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マニアックなレオ  作者: レオ
96/115

VOL96 「人生の楽園 後編」

ー前回からの続きー


和歌山の古民家へ引っ越した

ローランド夫妻を訪ねて

ドミニクとバイクで向かう。

圧倒的にひとが少ない

ホンっトに田舎町だ。

大阪とはまさに別世界。

畑がいくつかある広い敷地に驚く。

こんなところで新しい生活を

始めたのかっ!

隣(といっても50mくらい向こう)

の一軒以外はまったく家がない。

玄関に着くとバイクの音を聞きつけて

網の引き戸を開けて

二人が家から出てきた。

「スゴイとこやなあ!」

「まあ入って入って。」

「わあ〜、土間なんや。」

木造の家の中は広く、

屋根が高くてゆったりしている。

土間から区切りなくそのまま

膝くらいの高さを上がったところが

畳の部屋になっていて全体で1つの

空間になっている。

まだ着いて1週間で、

何も片付いていないどころか

掃除もしていない。

長年ほったらかしになっていた

部屋の端にはほこりが積もったまま。

その辺に運び込まれた荷物が

散らばっているこんな状況なのに

泊まりにおいでというとこが

堅苦しくなくてオモシロイ。

ローランドとシンガポールで

数年過ごしてきたナオミも見た目は

フツーの日本人だけど感覚はやっぱり

すごく自由でのびのびしている。

国際結婚するひと特有の

自然な個性を放つ。

家でPCだけで仕事をしている。


「案内するよ。」

バイク用のロングブーツを脱いで

下駄を借りて、大きな麦わら帽子、

白いノースリーブ、短パン、長靴姿の

ローランドの後について外に出る。

夏の陽が高く昇り、暑い。

「ここにトマトとキューリ、ほら。」

何列かに耕された畑に長〜いホースを

引っ張ってきて勢いよく水を撒く

ローランドはすでに田舎町暮らしを

するひとの雰囲気を醸し出していて

表情は生き生きとしている。

「それからこっちの畑には、、、。」

すでに全部で5、6種類の苗が

植えられていた。

部屋の掃除や片付けよりも

畑仕事を優先していることから

憧れていた田舎暮らしを

いかに喜んでいるかがわかる。

家のすぐ横には10m以上の高さに

なっている林があって、

土から突き出たパイプからは水が

チョロチョロと流れ出てきている。

物置きの小屋には前の住人が

使っていた大小いろんな農耕器具が

そのまま置いてあるから

ローランドは大いに助かるだろう。

「こっちが離れの部屋。

今日ここで寝てね。」

畳の部屋に布団が敷かれていた。


夕方になり、土間に置かれた

大きな食卓を囲んで食べて飲む。

4人全員がとにかく酒飲みだ。

レオ「エアコンなしでも

  意外と涼しいなあ。」

ナオミ「そうそう。蚊がいるから

  網戸にしてるんよ。」

レオ「虫は大丈夫なん?」

ナオミ「まあなんとかね〜。

  いきなり私の手のひらより

  ちょっと小さいくらいの

  クモが出てきてビックリしたわ。

  ヘビもいるね。」

レオ「マジかあ。

  きゃあーっ!私には無理ーっ!

  とか言わんねんな。

  逞しいよねえ。」

ナオミ「まあ、すぐ慣れるやろし。」


阪大でナノテクノロジー関連の

仕事をしていたローランド相手に

いろいろと深い話題を持ちかけて

ドミニクは楽しそうだ。

突き詰めるドミニクに

ローランドが熱弁で答える。

ムズカシイ話なのに英語でだから

もう全くわからない。

ドミニクは高卒だけど、

とにかくいろんな分野に渡って

知識が豊富でいつも感心させられる。

有名な大学卒といってもただ

テストのための勉強をしてきただけの

ひとは理解力、記憶力が高くても

賢いと言えるのかはギモンである。

ドミニクは子どもの頃から有意義に、

効率的に生きていくために、

楽しく過ごしていくために、

必要なことや興味をもつことを

学んできたひとだと思う。


彼は24歳で日本にやってきて

すぐに俺と出会い、バイクでの

ツーリングやサーキット走行、

レーシングカート、川遊び、

林でのキャンプ、シチリンBBQ、

海でのシュノーケリング、

インラインホッケー、ゲーム、空手、

ロックバンドでのライヴ活動などで

ずうっと行動を共にしてきている。

とにかく波長が合って楽しい親友だ。

昔から「オマエはお母さんは違うけど

兄弟やからなあ。」と言われる。


俺はIQが異常に高くて中2の時に

学年500数十人の中でまさかの

トップの144なのに成績はというと

100番くらいだった。

担任が俺の家にだけ特別に家庭訪問

してきてオヤジに俺が明らかに

勉強を怠けている、と告げてきて

エライ迷惑した。

なんて安易な思考の先生だ。

IQが高いということはたぶん

幾何学的なパズル、計算などが

得意だったり、記憶力、発想力などが

優れているのかもしれないけど、

それが学業に直結してすごく

役に立つようにはとても思えない。

俺はそれなりに理的に考えるタイプ

ではあるけど、常識的な知識さえも

いろいろ浅い。

英語のリスニング能力も低いから

残念ながらドミニクにとって

話し相手としては全然

物足りないんじゃないかな。

ドミニクは30代の頃にネットでの

IQテストの精度がどの程度か

わからないものの試してみたら

130ちょっとだったらしい。

ローランドとのアツい論議は

夜遅くまで続いたのだった。


家屋もまわりの環境も田舎そのもの、

俺にとっては旅行に行ったとしか

感じれない異空間のような

あの素晴らしい場所で

ローランド夫婦は暮らしている。

数年後、娘も誕生して、バイク、

サーキットが大好きなローランド、

そして同じく700ccくらいのバイク

(ドゥカティ)に乗るナオミはなんと

「スズカ」と名付けたのだった。

自然いっぱいの中でのびのび

成長してるんやろな。

テレビ番組「幸せの楽園」から毎回

いろいろとシゲキを受けるけど、

それは今やローランド家族にとっては

毎日の当たり前の現実世界なのだ。

スゴイよな〜。


「ナオミが今は全然乗っていない

ドゥカティをぜひ使ってよ。

ドミニクと走りに行こう。」

半年前にライヴを観に来てくれた

ローランドが強く誘ってきた。

この夏、和歌山の海に

ずいぶん久々となるキャンプに行く。

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