VOL71 「海外旅行周遊スタイルの原点」前編
小、中、高校生の頃はマンガに
夢中になって書店にとってはなんとも
迷惑だったろうけど、
夏休みには何時間も立ち読みしたり、
貸本屋で借りたりしていた。
江戸川乱歩、モーリスルブランなどの
推理小説も好きだった。
そして小学5年くらいの頃に9歳上の
アニキから今まで読んだことがない
旅行記、冒険というようなジャンルの
一冊の本を借りたことがそれからの
俺の人格形成にとてつもない
大きな影響を与えたのだった。
「日本一周ぼくの自転車旅行」
夜間高校に通いながら、
まだ舗装道路が少なく砂利道が
当たり前の昭和37年に自転車で
日本一周する夢を描いてお金を貯める
青年のノンフィクションの話に
最初から胸がワクワク、大コーフン!
自転車とは友達と近くの公園に
行ったりする移動手段に使うもの
くらいにしか考えていなかった俺は
とんでもない未知の世界を
覗いた気がして頭がシビレた。
砂利道を30キロも荷物を積んだ
自転車で??
きつい山道もあるし、雨も降るし、
家族から離れてひとりで、
飯盒でゴハンを食べてキャンプで??
まさか日本一周なんて!!
関東から中部、近畿、と進んでいく
手書きの走行ルートとハプニング
などのメモ、日々の日記、写真が
なんともリアルだ。
埼玉から出発して自転車の故障や
いろんなトラブルに遭いながらも、
キャンプを基本に、しばしば
知り合ったひとの家に泊めて
もらったり多くのひとと触れ合い、
徐々に日本一周サイクリング青年
としての噂が拡まって
ラジオの取材を受けたりしながら、
遂に10ヶ月にも及ぶ行程を完走する。
本の末尾に手書きのイラストとともに
必要だった荷物全てが書かれていた。
読み終えた俺はこの本が単なる読み物
とはもう考えられずに
いつか自分自身がこの冒険をするのに
お金は一体いくら必要なのか
すぐに計算を始めたのだった。
特にわんぱく坊主でもなかった自分が
大胆、活動的な人間へと変貌する
瞬間だったのかもしれない。
中1の春、入学して2週間で高鉄棒から
振り落とされて左腕複雑骨折、脱臼
となり全治半年。
やっと治って、筋肉がなくなって
半分ほどの太さになってしまった腕を
自己流の激しいリハビリで短期間で
回復させた。
晴れた日曜の昼過ぎ、思いつきで
Tシャツ1枚でサンダルを履いて
自転車で家の前の道路を
奈良方面へと向かってみる。
極めて軽装で手ぶらの
初めてのサイクリング。
ひたすら真っ直ぐ行ってみたい。
奈良県に入り、ひとりで知らない
風景を眺めながら日本一周の本
のことを思い出してウキウキする。
25キロほど走ると突き当たりのように
なったことで気がすんで帰路へ。
しばらく走るとカラフルな服装で
隊列を組んで颯爽と走るおとなの
サイクリンググループ5人ほどに
抜き去られる。
幼稚な負けん気からか、
自分のサイクリング車では
どれくらいスピードを出せるのか
試したくなったのか覚えていないけど
パワー全開でペダルをこぎ続けて
サイクリンググループを抜き返した。
長い下り坂だったので
とんでもない勢いでペダルは回り、
経験したことのない時速50キロ
ほども出ていたと思う。
自転車ってこんなに
スピード出るんかあ!!
当時視力が0.2ほどで、なぜか道路の
真ん中に落ちていた50センチくらい
もあるコンクリートの塊に気づくのが
遅れた俺はまともに突っ込んで
後輪が一瞬で浮き上がり、
前方宙返り状態で数m吹っ飛ばされて
地面に激しく叩きつけられた。
回復したばかりの左腕の骨に
またもヒビが入り、肘に深くえぐれる
傷まで負った。
自転車は前輪がグニャグニャで
ひどい有様だった。
追いついてきたサイクリンググループ
がトラックをヒッチハイクして
ケガ人の俺と悲惨な姿の自転車を
乗せて家まで送ってくれるように
手配してくれた。
何をやってるんやろ、俺は、、、。
恥ずかしくてしょげた。
高校では原付バイクでのツーリング
にハマり、世界が格段に拡がった。
そして後には
海外「周遊」数週間ひとり旅スタイル
へと繋がってゆく。
ー後編へと続くー