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マニアックなレオ  作者: レオ
32/115

VOL32 「汚れた英雄」

ダーティーな天才ライダーの

サクセスストーリーを描く小説。

全4巻の長編だけど3回読み返した。


子どもの頃から幸せからは遠い暮らし

だったが美貌を備えた北野晶夫は

成長とともに暴力とセックスに

取り巻かれた荒廃した青春時代を

過ごしてゆく。

暗い瞳、歪んだ精神を持つ晶夫が

唯一素直に向き合える世界が

バイクレースだ。

どんなに乱れた狂った環境に

身を置いてもストイックに強靭な

身体を作りあげ、トップライダーを

目指して研究と修練に励む。

溢れる才能を持ちながらも

一流メーカーに対して財力のない

晶夫が必死に改良を重ねて仕上げた

マシンはパワーと耐久性が絶対的に

足りず、命を削るようなライディング

でトップ争いにまで登りつめても

レース終盤にはエンジンが壊れたりで

完走できずに歯ぎしりをする結果に

終わるのだった。


失意に包まれる晶夫だがその輝く

美しさはますます冴え渡ってゆく。

知り合った大会社の社長令嬢達は

冷たい魅力を放つ晶夫に夢中になり、

高級車や宝石をプレゼントして

独占しようとする。

女が差し出す金や、晶夫の底知れない

才能を見極めたイタリアの

レースチームのオーナーの誘いを元に

ついに晶夫は世界へ向かって

階段を登り始める。


アメリカ、そしてイタリアへ渡り、

今までとは別次元の世界レベルの

環境でレース経験を重ね続ける晶夫は

様々なトラブルに巻き込まれながらも

天才的な閃きとドリフトテクニックを

駆使した抜群のマシンコントロールを

武器に徐々にその頭角を現してゆく。


裏の顔を隠した華麗な姿とその優美な

身のこなしで映画女優、大富豪の娘達

との浮き名を流す晶夫の名前は

レース界だけでなく、社交界でも

広まるようになる。

しかし彼の心が愛に満たされることは

決してないのだった。

貧しく、苦労しかなかった幼少時代を

過ごした晶夫。

ついに一生かかっても使い切れない

莫大な財産を手にすることになっても

富に溺れることはなく、

レーサーとして世界の頂点を目指す。



現実的な感覚のひと、バイクやレース

に興味がないひとにはアホらしい

夢物語だと笑い飛ばすかもしれない。

でもダーティーなのにどこまで

いってもレースに対するストイックな

精神を失うことのない晶夫の姿は

俺には単なる軽々しい

シンデレラストーリーのようには

思えないのだ。

そして作者の大藪春彦。

このひとはいったいどこまで広く

経験してきたのか、調べたのか。

特にメカ、レース、銃などに関しての

描写の細かさ、数値やデータの表示、

造詣の深さは物凄く、まるで自分自身

が見てきたかのような重厚な

リアリティを感じさせる。


晶夫というキャラクターは架空だけど

今まで実際に世界の頂点に立ってきた

レーサーのうちの何人かの人生は

少なからずこのストーリーに

近いものがあるのではないか。

重大な危険を伴うからこそ、

自身の能力を最大限に発揮して

強大なライバル達に打ち勝って

得られる達成感は誰にも理解できない

大きな意味を持つのかもしれない。



※※ユーチューブ動画は世界の頂点モトGPの内の1つオーストラリアGPでの模様。

コーナーでマシン同士が傾いている状態で接触したりもする激しくクレイジーな空間。


https://youtu.be/MxK5yRqE6rg?si=FMnEtpAplD4DgJh8

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