VOL56 「小説リング らせん ループ」
畳、土壁、木製の引き戸、
三面鏡がある和風の二階建ての家で
26歳まで過ごした。
物心がついた時から自分が住んでいる
家だというのに昼間でさえなぜか時々
怖く感じて、特に二階に上がるのは
ほんとにイヤだった。
おばあちゃんが亡くなった日の夕方、
9歳上で当時中学生だったアニキは
風呂上がりに髪を乾かしていて、
三面鏡で白装束を着たおばあちゃんが
後ろを横切るのを見てパンツ一枚の
姿のまま外へ飛び出して親戚の家まで
叫んで走っていった、という。
それを聞いてから決定的にこの家を
恐れるようになってしまった。
俺は幽霊が出た家に住んでいる、、、。
日本のホラー映画の金字塔となった
「リング」は強烈だった。
洋画と違い、邦画、特に和風の家や
着物姿が出てくるものはどうしても
自分の記憶とリンクしてしまう。
おどろおどろしい和室の空間、
湿った空気やすえた臭いまで
感じれる古井戸。
観たあとしばらくの間ショックを
受けるほど怖かったけど、
現代の若者の間に広まる都市伝説と
古い和の空間との融合など、
話としては面白かった。
小説で「リング」の続編もあることを
知って興味をそそられて読み始めた。
あんなに怖かったのに
なぜ読んでしまうんだろう?
先に映画を観たから文章だけでも
風景がリアルに頭に浮かんでくる。
映画では、呪い、幽霊、が前面に
出された完全なホラーだけど、
小説では謎を紐解こうとして
進んでゆくサスペンス的な要素が
大きくなっている。
「らせん」に続くと新局面となり、
医学的、科学的な視点から世界を
巻き込む恐るべき展開を見せる。
そこには貞子は元々映画のような
恐ろしいバケモノだったのではなく、
劇団員として過ごしている姿や
その背景まできちんと描かれている。
特にキーとなる高山竜司の存在感が
素晴らしく、惹きつけられてどんどん
話に入り込んでいってしまう。
呪いのビデオを観た者は1週間後に
死ぬ、というシンプルな都市伝説から
よくもまあ人類の存亡に関わるこんな
深い話にまで繋げて考えれたものだ。
「らせん」から物語は映画化
されていない仮想現実がテーマとなる
「ループ」へと続く。
ここから好みが別れるかもしれない。
ジャンルとしては、ホラーから
サスペンス、そしてまさかのSFへと
移行していくような感じだ。
文章を書くのが好きで続けているけど
ノンフィクションしか書いたことない
俺にゼロから登場人物やストーリーを
創り上げる才能があるのかどうかは
全くわからない。
この壮大な3部作の原作者鈴木光司の
アタマの中は一体どんな風に
なっているのだろうか。
映画の大ヒット、そしてシリーズ化で
あまりに有名になって貞子の
キャラクターばかりが突出して
しまったけど、ものすごい世界観へと
繋がるこの小説はさらに素晴らしい。
「リング」、「らせん」、「ループ」
のシゲキ試してみる?
図書館でも借りれるよ〜。