VOL33 「デスノート」
都市伝説のような基本的ルールを持つ
ストーリーというものは幾つもある。
例えば呪いのビデオを観ると死ぬ
(「リング」)、ゾンビに噛まれると
ゾンビになる、など。
その中でこれはスゴイ!と感心
したのは「デスノート」(映画)だ。
原作マンガは読んでないから
わからないけど、映画は藤原竜也、
松山ケンイチの起用も含め
て素晴らしい作品だと思う。
まえに「不死身??」シリーズで、
親戚のおっちゃんが呪いのわら人形を
木に打ちつける丑の刻参りの現場に
遭遇してしまった恐怖体験を書いた。
恐ろしいことではあるけど、
実際に憎い相手を密かに死に追いやる
方法はないものかと考えるひとは
昔も今もそれなりにいるだろう。
デスノートに名前を書かれると死ぬ。
なるほどな、そういう話か、
という感じで観てみた。
デスノートの存在、社会の動揺、
デスノートで悪人を抹殺するキラを
信仰、支持する人々、だけで
ストーリーは充分成り立つはずだけど
これを手にした夜神月
(やがみらいと)と事件解明に
乗り出した探偵Lという2人の天才の
火花を散らす頭脳戦、心理戦までを
堪能できる。
まあまあの長編だけど無理矢理
端折って薄っぺらにしてしまう
ことなく、2部作にして複雑に
展開するストーリーを丁寧に
描写している。
原作者大場つぐみは生年月日、性別、
本名を明かしていない覆面作家。
今までの著作活動不明のまま
いきなりこの作品を少年ジャンプに
連載して大ヒットさせている。
後に映画化。
星野新一(SF)の作品は好きだけど
ほとんど小説は読まないと
いうことだが、どうやってこんなに
拡がっていくストーリーをうまく
書き上げられるんだ?
デスノートが持つ効力、所有者に
対することなどさまざまなルールが
あるけど、たぶんほとんど矛盾なく
上手く決められている。
このルールを完璧に理解して目的の
ためにデスノートを使いこなしながら
巧みに捜査の手をかいくぐる夜神月、
抜群の情報収集力と推理力で月を
追い詰めていくL、
そしてデスノートを地上に落とした
リュークその他の死神までを含めた
この世界観を創り出した作者
大場つぐみ自身はとても賢いと思う。
法律だけでは罰することのできない
犯罪者を憎む正義感の強い大学生の
夜神月はデスノートを手に入れる
ことによって正義の名の元に次々と
悪人を抹殺していく。
このあたりは多くのひとでも
同じようなことを考えるかもしれない
と思う。
でも自分の逮捕へと迫ってくる警察、
そして探偵Lから逃れるために
綿密な計画に沿ってデスノートの力を
使いこなし、極めて冷酷に多数の
罪のない無関係のひとまで迷いなく
殺してしまうとなると驚いてしまう。
そこまでできるか?
人間は強大な力を持つと残酷に
なるのだろうか。
最近は私人逮捕系ユーチューバー
と呼ばれるひとが逮捕される事例が
いくつもあるけど、自分は正義の使者
だという信心を持つひとが暴走すると
破滅へと向かってしまう。
デスノートがもしかして実在したら?
自分が手にすることになったら?
俺もやっぱり狂った道を突き進む
ことになるのだろうか??