VOL34 「サルバドール ダリ」
上手じゃないと趣味とは言えない
などということはないはずだ。
30歳の頃、スイミングコーチの
後輩をユーノスロードスターに
乗せて滝畑ダムへ向かった。
5月の昼、いつも通り屋根を開けて
緑の木々を眺めながら走ると爽快だ。
芝の上に座り、買ってきたばかりの
イーゼルとスケッチブックを立てる。
広々としていて気持ちがいい。
周りには誰もいない。
水彩画を描くなんて高校生以来。
後輩とは仲が良くて、後に27歳から
14年間経営したアメリカンバーで
週末にバイトに入ってもらったりも。
彼は自己流ながらパッパと鉛筆の
下描きを済ませて、ダムの淡い緑色、
真っ赤な鉄橋、新緑の山を
いいカンジにパステル調の絵の具で
塗っていく。
集中して無口になり、30分置き
くらいにお互いの絵を見比べる。
構図の中心が少し違うし、
違うメーカーの絵の具の色合いも
筆の使い方も違っていて、
絵の雰囲気にけっこう差がある。
同じ場所から同じ風景を描いてる
というのにおもしろいもんやなあ。
普段経験しないシゲキによって
アドレナリンが分泌されているのか
すごく気分がいい。
2時間か2時間半ほどして終了。
また2、3週間後に行って描き終えた。
後輩はまあまあ絵のセンスが
あるようで、俺はいたってフツー。
思いつきの企画だったけど意外に
楽しくて、次は鶴見緑地の風車を、
そして万博の太陽の塔、
中ノ島の中央公会堂、
南港のフェリー船、新世界の通天閣
などへと二人で描きに行った。
描く才能はたいしたことないけど、
ヨーロッパの街や風景の写真集を
観たりするのも、音楽も好きだし、
芸術ってステキやな、って
以前よりも強く感じるようになった。
2年置きくらいに2週間前後
アメリカンバーを週末だけバイトに
任せてあとは休みにして海外旅行へ
出ると、美術館や博物館に行ったり、
いろんな建築物を観たりもした。
いろいろ観ているうちに心理学にも
興味がある俺は見た風景や人物、物
という現実世界だけでなく、
自己のイメージを表現したものにも
注目するようになった。
「サルバドール ダリ」。
バルセロナにあるピカソ美術館に
行ってフシギな絵も鑑賞したけど、
ダリのまるで違う惑星に来てしまった
ような拡がりのある世界観の方が
より惹きつけられた。
有名な溶けた時計の絵の衝撃は
スゴイ!!
カマンベールチーズが溶けていく
状態を見てインスピレーションを
得たという。
その突出した概念を生み出す感性、
そしてそれを絵として具現化
することによって他人に伝える才能。
絵画のみに留まらず、彫刻、版画、
デザイン、映画製作などで幅広く
活動した。
知らなかったけど去年9月には
彼の奇想天外な人生を描いた映画
「ウェルカム トゥ ダリ」
が公開されていた。
レンタルDVDが出たらぜひ観たい。
そして東京の武蔵野ミュージアムでは
現在まさにダリの世界観にピッタリ!
の妖しいピンクフロイドの曲を流す
展示会が開催されている。
う〜〜ん、
大阪でもやってくれへんかなあ!
ヨッパラってからその特別な空間に
じっくりと浸ってみたいものだ。
ダリは自作に対してこう述べている。
「ダリの作品は誰もにもわからない。
ダリにもわからない。」