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マニアックなレオ  作者: レオ
62/97

VOL62 「ゲームクリエイター」

長年ロックバンドでライヴ活動を

している。

昔から音楽に関わらず、アート全般、

当然アーティストにも興味がある。

美、創造、表現など感性を求められる

アーティスト達は何を考え、

物事をどんな風に感じるのだろうか?

もしかして毎日見ているこの世界も

少し違って見えているのかもしれない。


1990年から14年間アメリカンバーを

経営していた。

平日、特に雨の夜はヒマな日が多い。

誰もいない店でひとりで飲んでいると

30歳くらいの男のひとが

ひとりでふらっと入ってきた。

彼の顔には痛々しい赤い筋の傷が

大きく斜めに走っている。

どうしたんやろ?

カウンターの真ん中でテレビ画面で

無音で流す洋画を眺めていた彼は

静かに声をかけてきた。

「マスター、結婚してます?」

「いえ、独身です。」

「そうですか、、、。

女って難しいんですよねえ。

今ね、嫁がすごく怒って指輪を

着けた手で顔を殴ってきたんです。」

「うわあー、痛そうですね。」

「、、、マスターはゲーム

やったりしますか?」

「ええ好きですよ。」

「ゲームクリエイターやってるけど

辞めようかなあって考えてるんです。」

「どんなゲームなんですか?」

「バイオハザードシリーズの主人公

とかキャラをデザインしてます。」

「エエーーっ!!!」

ちょうど数日前から始めたゲームの

その主人公こそ正に今ここにいる

彼が創り上げたキャラだったのだ。

その夜帰ってからなんとも奇妙な

気持ちでそのゲームの続きをした。

数日後また彼が来た。

ぼんやりした目でなんだか

捉えどころのないひとだった。


Iさんとはタイプはまったく

違うけど高い創造力を持つひとは

やっぱり浮世離れしてるのかなあ。



常連さんの中でも特によく来てくれる

Iさんはかなりフシギなひとだった。

本業は画家で、ゲームクリエイター

としての仕事とかもしていた。

ファイナルファンタジーシリーズの

背景をデザインしたり。

タイヤメーカーのピレリの広告の

デザインの依頼が来たり。

画家のクリスチャンラッセンとも

面識があった。

ニコニコと穏やかで柔らかい表情だが

さらっと話してくれるエピソードには

驚かされるものが多くて強烈だった。


パソコンに詳しくて、

以前はリヤカーを引っ張って歩いて

「ご町内の皆さまあ〜。」

と修理を受けて廻ったりもしていた。


雷がものすごい日に窓を開けて外を

見ていたらすぐ目の前の電柱に落ちて

衝撃で後ろに吹っ飛ばされたという。

子どもみたいに両腕を拡げて

「真っ白で眩しい光の柱で

こお〜んな太さでしたっ。」

と説明してくれた。


スペイン人とつきあっていた時、

近所で知り合いの女のひとと

立ち話をしたら浮気をしてると

勘ぐられて、部屋に入るなり

ナイフで腹を刺されたらしい。


感覚が繊細なのか、実家の徳島へ

帰省して大阪に戻ってくると

街の上がスモッグで覆われているのを

はっきり感じるそうで、毎回1週間近く

体調がおかしくなると言っていた。


何人かの芸能人が「小さいオジサン」

を見たとテレビで話してるけど、

初めてその存在について

語ってくれたのはこのIさんだった。

自分の部屋の本棚の間に

10センチもないくらいのオジサンがいて

怯えた目でこっちを覗いていたという。

う〜ん、気になってしょーがない話だ。


ありがたいことにIさんは

「この店はサイコーです。

マスターの話もホントに興味深い。」

と週に3、4回も通ってくれていた。

二科展に出展するクジラを描いた時は

絵の下の方に英語の文章を入れたい、

と俺に翻訳を頼んできてくれて

光栄だった。



アートの可能性は無限に広い。

アーティスト達の感性は自由で

話しているとシゲキされて楽しい。

その純粋さと情熱に触れると

なんだかココロがざわついてくるのだ。

俺自身現在はベーシストとして

ステージに立つことと、

こうして文章を書くことで

自分なりに感性を表現することを

楽しんでいる。

アーティストとしての感性、能力は

たいしたことがないだろうけど、

誰かが楽しんでくれたり、

何か少しプラスになる影響を感じて

もらえることがあるならハッピー。

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