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マニアックなレオ  作者: レオ
14/115

VOL14 「地上2センチの楽園」

ドミニクとはロックバンド

REVolutionでライヴ活動を13年以上

続けていて音楽仲間と思われてるかもだけど

元々はバイク、遊び仲間だ。


35歳くらい?の時にドミニクの家に行くと

コーフンした彼が見せてくれたのが

ハンモックだった。

ネットで2万円ちょっとで購入。

浜辺の木陰で寝そべる時に使う網目のもの

を思い浮かべると思うけど全く違って、

キャンプで使うテントの生地で

すごくしっかりしている。

「実験しに行こう!」

いつも犬の散歩で行く近くの公園で設営。


2本の木の間に深緑色のハンモックを

吊るすと巨大な枝豆みたいに見える。

下半分がテント生地、上半分は

蚊よけの網目になっている。

ドミニクがハンモックの中に入ってみる。

「Oh,yeahhh!! レオ、試してみい!」

交代して中に入る。

テント生地の足側の半分が左右に開く。

靴を脱いで、下から頭から入って中で

寝転ぶと自然に閉じてマジックテープで

留まるようになっている。

「おおーっ、なんやこの感じはあ!」

空中に浮かんで寝転んでいる、

という初めての感覚。

「オマエもこれ買うやろ?」

「もちろん!」

雨除けのタープの他に冬用の防寒カバー

などのオプションも注文。

カナダからの取り寄せで、

届くまで当時は数日かかった。


「一晩寝てみたいから実験につきあえ。」

とドミニクから電話が。

ヤツは俺とキャンプに行くまで

待ちきれないのだ。

自転車で適当な公園を探す。

小さい公園でドミニクはハンモック、

まだ持っていない俺はテントと

寝袋を設営。

コンビニでドミニクが日本酒の

熱燗を買ってきてくれる。

秋の夜にちょうどいいね。

朝。

キーコ、、、キーコ、、、。

ん?

そうか、公園で寝たんやったな。

テントから顔を出すと目の前で

女の子がブランコを漕いでいる。

フシギそうに俺を見るお母さんに

「おはようございます。」

と挨拶する。

横ではおばあさんがホウキで

落ち葉を掃いている。

平和な朝だ。

ドミニクはまだ寝ている。

でっかい枝豆が公園に浮かんでいる

風景は奇妙だ。

ドミニクは起きると満足げに片付けて

仕事へと向かっていった。



それから二人で奈良、和歌山の山へ

バイクで走りに行くたびに

最適な条件が揃う場所を探して、

河内長野の杉林がハンモックキャンプ

のホームグラウンドとなった。

当然キャンプ場のように

トイレや水道はない。

そんなことより自然との一体感が

イイんだ。

初めてここでキャンプした時は

朝にまさかの銃声で目が覚めた。

ハンモックから飛び出した俺らは

オレンジ色のジャケットを着て

歩いてくるイノシシハンター達に

向かって

「ここにいますうーーーっ!!!

撃たないでえーーーっ!!!」

と両手を上げて叫んだのだった。


ランタン2台の柔らかい明かりの中で

シチリン&赤ワイン。

トリ、シャケ、シシャモ、サンマ。

シチリンはやめられない。

10m横からはすごくキレイな

小川のせせらぎが聞こえてくる。

そして焚き火を前にして

ギター&ベースセッション。

REVolutionの原点はここにある。

真夜中に電池駆動のアンプにつないで

爆音で弾いて大声で歌ったって、

文句を言ってくるとしたら

イノシシか鳥くらいしかいない。

寒くもなくひんやりした秋の空気が

気持ちイイ。


夜中に尿意で目が覚める。

めんどくさいけど朝までガマン

できるわけないんで、

ハンモックから抜け出して

真っ暗闇の静寂の中で用をたす。

ふと幽霊のことを思い出してしまって

背筋がゾッとする。

でもたまりにたまったオシッコは

なかなか止まらない。

怖い。 怖すぎる。

5m横のハンモックの中にドミニクが

寝てるのを除けば 周囲数キロに

ニンゲンは1人も存在しない。

山は神聖な空気に包まれているけど、

ふと見つめられてるようにも感じる。


朝9、10時までゆっくり寝る。

ハンモックの中の空間の居心地は

スバラシイ。

背中が少し丸くなる姿勢が

もしかして胎児だった時の安心感を

思い起こさせるのだろうか。

目が覚めてもそのままの姿勢で

細かい網目越しに静かな朝の木々の

風景を眺める。

鳥の声が響く。

贅沢なまどろみの時間。


ドミニクがいつものように

「ドムサンド」をつくってくれる。

彼は料理が得意だ。

お気に入りのフランスパンに

厚切りベーコン3枚と目玉焼き2つ。

う〜〜ん、焼き加減が絶妙。

シチリンもサンドイッチもいつも

カンペキでほんまにありがたい。

熱い紅茶にプリンでフルコース完了。

俺は洗い物とゴミ集め。


冬にはハンモックに防寒カバーを

上下に付けて、服を着込んで、

毛布、カイロで対応する。

明け方にマイナス3、4度にまで

冷えたこともある。


ある時ハンモックを吊るすのが

上手くいかないことがあった。

地上50センチくらいになるはずが

中に入って体重で沈むと

地面スレっスレになってしまった。

ドミニクがゲラゲラ笑う。

「オマエ、地面に寝てるやろお!」


ここは地上2センチの楽園だ。

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