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【書籍化】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
第二章 暴君のお世話係

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 本当、ヒーローとヒロインは別格の存在だと感じる。


 悪役令嬢として存在している私だけど、心を入れ替えたので、大人しく賃金を稼ぐことだけに集中するわ。

 セリーヌがゼロニスと出会うその時が、私は自由を手にする。


 ちょっと探りを入れてみようかしら……。


「そういえば、ゼロニス様とお会いしたことはある?」

「私ですか?」


 セリーヌは考え込む。


「遠目でお見かけしたことはありますけど、個人的にお話ししたとかはないです」

「そうなのね」


 まだ二人の接点はないらしい。


「だったら、これからかぁ」


 私はポツリとつぶやいた。


「ラリエット様はあるのですか? ゼロニス様とお会いしたこと?」


 セリーヌの質問に言葉に詰まった。


「な、ないわ……!!」


 ラリーとしての私なら、毎回顔を合わせている。だがラリエットとしての私は庭園で一回会った程度。あれは会ったうちに入らないだろう、短い時間だったのでカウント外だ。


 というか、今後もなくて構わない。ラリエットとしての私の存在を認識されては困るからだ。


「ゼロニス様にはセリーヌみたいな可愛い子がお似合いよ」

「ええっ」


 セリーヌは頬を赤く染めた。


「そんなことを言うなら、ラリエット様みたいなお美しい方の方が似合っていますわ」


 私のこの派手な美しさは作られたものだと、セリーヌは知らないのだろうな。

 あなたこそが天然の美。私は塗りたくられた造形の美。


「まあ、でも私は――」


 サアッと風が吹き、髪がなびいた。


「婚約者なんて、本当はどうでもいいのだけどね」


 つい本音が口から出てしまった。そうよ、自由になることが一番大事だわ。

 私を大事にしない家族から離れて、本当の自分らしく生きるの。

 

 セリーヌは突然の私の告白に瞬きをした。私はフッと微笑む。


「じゃあ、もう行くわ」


 私はスッと立ち上がる。


「あ、あの、ハンカチありがとうございました。洗ってお返しします」

「あら、いいのよ。気にしないで。それよりもちゃんと冷やすのよ」


 私は自分の目の横をトントンと指で叩いた。


「はい、話を聞いてくださり、ありがとうございました。また、お話してもいいですか?」


 セリーヌは緊張した面持ちでこちらを見つめている。


「もちろんよ。いつでも歓迎するわ」


 基本、ラリーとして過ごしているから、あまり時間はないのだけどね。


 ゼロニスの将来の愛妻だ。打算的な考えだけど、恩を売っておいて損はない。

 それになりより性格が素直で嫌味がないので、話しやすい。


 本当、誰かさんは、自分と正反対のこの性格に惚れたのかしらね。

 脳内にゼロニスの顔が浮かぶ。


 嬉しそうに頬を染めたセリーヌに別れを告げ、部屋へと戻った。



 * * *



 翌日、ラリーになって元気に出勤だ。


「おはようございます」


 メイドが集まる休憩室に顔を出す。それまで集まっていた同僚たちが、私が顔を出した途端、シーンと静まりかえった。


 なんだろう、なんか嫌な雰囲気。


「今日はどこへ行けばいいでしょうか?」


 仕事を覚える必要があるので、私は毎日配置される場所が違っていた。日によって厨房だったり洗濯室だったり、掃除だったり。仕事は山ほどある。ゼロニスのお世話係なのだけど、紅茶の時間の他に呼びつけられる以外は、配属された場所で仕事をこなしていた。


 いつもは同僚たちが配属された場所を教えてくれるのだが、今日は違った。

 皆が顔を見合わせて、誰一人口を開こうとしない。


「あの……」


 たまらず再度聞こうとした。


「あっ、いたいた、ラリー」


 メイド長が慌てて休憩室に入ってきた。


「早く紅茶の準備をして」

「はい」

「ゼロニス様がお待ちよ」


 皆の態度のことなど深く考えず、バタバタと準備を開始した。

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