VOL80 「玩具修理者」
基本的には自分のことを明るい人間
だと思っている。
よくしゃべるし、笑うし、
お笑いや楽しいことはなんでも好き。
でも、映画、小説などは明るい
ハッピーエンドの話にはあまり
興味が湧かない。
薄っぺらだったり、印象に残らない
ただの時間潰しみたいな作品が多い
ように感じるから。
サスペンス、ホラー、SFのような
ジャンルの方が深みがあって、
その独自の世界観を楽しんだり、
シゲキを受けたりすることができる。
ホラーに関しては、幽霊、怪物などが
恐ろしいというものよりも、
人間の狂気や内面、よくわからない
ナゾなものがテーマの方が
話に惹き込まれてしまう。
都市伝説の呪いと連続する突然死との
関係を調査していくことから始まり、
小説では映画よりもずっと深い話へと
繋がっていく「リング」、「らせん」、
「ループ」なんかは最高だ。
ホラー小説が好きなひとしか
知らないであろう小林泰三の
「玩具修理者」は衝撃だった。
玩具修理者は壊れたおもちゃや
ゲームなどなんでも
直してくれるらしい。
少女の友達は「死んでしまった猫」
も修理してもらったと言っていた。
ある日彼女は歩道橋で過って
転落して、背負っていた幼い弟を
死なせてしまう。
両親にバレないように
直してもらうために少女は死んだ弟を
玩具修理者の元へと運んでいく。
玩具修理者は弟を細かく分解して、
必要なところにはおもちゃの部品などを
組み合わせて修理するのだった。
短編で無駄がなくよくまとめられた
ストーリー。
これがデビュー作というのが
まったくすごい!
とにかく描写がグロテスクで不気味で
アタマがおかしくなってくるけど、
そんなことに顔をしかめるよりも、
生物と非生物との境界とは
一体どこにあるのか?
という極めて簡単そうなのに
意外によくわからないことを
改めて考えてみる気にさせられる
著者の視点に注目したい。
近年、医療の発展に伴って内臓などが
人間に最も近い豚のものだけでなく、
ついには人工器官が移植される
時代にまでなってきている。
機械と人間の融合。
昔はSFだったことが現実に。
心臓が動いてるんやから
生きてるに決まってるやないかっ。
じゃあ、あなたの心臓は
最初はどうやって動き始めたの?
どうやって動き続けてるの?