VOL50 「遊星からの物体X」
地球はもはや温暖化、などという
生易しいことばでは収まっていない
「熱帯化」とでもいうような状況に
なってきているのではないか。
数日前にテレビ番組で信じられない
ほどの勢いで南極?の氷が溶け続けて
川のように流れ出している映像を見て
大きなショックを感じた。
シベリア、アラスカなどの永久凍土の
融解が引き金となって二酸化炭素の
20倍温暖化を促進させるメタンが
大量に放出されるだけではなく、
恐ろしいことに長年のあいだ氷に
閉じ込められていた古代のウイルスや
病原体がすでに発見され始めている。
なんということだろうか。
氷の中には人類が永久に触れては
いけないはずの危険なものが
眠っている可能性が高いように思う。
たぶんこういった現実に危惧されて
いることをテーマにしたホラー映画は
いくつかすでに存在するだろう。
エボラ出血熱を遥かに上回る危険な
ウイルスが拡散する恐怖を描いた
「アウトブレイク」をずっと前に観て
怖かったけど、コロナが蔓延し始めた
時にこの映画を思い出して
ただの作られた話のようには
思えなくなった。
「遊星からの物体X」。
これはウイルスの話ではなく、
10万年以上前に宇宙から飛来してきて
墜落した円盤とエイリアンを
南極観測基地の隊員が氷の下に発見、
調査研究のために発掘したことから
始まる恐怖を描いた映画だ。
氷が溶けて蘇ったエイリアンは様々な
形状に変化し、人間達を体内に
取り込んで細胞を同化させる。
吹雪に閉ざされた基地内で1人、
また1人と殺され、隊員はお互いが
すでにエイリアンとなっているのでは
ないかと疑心暗鬼になって
追い詰められてゆく。
逃げ場もない地の果て南極で、
一体誰を信じればいいのか?
シンプルだけど、怖すぎる
シチュエーションでの人間模様に
惹き込まれてしまう。
もしこの殺戮生物が人間に変身
していることを気付かれず南極基地を
後にして街へと侵入してしまったら?
特殊メイクなど手作りでのリアルさを
追求したグロテスクな造形も
高く評価された。
1982年に上映されたこの作品は
カルト的な人気を博し、2021年には
「遊星からの物体X
ファーストコンタクト」
としてリメイク。
リメイク版は3日前に起こった事件の
発端からを描いていて、惨劇の場が
なぜこういう状況になっていたのか?
がなるほど、と理解できるように
なっている。
映画が大好きで今までいろいろと
観てきてるけど、これからますます
気温が上がって氷が溶けて、
人類が経験したことのない想像を
越えるヤバい事態になっていって、
この作品もまた娯楽としてスリルを
楽しむどころではない、
などということにならないよう
祈るばかりである。