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マニアックなレオ  作者: レオ
9/115

VOL9 「スズカ8耐スタッフの夏 前編」

2003年。

関西最大級のレーシングチームである

エッチングファクトリーのオーナー

兼ライダー竹見から誘いを受けて

スズカ8耐のスタッフとして

ドミニクと参加することに。

2011年まで?に7回くらい

すごく貴重な経験をさせてもらった。


竹見はスイミングコーチ時代の仲間。

1990年に日本に来たばかりの

ドミニクと知り合って、

バイクの話で盛り上がったんで、

まだレースを始めたばかりの竹見が

練習走行をするスズカサーキットへ

連れて行った。

当時はライダー竹見と2人の

メカニックとだけで活動していた。

竹見の見かけはヤンキーなのに憎めない

アホなキャラクターと、レースに賭ける

情熱と人情に惹かれてかライダー、

メカニック、ヘルパー総勢で30人以上の

活気ある立派なチームへと発展していった。


毎年7月最後か8月最初の日曜に開催される

スズカ8時間耐久ロードレースは世界で最も

有名なオートバイレースの1つであり、

世界数十ヶ国でテレビ中継される。

エッチングファクトリーは

20年以上に渡り参戦。

竹見は2回ほど引退宣言したけど、やっぱり

寂しくて耐えられないのかしぶとく復帰。

53歳まで走っていた。

8耐を中心に8耐の前哨戦である

スズカ300キロレース、

岡山国際サーキットや他の地方サーキット

での選手権にも積極的に出場。

年間ランキング上位、

チャンピオンにも何回かなった。

ホンマに大したヤツである。


竹見がたぶん初めて8耐に出場した

1990年代前半、トイレで小用を

足していると横にガイジンが立った。

(ええっ!!!

エ、エディーやあ!!!)

車のレースに例えるならF1に当たる

WGP(現在のモトGP)で何度も

世界チャンピオンに輝いたあの

伝説のライダー、エディーローソン。

(あのエディーが俺の隣で

今オシッコしてる!!!

あ、握手してもらおかな?

でも今は、、、アカンよな。)

そしてレース開始。

皆が黙って麻雀をしてるといきなり

「チューリッ、、、プう〜。」

と言いながらプう〜とオナラをして

笑わせるあのアホの竹見が

エディーローソンと走るのだ!!!


世界には車、バイク、その他の様々な

レースが存在するが、このスズカ8耐ほど

不平等なタタカイはないんじゃないか?

レギュレーションというもので参加者の

条件を揃えるのが当然だと思うけど、

WGPチャンピオンや世界ランキング

上位ライダーが、超高価な部品を使って

改造して仕上げられたマシンに乗って、

最高の技術、知識、経験を持つメカニックが

メンテナンスを行い、最高のピットクルーに

サポートされて走るというのに、

フツーの会社員とかがそれと一緒の

舞台に立つのである。

決勝に残った60チームほどが参戦。

上位の20チームくらいまでは

もう明らかにレベルが違うのだ。

1周2分余りのコースを各チーム1台か2台

(3台のこともあった)、ライダーが

2人又は3人で約50分?ごとに

ピットインして、慌ただしく燃料補給、

タイヤ交換、部品の交換や調整をして、

ライダーが交代して再スタートするわけだが

上位チームとのペースの差が大きいから

8時間の間に何回も何回も

抜かされてしまうことになる。

コーナーでフルブレーキングする

竹見の横を旋風のように圧倒的な速度差で

通り過ぎるライダー。

「ええっ!

それはオーバースピードやろお!

曲がりきれへんぞっ!」

素早い動作でマシンを倒し込み、

あっという間に猛然と加速して

引き離してゆく。

世界の頂点のライディング。

エディーローソンに抜かれた瞬間であった。


竹見はコーフンして

「エディーがな、エディーが、、、」

とその時の衝撃を話してくれた。

レースで抜かれて悔しいはずが

彼は感動してしまっていた。

そうかあ〜、スズカではフツーに

世界のトップライダーと空間を

共有することがあるんやなあ!

話を聴く俺もコーフンしたのだった。

その時はまさか自分自身もスズカ8耐の

スタッフとして特別なパスを身に着けて

報道関係者、カメラマン、レースクイーン

らと伴に歩き回り、超有名ライダーを

目の前で何人も見ることになるとは

思いもしなかったのだ。


「ドミニクは背が高いからストップボード、

おまえにはファイヤーマンをやってもらうわ。

消火器を使ったことなんか

ないやろけどまあ大丈夫や。

滅多に火なんか出えへんから。」

消火と聞いてちょっとビビった俺に

向かって竹見はサラッと言う。

ズラッと並んだパドックでピットイン

してきたマシンに向かいゼッケンナンバーを

大きく書いた縦1.5mほどのボードを

高く掲げて自分のチームの場所を示す。

ボードにマシンの前輪を当てた瞬間から

ピット作業が始まる。

猛暑の中、舗装された路面の温度は

一体何℃にまで上がっているのか?

全開走行を続けたエンジンは超高温になり、

時には発火することがある。

その場合に備えて即座に消火する係を

用意する規則だ。

クソ暑い真夏に耐火ツナギ、耐火グラブ、

耐火目出し帽、ゴーグルを着けた

完全防火体制。

消火器の安全ピンを抜いた状態でホースを

ピット作業中のマシンに向けて構える。

ピット作業をするスタッフの横では

レース運営側の担当者が厳しい目で

規則違反がないかをチェックする。

何か違反があれば罰則として

走行タイムが加算されたりするのだ。


緊張して初めて消火器を構えてから

無事ピット作業を終えたヤマハR1

(1000cc)が咆哮を響かせて

走り去るとホッとする。

そうやん、これだけのことや。

規則があるからファイヤーマン

としての俺の存在が必要なだけや。


ところが、、、!!!

3、4回目のピットインでマシンを

止めた直後にガソリンタンクの真下の

部品からチョロチョロっと火が

出ているのが見えたのだ。

え? まさか? これって、、、。

もしタンクの燃料に引火したら???

メカニックが叫ぶ。

「おいっ! 火が出てるぞ!

消火器いーっ!」

一瞬でパドックに緊張が走った!


ハ、ハナシが違ううう〜〜っ!!!


(エライこっちゃの後編に続く)


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