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マニアックなレオ  作者: レオ
75/115

VOL75 「原始の記憶」

焚き火が大好きだ。

先月あるイベントで堺の大泉緑地で

昼に30人近くも集まってBBQをして、

夕方から残った10人足らずで

焚き火を囲んで飲んだ。

焚き火をしたのはもう10年ぶりくらい

になるのかなあ。

ウチのベランダやそのへんの空き地で

焚き火をすると火事の恐れから

通報されたり問題になる可能性が

あるから気軽にできるわけではない。

久々に焚き火を囲む機会を作って

もらえて本当にありがたかった。


2010年からは主にロックバンドでの

つきあいになってるけど、

ギター&ヴォーカルのドミニクとは

もう34年の仲で元々バイク仲間、

遊び仲間だ。

二人でキャンプ場ではなく、

林の中でテントのような生地の

ハンモックを吊って眠るスタイルの

キャンプにハマってよく行った。

普段は滝畑ダムの近くの林へ。

岡山国際、スズカサーキットで

バイクで走行したり、スズカ8耐の

スタッフとして参加する時も

ハンモックを設営。

真冬はもちろん完全防寒対策である。


ドミニクは料理が上手で

インド風カレーやスパゲッティ、

絶品のオリジナルレバーパテ、

さらにはなんと数十種類もの

クラフトビールまでイチから作れる。

ランタンの灯りの元でシチリンで

鶏、シャケ、シシャモ、サンマ、

ホッケなどを飲みながらでも

絶対に焦がしたりすることなく

丁寧に完璧に焼き上げて

3つ下なのにまるでお父さんのように

「もうえーんちゃうか。ほら食べ。」

と紙皿に入れてくれる。

塩コショウ、ガーリックパウダー、

一味、山椒とかで食べる。

サイコーにうまい!

カセットコンロで調理するより

シチリンでは何倍も美味しく、

そして楽しい時間を過ごせる。

炭の香り、柔らかい暖かさが

心を和ませてくれる。


ビールから始まって、赤ワインへ。

イタリア、フランス産の芳醇な香りを

楽しむために高さ30センチ近くもある

ワイングラスで飲む。

食事が一段落すると、真っ暗な中を

ケータイの微かな灯りだけを頼りに

小さい沢沿いに2、30分登っていく。

大阪とは思えない異空間を漂う。

すでに酔ってるからたまにうっかり

浅い水に足がハマって濡れてしまう。

真っ暗な自然の中で月が圧倒的な

存在感を示す。

引き返してさっき見つけておいた

適当な木切れを持てるだけ運ぶ。


さあ、第二部の始まりだ。

焚き火が燃え上がると闇が

明るく照らされて暖かい。

ウキウキしてくる。

2mくらいもある木は何時間もかけて

燃やしていく。

電池駆動のアンプとギター、ベースを

準備。

真夜中の観客がいないセッションの

始まりだ。

数キロ四方には人間が誰もいないから

爆音でも全然ダイジョーブ。


楽器を置いてブルーチーズと

パルメジャーノレッジャーノ、

パンチェッタの風味を楽しみながら

さらに赤ワインを飲み進めていく。

最初勢いよく燃え始めた焚き火は

落ち着き、小さい炎を揺らめかせて

じんわりとオレンジ色の光を放つ。

ああ、なんてリラックスできるんや。



600、700万年前に出現した人類は

150万年前には洞窟の中で焚き火を

していたことがわかっている。

火をコントロールすることによって

生活は遥かに安全で豊かになった。

真っ暗な闇の中で肉食獣に襲われる

危険がつきまとう恐怖の毎日。

動物は火を恐れるのになぜなのか?

人間だけは自ら火を味方に

つけることができたのだった。

寒さからも身を守ることができる。

明るさを保つことで夜も行動できる。

動物の生肉などを焼いて食べることで

食中毒になるリスクも減る。

いつ頃から焼いた肉や魚に塩を

かけることを始めたのだろうか?

ドミニクが完璧に調理したものには

及ばなかっただろうけど、

かつて存在しなかったその美味しさに

驚いて感動したに違いない。


ユーチューブにはただ焚き火が

何時間も映し出されるだけの

動画がある。

俺と同じように焚き火が

大好きというひとが大勢いるわけだ。

驚異的に進化して文明を築き上げ、

宇宙開発を進め、インターネット、

そしてAIまでも創り上げてきた

人間だが、その脳の奥にある

消し去られることのない遥か遠い

原始の記憶が焚き火を眺める時の

安心感を導き出すのかもしれない。


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