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【書籍化】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
第一章 悪役令嬢に転生した私

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 ゼロニスはサッと右手を出した。トントンと左手で指さした先の右手首は、わずかにだが腫れていた。


 ひっ……!! もしやそこをぶつけてしまった!?


「これでわかっただろう。お前のやるべきことが」


 深く息を吐き出したゼロニス。


「はい!! いますぐ手当をしてますので、お待ちください!!」


 どうしよう、私のせいだ。


 メイドの身分で主人をケガさせるなんて、あってはならないことだ。これで罰を受けないほうが不思議だ。最悪、鞭打ちとか食事抜きもありえる。


 だが、今は自分の身を心配している場合じゃない。

 相手をケガさせてしまったのは確かなことなのだし。

 救急箱から包帯と塗り薬を取り出す。


「失礼します」


 腫れている部分に薬を処置し、グルグルと包帯を巻いた。


「きつくないですか?」

「ああ」


 ゼロニスはされるがまま、大人しくしていた。

 やがて処置が終わり、私は胸をなでおろした。


「ほう、包帯を巻く腕は悪くないな」


 ゼロニスは感心したようにつぶやいた。それって褒められたのだろうか。

 だが、ここに長居は危険だ。またゼロニスの機嫌を損なうのは避けたい。

 私はスッと立ち上がると深々と頭を下げる。


「失礼しました。あとで紅茶をお持ちします」


 紅茶に気を取られて、今回の件は忘れてくれないかな? 

 なんて、そんな都合のいいように考えていた。


「待て」


 ほら、やっぱりね。この人のことだから、このまま逃がすとは思えない。

 ゼロニスに見つめられると背筋がゾクゾクした。


「お前をしばらく、俺の世話係に任命する」

「はい?」


 ゼロニスは真っすぐに私を見つめた。


 えっと、それってどういうこと? ゼロニスが身近に置くのは勤務歴の長い、本当に信用できる使用人だけだと聞く。その中の一人に任命されたということ――?


 呆けた顔して瞬きをすると、ゼロニスはクッと鼻で笑う。


「なんだ、その顔は。不服か」


 拒否権などないような声。だが、私はなるべく平穏に二カ月過ごせればそれでいいの。だから、必要以上にゼロニスに近づきたくない。命の危険があるなら、なおさらだ。


「わ、私……」


 一介のメイドが意見を言うなんて、許されない。だが、思わず口から出てしまう。


「自信がありません」


 特にこれといった特技がないもの。取り立てて器用というわけでもないし。それなのにゼロニスの側にいては、不敬を買ってしまう確率が跳ねあがるじゃないか!!


 ゼロニスは頬杖をつき、ジッと私を見た。


 そして包帯がぐるぐる巻かれて痛々しい右手を、サッと前に出した。

 まるで、私に見せつけるかのように。


「あっ、そうですね、承知いたしました」


 深々と頭を下げた。


「そこだけは理解が早いようだな」


 ゼロニスは嫌味ともとれる言い方をし、クッと笑う。

 これはあれだ。この右手はお前のせいでケガをした、暗にそう訴えている。


 この状況では拒否することなど許されない。

 どうせ逃れらないのなら、やるしかない。ギュッと口を結んだ。


「――で、いつまで突っ立っているんだ?」

「はい?」

「紅茶を用意すると自分で言っていただろう。忘れたのか、バカめ」


 鼻で笑うゼロニスが憎たらしい。


「はっ、はい、ただいま準備いたしますので、お待ちください」


 まずは紅茶の準備してこなければ。

 深々と頭を下げ、急いで準備に取りかかった。

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