VOL45 「メメント」
「記憶」ってなんかフシギだ。
そんなこと考えたことはないですか?
スマホには検索したことばの履歴が、
旅行で撮影したビデオカメラには
音声と映像が残される。
脳には五感で得た、映像、音声、
匂い、味、感触、といったさらに
多くの複雑な情報が記憶として
インプットされる。
当たり前だと思われるかもだけど、
すごく便利で多機能な最新のPC
にさえもできない高度なことが
物心がついてからずうっと自分自身の
この頭の中で日々休みなく
行われ続けてきているのである。
これって超スゴイことではないのか。
まあでもそんな素晴らしい記憶装置を
持つ脳なのに、遠い過去の出来事に
ついては内容が捻じ曲げられてたり、
都合よく美化されていたりもする。
ひどく酒に酔っていた時はどこを
どうやって帰ってきたのかも
覚えていないのにちゃんと着替えて
歯も磨いてベッドで寝ていたり、
同じ場にいた友達とよく覚えている
ポイントが全く違ったり、と不確かな
部分があるというのは興味深くも
あるし、機械とは違う生身ならではの
御愛嬌だと言いたい。
目が見えないと歩くことも極めて
大変だろう。
記憶ができないと、はたして
どうなるのだろうか?
原爆をテーマとして取り扱って物議を
醸し出した現在劇場公開中の映画
「オッペンハイマー」の
クリストファーノーラン監督の
出世作「メメント」。
このシゲキは強烈だ。
タイムマシン、タイムワープなどを
題材にした作品は多数あるけど、
出来事が過去へと向かって進んでいく
映画など他にはないのではないか。
妻をレイプされ、殺されたショック
から10分間しか記憶を保持できない
障害を抱えるレナード。
彼は全身に重要な手がかりなどを
タトゥーとして残し、復讐のために
犯人の行方を追う。
移動して次々と怪しい人物と出会い、
必要な情報をポラロイドカメラで
撮影して未来への自分自身に向けて
ペンでメモ書きする。
「やつのウソを信じるな。」
なんせ、目の前にいて何度も会って
会話をしてきた人物が彼にとっては
「初対面」であり、今までどんな会話
をして、何をしていたのかを
全く覚えていないのだ。
この事情を彼から説明されている相手
は何度も自己紹介をすることになる。
誰が無害で誰が敵なのか?
コイツの笑顔、ことば、自分を
助けようとする親切な行動は
ホンモノなのか?
なんとも斬新なことに、ストーリーは
ラストシーンの男を射殺するところ
から始まり、10分進むごとに過去へと
戻っていくのである。
車の窓が割れているのはなぜか?
ホテルの部屋のクローゼットに
知らない男が縛られて
閉じ込められているのはなぜか?
すべては「過去へと進む」ごとに
解明されていく。
それにしても恐るべき、
わかりにくい作品だ。
劇場で観たけど頭が混乱して、
映画が終わったあとも座ったままで
「う〜〜ん、、、。」
としばらく考えこんでしまった。
あとでレンタルDVDでも何回か観た。
朝、二日酔い気味で目覚めてふと横を
向くと美しいオンナが寝ていて、
「あれ? え? ええーと、
確か昨日バーで知り合って、、、。」
というようなイマイチ記憶が
曖昧なことが何回かあったような、
なかったような、、、。