 それは彼の幼少期の呼び名。セリーヌにだけそう呼ぶことを許していたはずよ。


 私がそう呼んでもいいものか。

 ゼロニスは私をジッと見つめる。視線から圧を感じ、逆らうことができない。


 スッと息を吸い込んだ。


「わかりました。街についたら敬語も様もつけません」


 あなたが言い出したんだからね。あとから不敬罪とか言い出すのは勘弁してくれよな。


 ゼロニスは口の端を上げ、満足そうにうなずいた。


 トバルの街の停留所に馬車を止める。

 下りる時もゼロニスは手を差し伸べてくれた。


 女性扱いをしてくれる彼に胸が高鳴ってしまう。一歩街に降り立ち、顔を上げる。


「うわぁ……」


 思わず声に出てしまう。

 港町でもあるトバルは人々が行き交い、発展している。

 大きな船が港に横づけされ、荷物を下ろしている船員たち。

 ずらりと並んだ店は異国の珍しい物を取り扱っていたりして、繁盛している。活気あふれる街にワクワクする。

 しばらく呆けた顔で足を止め、街を見ていた。


「行くぞ」


 スッとゼロニスが手を差し出す。

 えっ、ここでもエスコートが必要なの? 私は戸惑う。


「人ごみではぐれると悪いだろうから手を貸せ」

「あ、はい」


 おずおずと手を出すとグッと握られた。ゼロニスは前を向き、歩き出した。

 

 ゼロニスはどこを目指しているのだろう。


 とりあえずついていくが、街全体が珍しくてキョロキョロとしてしまう。

 やがてゼロニスは足を止める。


「さて」


 腕を組み、首を傾げた。


「で、お前の行きたい場所は?」


 ゼロニスが私を見つめたので、瞬きを繰り返す。


「ないのか、希望するところが」


 二度聞かれ、ようやく気付いた。ゼロニスは私が行きたい場所に連れて行ってくれるというらしい。


 住む所や仕事を斡旋してくれる店、それにアクセサリを換金してくれる質屋に行きたいです!!


 ……なんて言えるわけがない。


 だが、今日はこの街の雰囲気を味わえただけでも良しとしよう。

 次の休みにでも、また来ればいいわ。今度は一人で。

 よし、今日一日は楽しむと決めた。ゼロニスだって気晴らしいがしたいからついてきたのだろうし。


「街の楽しいところならどこでも行ってみたいです」


 私はフワリと微笑む。

 ゼロニスは無言で人差し指を私に突き付けた。


 え、どうしたのかしら?


「痛っ!!」


 ジッと見ていると額が指で弾かれ、思わずのけぞった。


「な、な……」


 なにするんですかと非難の視線を向けながら、ジンジンと痛む額をさすった。


「さきほど言ったばかりなのに、忘れたのか」


 目を細め、私をにらむゼロニス。

 あっ、そうだった。敬語も名前も気をつけなければ。


「き、気をつける……わ」


 だからといってデコピンなんてあんまりだわ。


「それでいい」


 ゼロニスはフッと微笑む。その魅力的な笑みに心臓がドキリとした。


「行くぞ」


 再び手を差し出され、おずおずとその手を取った。


 * * *



「すごく美味しそうな匂い……」


 私は足を止め、屋台に目が釘付けになる。


「朝食を食べてきたんだろう。お前の腹はおかしい」


 ゼロニスは呆れた顔で苦笑している。


「だってあの匂いは私を誘惑しているとしか思えない……」


 甘辛く煮たお肉と新鮮な野菜をパンに挟んだ軽食だ。外はサクッと中はもちっとした軽い食感のパンを使うのが一般的でパニーニャといってこの街の名物の一つだ。


「買ってくるといい」

「はい」


 私は屋台に向かう。


「すみません、一つください」

「はいよ、八百バーツだよ」


 ちょっと高いが仕方ない。珍しく街に来たのだから、食べなきゃもったいない。

 私がお金を出そうとモタモタしていると、横からスッと手が出された。

 ゼロニスだ。

 無言で屋台の主人にお金を手渡した。


「まいどあり!! 兄ちゃんも一つ食べるかい?」

「いや、俺は今度にする」

「そうかい。彼女に買ってやるなんて、優しいな」


 店主は豪快に笑うが、私はヒヤヒヤした。


 私を彼女だなんて、まあ、なんて命知らずな発言なことよ。今ここでの軽口だから許される雰囲気だが、ロンベルディの屋敷でそんな台詞を吐こうものなら、首が飛ぶだろう。


 むしろ私もとばっちりを受けそうで怖いから、勘弁して欲しいところだ。

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